■アジア向けに開発された恩恵で低価格を実現したBMW
2015年のミラノショーでデビューしたG310Rは、単気筒エンジンを搭載したネイキッドモデル。313ccという、日本人にはちょっと中途半端に感じられる排気量は、成長著しいアジア市場向けに開発されたモデルだから。生産は、インドのTVSモーターが担当します。
2輪車の年間販売台数は、インドが約1900万台、中国が約1500万台。この2大市場は別格としても、インドネシアが約589万台、ベトナムが約327万台、タイが約182万台(いずれも2017年)ですから、伝統あるBMWとしても、放っておくわけにいかない模様。そうしたマーケットに合わせてリーズナブルなモデルが、今や35万台レベルにまで縮小した日本市場にももたらされるのですから、バイク趣味人としては、アジアに足を向けて寝られませんね!?
G310Rのスタイリングは、カジュアル&クールなルックス。豊かな抑揚を持たせつつ、良くも悪くもアジアンテイストを“抑えた”ものですが、例えば、伝統のフラットツインを積む「Rシリーズ」が巻き起こした“ネオクラシックなトレンド”とは一線を画します。
フレームは、鋼管を用いたコンベンショナルな作りですが、フロントフォークは倒立タイプ、リアのスイングアームはアルミ製、ブレーキキャリパーにはブレンボの弟ブランドというべきバイブレのものがおごられ、しかも、剛性を取りやすいラジアルマウントされています。
もちろん、ABS付き。ベーシックモデルでも「“駆け抜ける歓び”は譲れない!」といったところでしょう。
■単気筒エンジンは後方排気で軽快感を実現
さらに、BMW=バイエルン発動機の面目躍如たるのが、シンプルな単気筒エンジン。シリンダーブロックのサイドに、誇らしげに“DOHC”と刻まれている通り、ツインカムのヘッドメカニズムを採用しています。
さらに特徴的なのは、搭載する方向を通常とは前後逆にし、後方排気としていること。後方排気と聞くと、反射的に『ヤマハ「TZR250」!』と反応してしまう昭和の方もいるかと思いますが、G310Rの場合、レースフィールドからのフィードバックではなく、「単気筒モデルならではの軽快感の追求」が採用の理由です。
具体的には、エンジンの位置を前進させて“マスの集中化”を図るとともに、「リアアームをより長くとることができた」といいます。今後の環境性能厳格化を見据え、触媒の利きにも配慮しています。
結論を先に述べてしまうと、G310Rのライドフィールは「軽快!」のひと言ですから、この試みは大いに成功したと思います。モトラッドをアジアで生産するに際し、単なる廉価モデルでは満足しなかった辺りは、さすがはBMWです!…というか、ここまでしないと、ビーエムファンの人たちから許されなかったかもしれませんね。
■“マイ・ファースト・BMW”でも違和感なく乗れる
G310Rのシート高は785mm。身長165cm(短足)の自分でも、両足の裏が3分の1は接地するので、足つきはいいですね。面白いのは、ライダーの体格に合わせてシートを換え、シート高を770mmまたは880mmに変更できること。アンコ抜き、アンコ盛りを、メーカー自らやってくれるわけですね。
ライディングポジションは、軽く前傾して少し腕を開く自然なもの。これならG310Rが“マイ・ファースト・ビーエム”という人でも、違和感なく乗れるのではないでしょうか。
ツインカム4バルブの単気筒エンジンは、34馬力/9500回転の最高出力と、2.86kgf-m/7500回転の最大トルクを発生。街中では4000回転も回していれば十分ですが、いざとなればたちまち、1万回転を超える勢いで吹け上がり、159kg(燃料満タン時)と車重が抑えられたG310Rを、存分に、軽快に走らせます。取り回しがいいのもG310Rの美点で、横道、路地裏を厭わず、Uターンも軽々とこなす便利な一面も見せます。
成長著しいアジアンマーケットを狙ったがために、リーズナブルな価格で提供されるG310R。デビューして4年余りが経ったモデルですが、ベーシックなBMWとして、その魅力はいまだみずみずしいままです。
<SPECIFICATIONS>
☆G310R
ボディサイズ:L2000×W820×H1070mm
車両重量:159kg
エンジン: 313cc 水冷単気筒 DOHC
トランスミッション:6速MT
最高出力:34馬力/9500回転
最大トルク:2.86kgf-m/7500回転
価格:61万1700円
(文&写真/ダン・アオキ)
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