当初、本体+ストローという構成かと思っていましたが、意外にいろいろと入っていました。ハイドレーションにつないで使用する構成と、付属のストローに接続してペットボトルにつなげる構成、2通りの組み合わせが可能です。
まず先にハイドレーションへ接続するバリエーションですが、このようなよくある継手になっていますので、これをハイドレーションのチューブに接続します。継手のボタン部分を両側から押すことでクイックに接続できます。この接続部分はUCL規格といって世界的な共通規格で、さまざまな給水チューブには対応できるようになっています。
こっちはペットボトルに接続できるアダプタ。説明書ではストローケーシングとなっていますね。ストローを刺し、本体に装着するとそのままペットボトルにねじ込めます。
ちょっと試してみましたが、各継ぎ目からはほとんど水が漏れません。ミネラルウォーターで多用されている、新しい薄手のペットボトルには適合しないものが多いようです。オーソドックスな古いタイプのペットボトルの口ならOK。組み合わせた状態では結構かさばりますね。
このペットボトルアダプター(ストローケーシング)の方では、その辺にある容器からでも給水が可能です。まあ、給水といっても自力で吸うんですけどね。商品パッケージは水を汲み上げる時に使用することをメーカーは推奨しています。350ccくらいは入るようです。
もちろん、パッケージを使用せず、バケツでもお風呂でも、水が貯まっていればなんでもOKです。
どちらの構成でも本体とケーシングの間にプレフィルターを挟みます。これを挟まないとフィルターの目詰まりが早く起こることになります。同じ理由で、浄水したい水にひと手間かけ、事前にタオルで漉したり、泥などが沈殿するのを待ち上澄みを使うことなどでフィルター寿命を稼げます。フィルターはカートリッジ式なので、安価に交換できます。
飲み口部分はゴムで繋がっていて、引っ張って伸ばして付け外しします。普段目にするミリタリーアイテムに比べるとちょっと頼りない気もしますが(笑)、水の飲み口程度ならこれで十分かと思います。落とすと蓋を経由して飲み口が汚染されるので、落とさない仕様であるこちらの方が好ましいですね。
あふれ防止機構がついていて、飲む場合は軽く噛みながら吸います。この行動、できない人もいますので、イメージできない方は使いづらいかもしれません。写真では指で押してパッキンを歪めていますが、この状態だと水が通り、指を離すと通りません。
フロンティアプロのレベルはGRN LINE(グリーンライン)ということで、ウィルスを除く細菌類であれば問題なく対応可能。ウィルスを含む水は、それに感染した人間や哺乳類の死骸、糞尿が原因であることがほとんどなので、都市部を離れた川や湖、都市部でも雨水などであれば使用可能です。
ボウフラが湧いた水などは通常は良いイメージはないと思いますが、微量金属でもボウフラは死んでしまいますので、フロンティアプロの使用を前提にすれば逆に「飲める水」の指標になります。
1人1日2Lを想定すると96日、3Lと想定すると64日分。多少メーカー表記に揺らぎがあっても、2ヶ月程度は使用可能。
そこまで過酷なサバイバルに陥るかどうかはわかりませんが、あれば相当役に立ちます。ためておいた雨水をそのまま飲んでも腹を下さないわけですからね。
映画『サバイバルファミリー』でも、原水を飲んで腹を下すシーンがあったようです。マニアックながら、ちょっと装備しておきたいアイテム…じゃないですか?
* * *
以下長文ですがろ過フィルターについて解説します。
アクアミラのろ過フィルターカートリッジは、基本性能で2種類に分けられます。ろ過能力が低い順に、グリーンライン、レッドライン。至極簡単に言うと、ウィルスが除去できるかどうかで分かれています。
基本的に、日本の河川上流、一般的な湖、山岳部の湧き水、自分で貯めた雨水などであれば、グリーンラインで十分です。メーカーサイトでは泥水を飲んでいる写真も掲載されていますが、こうした自然の水の濁りはほとんどが泥や藻類によるものですので、「フィルターで除去できる」ことになります。
問題になるのは都市部の水で、特に下水処理がなされていない地域での河川の水などには、病原性ウィルスが混入している可能性が高くなります。そういった環境ではレッドラインのフィルターが必要になってくるわけです。
黒部ダムの水であればグリーンラインでよく、都内の隅田川の水の場合はレッドラインが必要ということです。ただし、ろ過能力には水量的にも確率的にも一定の上限があるので、余裕がある限りなるべく安全な水を使用した方が良いかと思います。
微細粒子を除去した結果として、甘さや酸っぱさ苦さ以外の味(=匂いでもありますが)、匂い、色などはかなり除去されます。それに伴い、多少の化学物質や金属イオンなどの除去もなされます。ただ、後述するように、除去できない物質も存在するので、簡単ながら一定の理科の知識が必要になります。
あくまでも「ろ過フィルター」なので、水に溶けた物質は除去できません。砂糖水は甘いまま、海水は塩辛いまま、ですね。メーカーや代理店の説明には含まれていませんが、理論的にはカドミウムなどの金属イオンも軽減はできますが完全な除去はできないはずです。
そのため一例として、「海水以外なら魚が生息しているかどうか」「他の動物が飲んで異変をきたしていないか」というのが1つの目安になります。また、水の「微妙な土臭さ」は除去が難しいと思われます。これは日本の水道局がとても苦労している部分です。
フィルターのろ過可能リッター数ですが、基本的には飲料水専用と考え、1日2Lないしは3L、使用人数を考慮して◯日間という形で把握するのが良いと思います。
フロンティアプロの場合は「ろ過能力195L」ですから、一日3リットルと想定、1人であればおよそ60日=想定で180L使えることになります。2ヶ月に1回、フィルターを交換すれば良いわけですね。
ちょっと小難しい話になりましたが、サバイバルな事態では役にたつかもしれません。基本は
・雨水・湧き水などの汚染されている可能性が少ない水を使用
・人間の活動が及んでいない地域で、魚が泳いでいる水を使用
・下水が流れ込んでいる可能性がある場所ではレッドライン
という感じでしょうか。取扱説明書も付属しますので、よく読んだ上で使いましょう。(アカリセンター価格:5378円/GRN LINE リプレイスメントカートリッジ:3024円)
>> 連載[Gear Maniax]
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(文・写真/アカリセンター)
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