「COOLPIX S33」の基本スペックは、防水であること以外は、特筆すべき点はない。いまやトレンドとなっている、スマホ連携機能なども非搭載。
外観は、良い意味でカジュアル。プラスチックの筐体は、角が丸っこく、誤って子どもにブツけたとしても、傷つけることはなさそう。重さも約180gと軽い。1.5mの高さから落としても、耐えられる。考えようによっては、良いこと尽くめだ。
なによりコロンッとした外観は、カメラっぽい“いかめしさ”はなく、可愛らしい。いつも持っていたいと思わせるデザインだ。
明るい場所であれば、画質にも不満はない
いくら安くても、可愛らしいカメラでも、どんどん写真を撮りたいと思わせる画質でないと、持っている意味はない。「COOLPIX S33」で、どんな写真が撮れるのかを、実際のサンプルで見てみよう。ちなみに、写真はすべてオートモードで撮影している。
低価格とはいえ、有効画素数は1317万画素。光がしっかりと被写体に当たっていれば、その解像度はまずまず。ビーチに生えている植物を撮ってみたが、画像データを拡大してみると、葉の表面の産毛のような葉毛も捉えている。
明暗差の大きなシーンでは、暗部が潰れ気味。だが明るい部分の表現力は悪くない。ただし、全体が薄暗い店内での撮影は苦手だ。気軽にパシャパシャ撮ると、解像感が低くなってしまうので、しっかりと手を固定して撮ることを心がけよう。
最大の利点は、IP68の防塵防水性を備えていること。ビーチでも気にせず、水面ギリギリからのアングルはもちろん、水中での撮影も可能。なにも気にせず、さまざまなアングルから、被写体を狙えるのは、それだけで大きなメリット。いくら高性能で高画質なカメラを持っていっても、防水でなければビーチで撮れるシーンは限られてしまうのだから。
静止画撮影については、総じて満足できる結果だった。もちろん粗を探せば、いくつも欠点はある(後述)。でも、撮りたいシーンを、カメラを大事にするがために撮れない、ということは皆無だ。まずはエントリークラスのカメラとしては、十分な性能を持っていると言えるだろう。
大きく配置された動画撮影用ボタンが使いやすい
動画はフルHD解像度(1920×1080ドット)での撮影が可能。動画専用のボタンが付いている。しかも、一般的なカメラでは動画専用ボタンが、おまけのように小さく配置されているが、「COOLPIX S33」では静止画のシャッターボタンと同じ大きさ。動画を撮りたい時には、迷わず、本体を確認しなくても動画ボタンを押せる。
といいつつ、筆者は旅行中に、フルHDでの撮影に失敗していた。なんと、縦640ドットに設定されていたのだ。非常に悔やまれ、レビュアーとしても失格。ただ、水中での撮影はできなかったが、陸の上ではフルHDで撮影してきた。
正直に言うと、動画撮影は、得意とは言いがたい精度だった。まず、手ブレ補正機構が搭載されているはずなのだが、その効果は実感できなかった。画質については、フルHDでさえ撮れば、コマ落ちすることもなく、一般的なレベルでの撮影が可能だ。
お値段以上に活躍してくれる防水デジカメ!
もし一眼または一眼レフを使っている人であれば、「COOLPIX S33」の画質には不満を感じるかもしれない。だが、泳いだりスキーやスノーボードなどをしている時に、それらのカメラを抱えて写真を撮れるだろうか?
メリットとデメリットをまとめてみた。
【Positive Point】
・実売1万数千円前後というリーズナブルな価格
・それでいて防水防塵&耐衝撃性にも優れる
・心配することなく、小さな子どもにも使わせられる
【Negative Point】
・カメラの起動が遅く、シャッターチャンスを逃すことも
・少し暗い場所になると、ブレたりノイズが目立ってしまう
・強い日差しの元では確認しずらい、モニターの明るさに少し不満
ネガティブな点については、価格の高い上位機と比べると、というもの。実売価格を考えれば、今は妥当な性能なのではないかと思う。と言いつつ、やはり起動時間だけは、短くして欲しい! と思うことがたびたびあった。
【結論】
筆者は、プロのカメラマンではなく、単なるカメラ好きだ。その観点で評価すれば、1万円+αで購入できる防水デジカメというのは、とても魅力的。
それでいて、光学3倍ズームのレンズを搭載しているので、ズーム時にはスマホよりもキレイに撮れる。それに、iPhoneを含むスマートフォンの広角レンズがあまり好きではない。しかも、いくら防水だとしても、スマートフォンを海の中に持ち込む勇気のある人は、どれだけいるだろう? 特に水深が深く、落ちたら取り戻せないような海だとしたら……。
さらにスマートフォンでは、操作も難しい。シャッターを切るだけなら良いが、濡れた手で動画を撮る、ズームさせるなどを考えれば、防水デジカメの優位性は翻せないだろう。
良いカメラとは、撮りたいシーンを逃さないことが第一条件。気軽に水の中にも入れる「COOLPIX S33」は、マルチシーンに対応した好いカメラだ。
おまけ……防水カメラの上位機「COOLPIX AW130」も試してみた!
最後に、「COOLPIX S33」と比較するために旅行に持って行った同じくニコンの「COOLPIX AW130」も紹介しておこう。当然なのだが「COOLPIX S33」よりも、画質は明らかに良かった。実売価格は3万円前後。
実際に撮影してみると、特に薄暗い室内での撮影では、明らかに「COOLPIX S33」よりも解像感が高い写真が撮れ、水中での撮影にも適している。防水もS33は水深10m、AW130は水深30mと性能は上。
望遠時(35mm判換算で120mm相当)でも鮮明な写真が撮れた。上のサンプル写真で、ステージ上でダンスをする女性の写真は、35mm判換算120mm相当で撮影している。しかも、スポットライトが当たっているとはいえ、かなり暗い会場だ。そんな環境でも、被写体ブレはあるが、手ブレは少ない。
もちろん薄暗い店内で何気なく撮ったハンバーガーも、カリカリの焦げ目とジューシーさをしっかりと写せている。水面での撮影でも、海と空がスカッと青く、気持ちがいい。
ただし、現在の実売価格は3万前後で、「COOLPIX S33」の約3倍。GPSやスマートフォン連携機能が付いていること、画質に優れていることを考えれば、予算があれば「COOLPIX AW130」も、より思い出をキレイに残せてオススメだ。
(文/河原塚 英信)
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