見た目だけじゃない!シトロエン「C3エアクロスSUV」は走りも使い勝手も◎の実力派

■C3に似てるけれどよくよく見ると全くの別モノ

「シトロエンよ、お前もか…」なんていってしまうと怒られそうですが、今やSUVは数ある自動車のカテゴリーにおいて、確固たるポジションを築いた、ということなのでしょう。確かに、天地にカサのあるSUVのボディは、広い室内空間を確保しやすいですから、普段使いはもちろんのこと、荷物がかさばるレジャーなどにおいても、使いやすいという利点があります。また、かつては画一的だったSUVのデザインも、最近はスポーティなものもからアウトドア志向の強いものまで、まさに百花繚乱の状況です。

シトロエンも、2016年に日本で発売された「C4カクタス」、2017年に導入された“通常版”C3ともに、SUV風のエクステリアをまとっていますし、2019年には自らSUVを名乗るミドルクラスモデル、C5エアクロスSUVも日本デビューを飾っています。

ここに紹介するC3エアクロスSUVは、まさにそうした流れに乗ったモデル、というところでしょう。とはいえ、プラットフォームこそC3のそれをベースとしていますし、顔つきなどもシリーズ共通のイメージでまとめられてはいますが、ボディやディテールは思いのほか異なります。

それもそのはず、ボディサイズは全長4160×全幅1765×全高1630mmと、C3に比べてそれぞれ165mm、15mm、135mmほど拡大。ホイールベースも2605mmと70mm延長されるなど、ひと回りとまではいわなくとも、ちょっと大きくなっているのです。

ヘッドライト周りの配置や、シトロエンのエンブレム“ダブルシェブロン”が配されたグリルの形状などは、C3のイメージを踏襲するC3エアクロスSUV。また、バンパーはアンダーガード状の装飾が加えられる一方、C3の特徴でもあるボディサイドの“エアバンプ”が省かれるなど、よくよく見るとボディはC3とは全くの別モノであることが分かります。

そうそう、リアドア後部にある“Cピラー”と、リアエンドの“Dピラー”との間にクォーターウインドウを配すことで、C3エアクロスSUVの後席回りは開放感や明るさが増しています。

C3エアクロスSUVのインテリアは、メーター回りの意匠などはC3と似ているものの、ダッシュボードやドアインナーパネルは全く異なるデザイン。例えば、助手席側グローブボックスの上もトレイ状となっており、ちょっとした小物などを置くこともできます。

C3エアクロスSUVのラゲッジスペース容量は、C3が標準状態(リアシート使用時)で300Lであるのに対し、410Lへと拡大されています。さらに、スライド式の後席を最も前に移動させれば520Lに、リアシートの背もたれまで畳んでしまえば1289Lへと、スペースを拡大することも可能です。

その上、助手席の背もたれまで折り畳めば、2.4mの長尺物も積載可能。かさばりがちなアウトドアスポーツ用のギアを楽勝で積み込めます。もはや、フランスは“バカンスの国”うんぬんといったフレーズは使い古されたものと思いますが、多彩なシートアレンジや妥協のないユーティリティは、やはりフランス車ならではといったところでしょう。

また、試乗した上位グレード「SHINE(シャイン)」のインテリアは、シートに明るいグレーのファブリックを用いるなど、カジュアルな雰囲気に仕立てられています。

こうしたコーディネートは、C3やC5エアクロスSUVにも通じるもの。レザーやウッドといった高価なマテリアルを使わずとも、色使いやざっくりとしたファブリックの質感などでワクワクするような楽しさを巧みに演出する辺りは、センスの良さを感じさせます。

ちなみに、日本仕様のグレード構成は、フランス本国では中級トリムとなる「FEEL(フィール)」(263万8000円)と、上級グレードSHINE(279万1000円)の2種類。このうちSHINEには、パノラミックサンルーフ、カラーマルチファンクションディスプレイ、17インチのマッドアンドスノータイヤ、グリップコントロールなどをセットにしたパッケージオプション(23万4000円)も用意されています。

