【ホンダS660試乗】6MTか、それともCVTか?

個人的には、アタマがカタイといわれようが、コンサバですねといわれようが、S660を買うなら6MTを選びます。6MTがなかったら、S660を買うかどうかさえ迷いません。

ただし、そんなMT原理主義ともいえる立ち位置のわたくしでさえ、S660の6MTとCVTのどちらを選ぶかは、両方に乗ってみた結果、とても悩ましい問題に思えてきたのです。

試乗会時点での受注比率は、CVTが42.9%。6MTが57.1%。これは(パーツを仕入れる関係上)ホンダが見積もっていた数値より、やや6MTが多め。今後、ほぼ半々に落ち着くと見込んでいるそうです。

6MTが過半数というのは、「スポーツカー=MT」と考えている方がまだまだ少なくないということ。ちょっとホッとしました。ただし、パフォーマンス面だけを見れば、時代は、2ペダル>MTです。

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たとえば、ポルシェ「911」。最新の991型は、サーキット仕様であるGT3でも、もはやPDKという2ペダルしか設定されていません。理由はMTより速いから。シンプルですね。とはいえ、S660はコンマ1秒を争うクルマではありません(いや、ミニサーキットで争ってみたいですが)。スポーツドライブを楽しむためのクルマです。

前回もお伝えしたとおり、試乗は待望の6MTからスタートしました。気になっていたのはシフトフィーリング。エンジンとトランスミッションをドライバーの背後に積むミッドシップの関係上、シフトレバーはトランスミッションから離れたところにあり、それを繋いでいるのはワイヤー。ここで手を抜くと、シフトフィーリングがフニャフニャになってしまい、彼女から「もうっ!」といわれそうなくらい、だらしなくなってしまうのです。

が、S660はキリッ! 変速のたびにコクッ、コクッと節度感があり、ストロークも短い。ヒジではなく、手首を支点にしてシフトチェンジできます。このMTはいい!

もっといいのは、エンジンとギヤ比の関係。エンジンは7700回転まで常用できるようになっており(ちなみにCVTは7000回転)、十分に回転の伸びを楽しんでからシフトアップできるのです。

この感覚、フィアットの「バルケッタ」や、ドカティの「モンスター」を思い出しました。アルプス山脈を背後に抱くイタリア=ワインディング王国が生んだこの2台も、ホンダS660もそうなのですが、ちょっと誤解を承知の上でいえばハイギヤードです。街中では3速もあれば十分。エンジンをブン回して乗るようになっているのです。

2速からアクセル全開。



ォ (エンジン回転と加速がリニアに伸びる)
ォ (まだ伸びる…)
ォ (まだまだ伸びる…)
ォ (まだまだまだ加速Gが続く…(; ̄ェ ̄)

ォ パ (アクセルオフでブローオフバルフ)

ュ  ク(3速へシフト)
ッ  コ
!  ッ

グ (←再びアクセルオン!)

ォ (以下同)

これ、ブン回すと超楽しい!

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この繰り返しを延々と楽しめるのですから、もう、ずっと運転していたくなります。パワーリアウインドウを少し下げておくと、エンジンサウンドとブローオフバルブの開放音が、最高のBGMに。わたくし、この6MTと一緒に、国道1号線をひた走る旅に出たくなりました…。

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次に、CVTへ。

え…。マジですか…。

これはS660ではございません。いって見れば“S700”です。発進時からトルクあります。CVTの特性そのものといわれればそれまでですが、これに加えて制御系の“G-Design Shift”をSPORTモードにすると、アクセルペダルとエンジンが直結したかのようにフィーリングがアップ。陳腐な表現ばかりで恐縮ですが、率直にいって6MTよりパワフルに感じられるのです。

そして、意外だったのがCVTの乗り味。6MTよりずっとドッシリしています。落ち着きもあってシットリ。まるで6MTよりトレッドが広い感じ? さっきまで乗っていた6MTより、タイヤの接地面が広い感じ? ひょっとしたら、6MTのタイヤの空気圧が設定よりも高くなっていたのだろうか、などと妄想しつつ(そんなことありません)、ドライビングは続きます。運転を代わってもらい、助手席に座っても同じ印象。乗り味については正直なところ、6MTよりCVTの方が好きです。

さて、6MTとCVTのセッティングはどのように違うのか?

結論、「同じです」(ホンダ開発者即答)。

はっ、これはマジなのですか。本当なのですか。強いていえば、6MTの車重は830kg。CVTは850kgと20kg重いのですが…。倍の車重がある1700kgのクルマだとしたら、40kgに相当。乗り味に違いが表れても、不思議はないともいえますが…。

何が申したいかといいますと、S660は6MTとCVTとで、ほんの少しキャラクターが異なるように感じられたのです。6MTは10代や20代の溌剌とした感じなのに対して、CVTはそこに、30代の若くして渋さを足したようなイメージ。絶対に6MTを選ぶと考えていたMT原理主義の方も、ご成約の前にCVTにも乗ってみることを強くオススメいたします。

【動画】イエローが6MT、ブルーがCVT

<SPECIFICATIONS>
☆S660
ボディサイズ:L3395×W1475×H1180mm
車重:830kg(6MT)/850kg(CVT)
駆動方式:MR
エンジン:0.658リッター直3+ターボ
トランスミッション:6速MT/シフトパドル付きCVT
最高出力:64馬力/6000回転
最大トルク:10.6kg-m/2600回転
価格:198万円〜

(文/ブンタ)

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