乗り心地ふんわりの癒やし系!「C5エアクロスSUV」はシトロエンらしさ満載です

■ひと目で昨今のシトロエンと分かる個性的スタイル

昨今、SUVといえば、まさに群雄割拠の状態。洋の東西を問わず、メーカーの規模を問わず、大小さまざまなモデルがしのぎを削っています。

でも、ひと口にSUVといっても、共通するのはサルーンより背が高く、使い勝手の良い室内空間とスポーティなたたずまいを備えている、といった程度で、オフロード指向の強いモデルから、街乗り重視のモデルまで、キャラクターはさまざま。ひとつのカテゴリーとして成立しながら、モデルごとに個性が感じられるのも、SUVの魅力といえるでしょう。

そんな中、2019年5月末に日本へ上陸したシトロエンのC5エアクロスSUV。エクステリアデザインは、弟分である「C3」や「C4カクタス」の流れを汲んだもので、上下2段構えのヘッドライト、ボディ側面のプロテクターである“エアバンプ”など、ひと目で昨今のシトロエンと分かるスタイルを採用しています。

そんなルックスの影響か、写真では比較的コンパクトに見えますが、全長は4500mm、全幅は1850mm、全高は1710mmと、なかなか立派なサイズです。日本車でいえば、トヨタ「RAV4」やマツダ「CX-5」、輸入車ではフォルクスワーゲン「ティグアン」などと同等、といえば、そのサイズ感がお分かりいただけるかもしれません。

搭載されるエンジンは、最高出力177馬力、最大トルク40.8kgf-mを発生する排気量1997ccの直列4気筒ディーゼルターボ。トランスミッションは8速ATが組み合わされていて、駆動方式はFFのみの設定となります。

フランス本国には、ガソリンターボやディーゼルの低出力版、MT仕様などの設定もありますが、日本市場向けはモノグレード展開であること、そして、ストップ&ゴーの多い都市部での使い勝手を考えると、プジョー・シトロエン・ジャポンの選択はベストではないでしょうか。

また、駆動方式はFFですが、雪道やぬかるみといった滑りやすい路面でも、状況に応じてトラクションを電子制御する“グリップコントロール”、滑りやすい急斜面の下り坂走行をアシストする“ヒルディセントコントロール”が搭載されているので、高い走破力を期待できそうです。

■一級品の快適性と使い勝手を実現したキャビン&荷室

C5エアクロスSUVのカタログを開いた際、最初に飛び込んでくるキャッチフレーズは「それは夢のような快適さ。」。力強さやアクティブさをうたうSUVが多い中、快適性を推してくる辺りは「いかにもシトロエンだな」と感じさせる部分ですが、その言葉が偽りでないことは、カタログ写真や装備リストからも理解できます。

快適と聞いて真っ先に思い浮かぶのはシートには、“アドバンストコンフォートシート”と呼ばれる独自構造を採用。これは、たっぷりと幅の広いクッションの中心部に高密度フォームを充填したもので、表層部には厚い“テクスチャードフォーム”を組み合わせています。その上、表皮にはハーフレザーのほか、オプションとして高級なナッパレザー仕様もラインナップしています。

リアシートは完全な3人掛けとしての設計で、ひとり分の座面がそれぞれ独立しており、リクライニングや前後150mmのスライドも、シートごとに行えます。

ちなみにラゲッジスペースは、リアシート使用時で580L、リアシートを前方にスライドした状態で670L、そして、シートの背もたれを折り畳んで1630Lという大容量を確保。ルーフエンドが車両後端まで伸び、リアピラーも起きたデザインですから、天地にかさのある荷物も積みやすく、また、シートアレンジも多彩ですから、レジャーグッズを詰め込んで3、4名での長距離ドライブ、なんて使い方にも、しっかり応えてくれそうです。この辺りは、さすがはバカンスの国・フランスのクルマらしいこだわりといえるでしょう。

そして、C5エアクロスSUVがうたう“快適さ”において、最も注目すべきは乗り心地でしょう。かつてシトロエンといえば、“ハイドロニューマチック”や“ハイドラクティブ”といった、金属スプリングとショックアブソーバーの代わりに“気体”と“液体”、つまり、エアスプリングと油圧ポンプを用いたサスペンションを採用。“魔法のじゅうたん”と形容されるソフトな乗り心地を実現していました。そうした快適性は、世界に熱烈なファンを生んだ一方、足回りの構造は複雑で、メンテナンスにもちょっとしたノウハウが必要でした。

しかし、C5エアクロスSUVでは、ハイドロを想起させる素晴らしい乗り心地を実現すべく、“PHC(プログレッシブ・ハイドローリック・クッション)”と呼ばれる、ショックアブソーバー内にセカンダリーダンパーを組み込んだサスペンションを採用しています。これは、かつてのハイドロ系のように、油圧ポンプや複雑な油圧配管などを必要とせず、ダンパー部分だけで完結するため、以前のように「興味はあるけど信頼性が…」なんて心配もしなくて済みそうです。

