日本初のおにぎりは、約1300年前に携帯食として作られたらしいのですが、お弁当という食文化は、鎌倉末期から室町時代くらいに中国から伝わりったのだそう。薄い木の皮を仕切りにして器に入れた弁当を酒と一緒に携え、桜や紅葉の見物に行ったのだとか。
日本初の駅弁は竹の皮で包んだ「おにぎり弁当」で、1885年7月、東北本線の宇都宮駅の構内で販売されました。その中身は、黒ゴマをまぶした塩むすび2個で、たくわんが添えられ、竹の皮で包まれたシンプルなものでした。弁当業者などはまだ存在せず、宇都宮駅近くの旅館が日本鉄道の嘱託を受けて作っていました。
おにぎりの主役は「ごはん」で、原料は「米」です。
伝承料理研究家で大阪市立大学大学院生活科学研究科非常勤講師の奥村彪生さんによると、私たちが日本で食べている米は「温帯ジャポニカ米」で、以下の特徴があるといいます。
- ルーツ:中国の揚子江の中下流域から約3000年前に日本へ渡来
- 形状:丸みを帯びた形
- 特徴:粘りの強いでんぷんアミロペクチンを多く含み、握りやすく、冷めてもおいしい
温帯ジャポニカ米に対し、世界の35億人が食べているのが「インディカ米」です。
インディカ米は細長い形状で、温かいうちはおいしいものの、冷めると味が劣化します。また、粘り気が弱く、握るのに適しません。
温帯ジャポニカ米だから、おいしい日本のおにぎりができる!
奥村さん指導の下、「おにぎり弁当」作りの体験が行なわれました。
今回作ったのは、三角形のおにぎりです。おにぎりには、「三角」「丸」「円盤」「俵」と、さまざまな形があります。形には地方性が出ているようで、関東は三角、東北は焼くのに適した円盤、中部は球のような丸型、関西は幕の内弁当に収まる俵型が多いとか。
① ごはんと、好みの具材を用意します。
梅干や鮭といった定番の具に加え、コンビニのおにぎりで人気のツナマヨも登場。
スプーンは、具材をごはんの中に入れる際に使います。
② おにぎり作りの際に、奥村さんはラップを推奨しています。
ごはんが手にくっつかず握れ、直接さわらないので衛生的だといいます。ごはんをラップに取り、水で濡らしたスプーンの腹で、ごはんの中央をくぼませます。
③くぼませたところに具を入れ、包み込みながら成型します。
④スプーンのくぼませ方が浅いと、具がうまく包み込めませんので、注意しましょう。
⑤三角に形を作りながら握り、仕上げに塩とゴマをまぶします。
⑥おにぎりに海苔を貼り付け、たくわんを添えたら、おにぎり弁当のできあがり!
竹の皮に包んだ姿がいい味を出しています
カンタンなおにぎり弁当の包み方
続いて、おにぎり弁当を持ち運ぶときに便利な包み方を奥村さんに教えてもらいました。
新聞紙で包んでいきます。
新聞紙の端をつまみ、写真のように畳みます。
半分に畳んだ新聞紙を開き、真ん中あたりにおにぎり弁当を置いてくるりと4回まわします。
キャンディを包むように、包みの端をひねります。
ひねった部分をセロテープでくっつけて持ち手のようにし、リボンを結べば完成です
私もおにぎり作り体験に参加し、自作おにぎりを持ち帰って食べましたが、あれ? おにぎりのごはんって、こんなにおいしかったっけ? と、ビックリしました。
そこで、後日、自宅でおにぎり作りに再チャレンジしてみました。
日本初の駅弁「おにぎり弁当」にならい、黒ゴマをつけた塩むすび2個。
これにたくわんを添えれば、日本初の駅弁の再現です。
日本の和食は外国人に人気ですが、日本の食文化のベースであり、私たちの主食である「ごはん」のおいしさも、ぜひ日本にやってくる外国人旅行客に伝えたいですね。
(取材・文/綿引まゆみ)
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