名前以外にも変化あり!程良く快感な「マツダ6」ガソリンターボの気になる実力

■GVCプラスを新設定しApple CarPlayにも対応

今回のテキストは、マツダ6に新たに用意された“スカイアクティブ-G 2.5T”モデル。つまり、2.5リッター直列4気筒ガソリンターボ搭載車です。

「CX-5」や「CX-8」にも搭載されるこのエンジンは、最高出力230馬力、最大トルク42.8kgf-mというスペックで、マツダいわく「4リッターV8自然吸気エンジン級の最大トルクが生み出す、力強く気持ちよい加速フィールが自慢」とのこと。実際、車重で50〜100kgほど重いCX-5でも十分なパフォーマンスを発揮しますから、マツダ6の走りも期待できそうです。また、CX-5ではFFと4WDという2種類の駆動方式が用意されますが、マツダ6のスカイアクティブ-G 2.5T仕様はFFのみの設定となります。

この新エンジンを含む、新生マツダ6のラインナップを整理してみると…

◎ガソリンエンジン
・2リッター自然吸気:FF+6速AT
→20S/20Sプロアクティブ
・2.5リッター自然吸気:FF+6速AT
→25S Lパッケージ
・2.5リッターターボ:FF+6速AT
→25T Sパッケージ

◎ディーゼルエンジン
・2.2リッターターボ:FF/4WD+6速MT/6速AT
→XD/XDプロアクティブ/XD Lパッケージ(※XDは6速ATのみ)

…となっています。

価格は最もベーシックな20Sで289万3000円。一番高価なのは2.5リッターターボの25T Sパッケージで431万7500円という設定。ボディは各グレードとも、セダンとステーションワゴンが用意されていますが、価格はボディ形状に関わらず、同グレード・同価格となっています。

名称変更に伴うその他の変更としては、高速走行時や滑りやすい路面でも安定した挙動を実現する“GVC(G-ベクタリング コントロール)プラス”が標準設定されました。また“マツダコネクト”がApple CarPlay、Android Autoに対応するなど、些細ではありますが、利便性の向上も図られています。

ちなみにボディサイズは、セダンが全長4865mm、全幅1840mm、全高1450mm。ワゴンはそれぞれ4805mm、1840mm、1480mmという数値で、基本的には前身のアテンザと共通です。ただし2.5ターボ車は、ブレーキサイズの大径化、トランスミッションのファイナルギヤ比の低速化など、エンジン性能の向上合わせた変更を受けています。

■往年の名車を想起させる雑味のない乗り味を実現

運転席に納まって真っ先に感じたのは、マツダ車らしく奇をてらうことのないインテリアから受ける安心感。さらっとした手触りのステアリング、肩回りや腿の裏までしっとりとフィットするシート、ドライバーズカーにふさわしいシンプルで見やすいメーターやダッシュボードのデザインなど、パーツをひとつひとつ見ていっても、十分に満足できる仕上がりで、全体のまとまりの良さもフラッグシップならではのレベルにあります。

スカイアクティブ-G 2.5T車は、レザーシートに赤いステッチがあしらわれたり、ダッシュボード中段にスエード調素材が用いられたりと、ちょっとした装飾が施されていますが、派手さを抑えた演出という塩梅で、オトナが乗っても気恥ずかしさを覚えることはありません。昨今、ミドルクラスのサルーンやワゴンでも、個性的なインテリアを備えたモデルがありますが、マツダ6のプレーンなデザインは視覚的に疲れることもなく、接すれば接するほど好ましく思えてきます。

さらに走り出しても、マツダ車らしい清々しさが感じられます。42.8kgf-mという大トルクを2000回転で発生するエンジンは、まさに全域でトルクフル。2000回転プラスαといった領域からの加速は十分すぎるほど強力ですし、自然吸気エンジンのようにレッドソーンの手前までスムーズに回ります。

また、セダン、ワゴンともに雑音はしっかりカットされていますが、速度や回転数に比例し、ドライバーにはエンジンからの軽いハミングが聞こえてきます。街乗りから高速クルージングまで、スカイアクティブ-G 2.5Tエンジンのパフォーマンスに不満を感じることはなく、むしろ、程良い快感を味わうことができました。

一方、ブラックメタリックに塗られた大径の凛々しいホイールを見ると、乗り心地がやや不安になりますが、225/45R19というタイヤサイズは自然吸気モデルと共通で、実際の乗り味も、どちらからといえばスポーティというより快適といった印象。とはいえ、ちょっとしたワインディングでは、しっかり動く足回りとGVCプラスがもたらす自然なコーナリング感覚を楽しめます。

今回、アテンザ改め、新生マツダ6に触れてみて、マツダは表に出ない部分にも着実に改良を重ねることで、アテンザをしっかり育ててきたんだな、と感じることができました。特に、静止状態から10km/h程度までのジワリとくる加速感、踏み始めこそ制動力は弱めでありながら足の力の込め具合にリニアに反応するブレーキの感触、刺激的ではないけれど意のままに操れる操縦感覚、など、全体を通しての走りの印象や“いいモノ感”は、往年のメルセデス・ベンツ「Eクラス」(“W124”型)に通じるところが多いようにも思いました。

冷静に考えれば、W124は今から30年以上も前に誕生したクルマ。名車といえども、スペック面で現代のクルマに敵う部分など皆無でしょう。しかし、W124を名車たらしめた、人間の五感をむやみに刺激しない自然な感触や雑味のない乗り味、その片鱗を、マツダ6にちらりと垣間見たのも事実です。現行型のデビューから7年。新たなネーミングでスタートを切ったマツダ6は、意外と侮れない1台かもしれません。

<SPECIFICATIONS>
☆セダン 25T Sパッケージ
ボディサイズ:L4865×W1840×H1450mm
車重:1570kg
駆動方式:FF
エンジン:2488cc 直列4気筒 DOHC ターボ
トランスミッション:6AT
最高出力:230馬力/4250回転
最大トルク:42.8kgf-m/2000回転
価格:431万7500円

<SPECIFICATIONS>
☆ワゴン 25T Sパッケージ
ボディサイズ:L4805×W1840×H1480mm
車重:1590kg
駆動方式:FF
エンジン:2488cc 直列4気筒 DOHC ターボ
トランスミッション:6AT
最高出力:230馬力/4250回転
最大トルク:42.8kgf-m/2000回転
価格:431万7500円

(文&写真/村田尚之)


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