■かつてのハイドロを想起させる“ふんわり”とした乗り心地

さて、お待ちかねの試乗ドライブへと参りましょう。

まず、C5エアクロスSUVのドアを開け、たっぷりとしたシートに腰を下ろした瞬間、その快適さの一端をまず感じることができました。シートの感触はしっとりとしたもの。ソフトというとコシのない感触を想像しがちですが、表面に近い部分は柔らかく、カラダが沈むに従ってしっかりとしたコシを感じる、というタイプ。シートをまとう…、というといいすぎですが、姿勢が崩れないようカラダの要所を支えながらもフィットする感覚は、往年のシトロエンを知る人はもちろん、シトロエンは初めてという人も納得、といった出来ばえだと思います。

エンジンを始動させて街中へと走り出します。車内は、ディーゼルエンジンらしい軽いビート感を伴う音が、回転数に応じてかすかに聞こえる程度で、静粛性は十分。ストップ&ゴーを繰り返す市街地でも、前席と後席とで普段どおりの声量で会話ができますし、オーディオのボリュームを上げる必要もありません。

8速ATによる変速は極めてスムーズで、加減速時に不快なショックなどを伝えてこない点も、ミドルクラスSUVらしい高い完成度を感じさせる部分。ステアリングコラムに備わるパドルによってシフトアップ/ダウンを任意に操作できますし、センターコンソールのスイッチによって“SPORT”と“ECO”の走行モード切り替えが可能なので、気分やシチュエーションに合わせてドライビングを積極的に楽しめます。

C5エアクロスSUV最大の見どころともいうべきPHCですが、こちらも結論からいえば、熱心なシトロエン愛好家も納得、という乗り味を実現。感触としては、現在のSUVとしては最もソフト。なんとも表現しがたいのですが、街中を走る限りは“ふんわり”とした乗り心地です。一方、大きなうねりを越えるようなシーンでは、かつてのハイドロ系が車体全体で波を乗り越えるような感触だったのとは異なり、現代流に前後の足がしなやかに動いて衝撃をいなす、という感じです。

この辺りは、かつてのシトロエンを知っているか否かで受け取り方が異なりそうですが、タフさやワイルドさを意識し、思いのほかスポーティで締まった乗り味のSUVも多い中、C5エアクロスSUV のソフトな乗り味に魅力を感じる人は多いと思います。

また、ソフトな乗り心地といっても、それはあくまで街中での話。高速道路を100km/hで巡航するようなシーンでは、乗り心地が柔らかくても、ステアリングやフットワークは1.6トン級SUVにふさわしい重厚さを感じさせます。また、意外というと怒られそうですが、コーナリングにおける懐の深さも、新機構のPHCらしさを感じさせるところ。コーナーの途中に大きな段差がある、とか、コーナー途中から曲率がぐっと小さくなる、といったシーンでも、思わず「おっと!」となるようなサスペンションの底づき感がありません。

セカンダリーダンパーは、一般的なサスペンションにおける“バンプストップラバー”としての役割も担っていますが、どこからセカンダリー側が動いているのか、というのを全く意識せないところも、PHCのスゴイところ、といえるでしょう。

こうした基本性能の高さから、どこまで走っていっても疲れ知らずのC5エアクロスSUV ですが、各種安全装備を始め、先進運転支援システムが充実しているのも魅力。高速道路のロングクルーズで便利なアクティブクルーズコントロールやレーンキープアシスト、車庫入れや縦列駐車をサポートするパークアシストなども標準装備されています。

シトロエンといえば、かつては何物にも代えがたい魅力を備えているものの、実際に手に入れるには、ちょっとした勇気(と経済的な余裕)が必要でした。とてもフレンドリーなのだけど、ちょっとカラダの弱い恋愛対象…とでもいったところでしょうか。告白するどころか、ひと言ふた言、言葉を交わすだけでも勇気がいるような存在だったのです。しかし、最新のC5エアクロスSUVは、そんな心配は一切無用。まずは気軽にひと声掛けるように、テストドライブへと出掛けてみてはいかがでしょう?

<SPECIFICATIONS>
☆シャイン BlueHDi
ボディサイズ:L4500×W1850×H1710mm
車重:1640kg
駆動方式:FF
エンジン:1997cc 直列4気筒 DOHC ディーゼル ターボ
トランスミッション:8速AT
最高出力:177馬力/3750回転
最大トルク40.8kgf-m/2000回転
価格:¥431万9000円(消費税10%込み)

(文&写真/村田尚之)


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