■座り心地のいいシートでシトロエンらしさを感じる

テストドライブに連れ出したのは、上記のオプションを装着したSHINEパッケージと呼ばれるモデル。C3エアクロスSUVに搭載されるエンジンは、グレードの別なく、排気量1.2リッターの直列3気筒ターボで、最高出力は110馬力、最大トルクは20.9kgf-mを発生します。最大トルクの発生回転数こそ若干異なりますが、基本的にはC3と同じエンジンで、電子制御6速ATを介して前輪を駆動する点も共通です。

SHINEパッケージには、路面状況に応じてトラクションを最適化するグリップコントロールと、急斜面の坂を下る際に車速を低く抑えるヒルディセントコントロールが備わります。

昨今、クロスカントリー志向の強いモデルでなければ、SUV=4WDであることは必須ではなくなっていますが、キャンプ場周辺の荒れた道を走ったり、ウインターレジャーといった用途を考えたりすると、ある程度の走破性を望みたいもの。一方で、4WD化はメカニズム面が複雑になりますし、重量面においても不利になるのも事実です。そこで、FF車でありながら、電子制御である程度の走破性を確保しようというのは、フランスらしい合理主義といえそうです。

さて、運転席に収まって真っ先に感じるのは、シトロエンらしい、しっとり、ほっこりとしたシートの座り心地の良さ。座面の高さなど必要な調整機構は備えていますが、構造としては決して高価な作りではない(失礼…)ものの、ドライバーの体形にピタリとフィットする感覚は、やはり独特です。また、このシートに腰を下ろしていると、必死に飛ばそうというよりも、のんびりドライブを楽しもうという気になるから不思議です。

とはいえC3エアクロスSUVは、ちょっとしたワインディングを飛ばしても、思いのほか“楽しめる”美点も備えています。1310kgという車重に対し、エンジンパワーは110馬力に過ぎませんから、絶対的なスピードはコンパクトカーの標準、といったレベル。サスペンション形式も、前がストラット、後ろがトーションビームと、凝ったメカニズムではありませんが、タイトなコーナーでも望外の粘り腰でクリアしてくれます。

もちろん、スポーツカー的な機敏さとは異なりますし、ロールと呼ばれるコーナリング時のボディの傾きも、かなり大きめ。とはいえ、ステアリングを切り増すようなシーンでも、ボディはゆらりとするものの、接地感が失われるようなことはありません。また、ちょっと右足に力を込めれば、3気筒エンジンらしい「ビーン」とも「ブーン」とも聞こえるビートの効いたエンジン音が車内に届きますが、音自体は不快ではありませんし、それもまた、走る楽しさのちょっとしたスパイス、という印象です。

昨今のSUVカテゴリーは、まさに群雄割拠。個性的なエクステリアや凝ったメカニズムを採り入れるなど、各自動車メーカーがしのぎを削っています。

シトロエンだってそうしたグローバル市場の中にいるわけですが、C3エアクロスSUVの合理的でシンプルなメカニズムや、高い快適性と優れた実用性に触れると、SUVを作るからといっても、自社のポリシーは決して曲げないし、忘れてはいないんだな、と強く感じます。それでいてイマドキのシトロエンは、かつてのように「分かる人にだけ分かればいい」なんて冷たいクルマではありません。C3エアクロスSUVはとてもフレンドリーなクルマですから、気になる方は、まずご試乗を。

<SPECIFICATIONS>
☆SHINEパッケージ
ボディサイズ:L4160×W1765×H1630mm
車重:1310kg
駆動方式:FF
エンジン:1199cc 直列3気筒 DOHC ターボ
トランスミッション:6速AT
最高出力:110馬力/5500回転
最大トルク20.9kgf-m/1750回転
価格:302万5000円

(文&写真/村田尚之)


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