新発想の3輪バイクはインパクト抜群!ヤマハ「NIKEN」は最高のツーリングマシンでした

■3輪でありながら2輪車のような走行フィール

3輪のバイクには、以前にインプレッションしたBRP「Can-am(カンナム)」シリーズのように、曲がる際に車体が傾かず、4輪の免許で乗れるモデルも存在します。しかしNIKENは、2輪車同様、車体をバンクさせて曲がるモデル。運転するには2輪車の免許が必要です。

ヤマハではこうしたスタイルのモデル群を“LMW(リーニング マルチ ホイール)”と呼んでおり、これまでスクータータイプの「TRICITY(トリシティ)」シリーズをリリースしていましたが、今回紹介するNIKENは、ギヤチェンジが可能なスポーツタイプのLMW。バンク角も、TRICITYの38度から45度へと大きくなっており、より深く車体を傾けて曲がることができます。

バンク角が拡大されたことで、前輪を支持するフロントフォークも、ホイールを外側から支える形に。これは、深く傾けた際、左右のフロントフォークどうしが干渉するのを防ぐためですが、太いフォークが2本並んだルックスは、インパクトの向上にもひと役買っています。

また、深くバンクした際、前2輪でも2輪車のような自然なハンドリングを実現するために、“LMWアッカーマン・ジオメトリー”という独自の機構も採用。アッカーマン・ジオメトリーとは、4輪車が曲がる際、前輪どうしが同心円を描くように、内側のタイヤが少しだけ大きめに切れる機構のことですが、その特性をタイヤが傾いた状態でも実現できるようにしたのが、この機構なのです。

排気量も、TRICITYシリーズが125ccと155ccだったのに対し、NIKEN は845ccへと大きくなっています。搭載されるエンジンは、同社の人気モデル「MT-09」や「XSR900」と同じ3気筒で、最高出力は116馬力を発生。4気筒のスムーズさと、2気筒のトルク感を”いいとこ取り”したエンジンで、レスポンスも良く、かなりパワフルです。ただし、NIKENに搭載されているエンジンは“クランクマス”が18%重くなっており、低回転域での扱いやすさも向上させています。

クランクマスが重くなると、低回転でも安定してエンジンが回るようになりますが、その分、レスポンスは穏やかになります。NIKENがレスポンスより安定性を重視しているのは、同じエンジンを搭載するMT-09より、車重が70kg重い263kgとなっているということもありますが、レスポンスの鋭さより扱いやすさが求められるツーリングバイクとしての立ち位置を重視して開発されたから、という理由もあるでしょう。

■初めて通るルートでも安心して楽しめるハンドリング

フロントが2輪というメリットは、なんといっても走行時の安心感の高さにつながります。例えば、コーナーの途中に砂や落ち葉などが浮いていて、片方のタイヤが滑ったとしても、もう一方のタイヤがグリップしていれば、フロントから転倒するようなことはありません。また、段差などを乗り越える際も、左右の車輪が独立して衝撃を吸収してくれるため、ハンドルを取られるような挙動が大幅に抑えられています。

実際に走り出すと、低速時から走行安定性の高さを感じます。車重はこのクラスとしてはかなりの重量級ですが、クラッチをつないで発進すると、その重さがウソのよう。左右に車体を傾ける操作も、2輪車よりもむしろ軽く感じられます。低回転域での粘りが増したエンジン特性のおかげで、低い速度域でもギクシャクすることなく、安定して走れます。

そして、スピードが増すに従って、走りの安定感はさらに高まります。これは、回転するホイールの数が増えたことで、ジャイロ効果が増しているためでしょう。特に、高速道路での安定性の良さは圧巻で、まるで4輪のクルマに乗っているかのよう。2輪車にありがちな横風にあおられる怖さも全くありません。アクセルを開け続けなくても速度を維持してくれるクルーズコントロール機能を搭載していることもあり、高速移動時の疲労の少なさは、並みの2輪車の比ではありません。

「それだけ安定性が高いと、コーナーリングは不得意なのでは?」という疑念も湧いてきますが、ワインディングでのハンドリングは軽快そのもの。車体を傾けると、それに伴って前輪に舵角が付く走りは2輪車同様です。それでいて、安心感の高さは前述した通り。ふたつあるフロントタイヤがしっかりと路面を捉えてくれるので、不安なくコーナーへと入っていくことができます。

そして、多少オーバースピードでコーナーへ進入してしまい、やむを得ずフロントブレーキを掛けても、車体が起き上がったり不安定になったりする挙動が出ないことも、ライダーの安心感を高めてくれます。ツーリングなどで初めて通るルートにおいて、コーナーの先が思っていたより回り込んでいたり、路面が荒れていたりしても安心です。

こうしたNIKENの特性は「忙しくて普段はあまりバイクに乗る時間を取れないけれど、月に1回程度はツーリングへ出掛けたい」といったライダーに最適。長距離ツーリングでも疲れが少ない上に、初めて走る峠道でも安心してコーナーリングを楽しめます。

また、そうした特性を備えたNIKENだけに、2019年3月には、高速域での防風効果が高い大型スクリーンやツーリング向きの肉厚シート、そして、グリップヒーターなどを装備した派生モデル「NIKEN GT」も追加されました。

NIKEN GT

惜しむらくは、NIKEN、NIKEN GTともに、受注生産のため2019年モデルの予約はすでに締め切られてしまっていること。手に入れたいのなら、在庫を確保している販売店を探すか、2020年モデルの受注開始を待つ必要があります。とはいえNIKENシリーズは、それだけの時間や手間を掛けても、所有する価値のあるモデルであることは間違いありません。

<SPECIFICATIONS>
☆NIKEN
サイズ:L2150×W885×H1250mm
車両重量:263㎏
エンジン: 845cc 並列3気筒 DOHC
トランスミッション:6速MT
最高出力:116馬力/1万回転
最大トルク:8.9kgf-m/8500回転
価格:178万2000円

(文&写真/増谷茂樹)


[関連記事]
走るステージを選ばない!トライアンフ「スクランブラー1200XC」はオンもオフも楽しめる

街中では最速&最強!モタード仕様のアプリリア「SX125」は驚きのスプリンター

コーナー攻めるのは子どもの遊び!?ハーレーダビッドソン「FXDR114」は真っ直ぐ走るだけで楽しい


トップページヘ

この記事のタイトルとURLをコピーする

関連するキーワード