■機械式の立体駐車場にも対応するボディサイズ
世界初公開から約半年。CX-30を街中で試せる日がようやくやってきました。早速、テストドライブへと出掛けたいところですが、まずはその前に、CX-30はどんなモデルなのか、おさらいしておきましょう。
マツダはこれまで、コンパクトな「CX-3」、ミドルクラスの「CX-5」、3列シートを備えた「CX-8」と、3モデルのSUVをラインナップしてきました。いずれもキャラクターがしっかりと確立されていて、ラインナップ構成に不満を感じることはありませんでしたが、都市部での取り回しや駐車場事情に加え、実際の使い勝手を考えた場合、「CX-3とCX-5の間にもう1モデルあれば…」という思いを抱く人も、多かったのではないでしょうか。まさにCX-30は、そうしたリクエスト応えたモデルといえます。
CX-30の商品コンセプトは「人生の幅や世界観を広げるクロスオーバー」。実際の開発に当たっては、誰が運転しても丁度いい大きさだと感じられるボディサイズを突き詰めつつ、どこへでも行きたくなるフットワークの良さ、感性に合ったモノを所有する歓びを具現したデザイン、さらに、十分な室内空間や高い車両性能がもたらす心地良さや安心感を目指した、とのこと。
確かにボディサイズは、全長4395×全幅1795×全高1540mmと、縦列駐車も苦にならない大きさ。その上で、一般的な機械式の立体駐車場にも対応したサイズとするなど、扱いやすさへのこだわりが感じられます。
近年のマツダ車は、デザインテーマとして“魂動-SOUL of MOTION”を打ち出していますが、CX-30はその流れを汲みながら、日本の美意識を礎としてさらに深化させることで、「クルマはアート」と呼べるまでの美しさを追求しています。
確かにボディサイドなどは、クルマの動きに合わせ、周囲の景色がS字状に揺らめきながら映りこむなど、マツダ3と同様、デザイン的にも新たな取り組みが感じられます。
さらに、ルーフラインやリアウインドウ、リアピラーの角度を試行錯誤することで、オトナでも十分くつろげるだけの後席スペースや、ラゲッジスペースを確保しながら、クーペのような流麗なプロポーションを実現しています。こうしたデザインへのこだわりも、CX-30の見どころのひとつといえるでしょう。
ちなみにパワーユニットでは、新開発の2リッター直4ガソリンエンジン“スカイアクティブX”に注目が集まっていますが、こちらは2020年初頭のリリースということで、今はまだおあずけ状態。そのため、現時点でのエンジンラインナップは、156馬力を発生する自然吸気の2リッター直4ガソリン“スカイアクティブG”と、116馬力の1.8リッター直4ディーゼルターボ“スカイアクティブD”の2本立てとなっています。
そこに組み合わされる駆動方式は、ガソリン、ディーゼルともFFと4WDを用意。さらにトランスミッションは、ガソリン車が6速MTと6速AT、ディーゼルターボには6速ATのみが用意されています。
■デザイナーまでもがラゲッジスペースの使い勝手を追求
実車と対面して真っ先に感じたのは、マツダがいうとおり「“丁度いい大きさ”だな」ということ。ボディサイズについては、自宅の車庫事情や運転経験、また、自身の体格などによって感じ方は異なると思いますが、チープな実用コンパクトカーのような小ささはもちろん感じませんし、大型SUVのような威圧感もありません。
もちろん、4名乗車+スーツケースなどの荷物にも対応した車体寸法ですから、絶対的には小さくありませんが、ボディの陰影がもたらす躍動感、美しいラインで描かれる端正なボディ形状、低めのルーフラインなども相まって、不自然さを感じることなく、目にもカラダにもしっくり馴染むサイズになっています。この当たりは、マツダデザインの巧みさといえるでしょう。
ちなみに、スタイルやデザインというキーワードを耳にすると「ラゲッジスペースの使い勝手はどうなの?」と思う人がいるかもしれません。その点、CX-30の荷室は、大型のベビーカーや旅行用スーツケースも十分に収まる容量(430L)が確保されているので、まずはご安心を。
その上で、デザイナーを始めとする開発陣は、寸法や容量だけにとらわれることなく、リアゲート開口部の幅や高さ、内張りの形状など、実際の使い勝手を徹底的に検証したそうです。この辺りのスキのなさは、昨今のマツダ車らしい部分といえるかもしれません。
さて、キーを受け取ってドライバーズシートに収まると、いい意味で不思議な感覚に包まれます。ダッシュボードやドアインナーパネルは比較的高い位置に設定されていて、程良い“包まれ感”があるのですが、横基調でダッシュボード上部からドア部分へと流れるようなフードの造形もあって、空間そのものは実際の寸法よりもワイドに感じます。
