【雪上試乗 スバルAWD】性格に合わせて4種を使い分け。楽しいのに安心感は絶大!

さて、現在のシンメトリカルAWDの主流は、ハイブリッドモデルを含むインプレッサ、XVなど、大半のAT(現在のスバル車の場合はCVT)モデルに搭載される“アクティブトルクスプリット方式AWD”です。何やら複雑で長い名称ですが、1980年代に登場した「レオーネ ツーリングワゴン4WD」(懐かしい!)で採用された“MP-T(マルチプレートトランスファー)”がその源流と聞けば、ピン!とくる人も…あまりいないですかね(汗)。

要は、前輪と後輪をつなぐプロペラシャフトの間に油圧多板クラッチを配置し、必要に応じて後輪側へ必要な駆動力を流す、という仕組みです。通常は、前後輪のトルク配分を60:40にして、FF(前輪駆動)車に近い、安定感ある走りを提供します。

レヴォーグ(1.6リッターモデル)、フォレスター、「レガシィ」、「アウトバック」、「クロスオーバー7」の場合、“4輪の駆動状況”、“エンジントルク”、“ハンドルの切れ角”、“クルマが旋回しようとする度合い(ヨーレート)”、“横加速信号”などをパラメーターにして、前後輪への駆動配分をきめ細かく決めています。

ドライバーがギヤを選ぶMT車と異なり、AT車ではクルマ側である程度、トルクを増減させることが可能なので、AWDシステムのコントロールの幅も広がるというもの。アクティブトルクスプリット方式AWDは、そのややこしい名前とは裏腹に、イージードライブとAWDの安心感を、それと気づかせずに両立させるシンプルで優れたシステムなのです。

しかーし! エンジニアの追求心というものには限りがないようです。「AT車でも、もっと積極的に走らせたい!」という願望を、スバルの技術陣は“VTD-AWD(不等&可変トルク配分電子制御AWD)”として結実させました。

これまた分かりにくい名前ですが、ベーシックなMT車の、ビスカスLSD付センターデフ方式AWDをAT車に応用したシステム、と考えると、少し分かりやすいかも。

複合遊星ギヤを用いた機械式のセンターデフが、基本の前後トルク配分を45:55とリア寄りにします。前後の差動制限は、受動的なビスカスカプリングに替え、電子制御される油圧多板クラッチが行います。「状況に応じて、または先んじて、積極的にトルク配分を変えてやろう!」というわけです。

FF車に似たドライブフィールを持つアクティブトルクスプリット方式AWD搭載車の場合、雪道のタイトカーブで乱暴にスロットルを開けても、クルマは緩やかにカーブの外側へ膨らむだけ(=アンダーステア)。

一方、VTD-AWD車では、後輪を軽く外へ振り出して(=オーバーステア)、タイトにカーブを曲がることができます。より積極的かつスポーティな走りができるわけですね。現行のスバル車では、レヴォーグの2リッターモデルと「WRX S4」が、このVTD-AWDを採用しています。

 ■シンメトリカルAWDが創出する新たなメリットとは?

次のページへ

この記事のタイトルとURLをコピーする