また、昨今のマツダ車らしく、ピタリと適切なドライビングポジションがとれるのは、もはや説明不要の美点かもしれません。
シートサイズはCX-5と同等の大きさが確保されているということで、身長180cmの筆者でも、肩回りや腿の裏側のサポートが足りない、なんてことはありませんし、座り心地もしっとりとしていて快適です。
■不快な振動や騒音を感じない快適な走行フィール
最初に街中へと歩みを進めたのは、1.8リッターのディーゼルターボ。駆動系は4WD+6速ATという組み合わせです。
1530kgという車重に対し、116馬力というスペックだけを見ると、速さを期待できそうにありませんが、ストップ&ゴーを繰り返す街中に限らず、高速道路の加速でも、不満を感じることはありませんでした。また、アクセルペダルの操作に対する反応はというと、ディーゼルターボという響きから想像するような、みなぎるトルク感こそありませんが、滑らかで程良くパワフル。かつ、スムーズな加速を味わうことができます。
そうした加速中は、ディーゼルエンジンらしい「ルルル…」という軽いサウンドが室内に届きますが、全体的な遮音はしっかりとしていて、うるさいと感じるほどではありません。前席と後席との間で会話する際も、声を大きく張り上げる必要などありませんでした。
続いてドライブしたのは、2リッターのガソリン車。FF+6速ATという組み合わせです。
こちらは、加速感や室内の静かさにおいて、スカイアクティブDよりも一枚上手という印象。加速については、ディーゼル+4WD仕様と比べて130kgほど軽いことが効いているようで、静粛性に関しては、アクセルペダルのオン/オフに関わらず、スカイアクティブDよりもエンジン自体の音量や振動の変化が小さいという点が、少なからず好印象につながっているようです。
とはいえ、最高出力がスペック上で40馬力勝っているスカイアクティブGですが、市街地、ロングクルーズの別なく、実際の走りにおいてディーゼル仕様との明確な優劣はつけがたい、というのが実際のところ。低中速域ではディーゼルターボの滑らかな加速感が魅力的ですし、ガソリン車のリニアなフィーリングも捨てがたい、というのが本音です。ガソリン仕様の最大のメリットは、同等のグレードで比べた際、約25万円お手頃ということかもしれません。
ハンドリングや乗り心地に関しての印象は、ディーゼルターボ、ガソリン仕様ともに共通で、穏やかで快適のひと言に尽きます。
先行したマツダ3と比べると、最低地上高にゆとりがある分、CX-30はサスペンションのストロークに余裕があり、その上、タイヤサイズも215/55R18と扁平率が控えめですから、通常の道路で遭遇する段差や荒れた路面において、不快な振動や騒音などを感じることはありません。
また、背の高いSUVスタイルではありますが、マツダお得意のGVC(Gベクタリングコントロール)の効果もあり、交差点や首都高速などのタイトなコーナーでステアリングを切り増す、戻すという操作を行っても、不快な揺れを感じることはありませんでした。
ディーゼルターボ、ガソリン仕様の別なく、CX-30に触れて感じたのは「上質で扱いやすく、オトナの美的感覚にも馴染むクロスオーバーSUVだな」という思いであり、程良く控えめな優等生という印象が残りました。
マツダらしいひねり、といいますか、「もうちょっとキャラクターが際立つスパイスをひと振りしてくれたら…」なんていう声も聞こえてきそうですが、それは間もなくリリースされる、スカイアクティブX搭載モデルに期待、というところでしょうか。とはいえCX-30の現行ラインナップでも、日々の暮らしに馴染むブレッド・アンド・バター・カー的なSUVとしては、十分過ぎるほどの魅力を備えたモデルであるのは間違いありません。
<SPECIFICATIONS>
☆XD Lパッケージ
ボディサイズ:L4395×W1795×H1540mm
車重:1530kg
駆動方式:4WD
エンジン:1756cc 直列4気筒DOHC ディーゼル ターボ
トランスミッション:6速AT
最高出力:116馬力/4000回転
最大トルク:27.5kgf-m/1600~2600回転
価格:330万5500円
<SPECIFICATIONS>
☆20S Lパッケージ
ボディサイズ:L4395×W1795×H1540mm
車重:1400kg
駆動方式:FF
エンジン:1997cc 直列4気筒 DOHC
トランスミッション:6速AT
最高出力:156馬力/6000回転
最大トルク:20.3kgf-m/4000回転
価格:279万4000円
(文&写真/村田尚之)
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