■現状のSUVブームに火をつけた初代エクストレイル
初代エクストレイルがデビューしたのは、2000年11月のこと。その頃の日本市場は、1990年代に盛り上がった“ヨンク”ブームの後を継いだトヨタ「RAV4」やホンダ「CR-V」のヒットも落ち着き、どことなくSUVは“オワコン”という空気があった。
そんな中、「アウトドアレジャーで活躍する気軽なSUV」というコンセプトを打ち出し登場したのが、初代のエクストレイルだ。トヨタの「ハイラックス サーフ」や「ランドクルーザー プラド」、そして三菱「パジェロ」のように「道なき道を走り抜けられる」ほどの走破性こそ備えていないが、その分、日常における使い勝手は上々。それでいて、街乗り重視のRAV4やCR-Vと比べ、アウトドアレジャーとの親和性が高いという絶妙なポジショニングから、若者を中心に高い支持を獲得。デビュー翌年の2001年から2010年まで、10年連続して日本で最も売れたSUVの座に輝いた。
そんなエクストレイルも、2013年にデビューした現行モデルで3代目。現行モデルは全長が初代に比べて25cmほど伸びるなど車体が大型化し、その分、リアシートとラゲッジスペースが広くなり実用性が向上した。
一方のスタイリングは、初代や2代目に比べると丸みを帯び、ソフトな雰囲気に。それでいて、アウトドアレジャーの相棒にふさわしい優れた機能性は、従来モデル以上に充実している。一部グレードには、ぬれたウエットスーツや雪のついたスキーウエアを着ていても気兼ねなく乗り込めるよう、シートとフロアの生地に撥水素材を採用し、荷室フロアには汚れても簡単に掃除できる“防水ラゲッジボード”を採用。アウトドアクティビティを楽しむ人にとっての、気の利いたクルマ作りを継承している。
さらに、現行エクストレイルは、3列シートの7人乗り仕様や、ハイブリッド車もラインナップ。昨今のトレンドもしっかりカバーしている。
■レザーをふんだんに配した20Xiレザーエディション
そんなエクストレイルが、2020年1月にマイナーチェンジを受けた。驚くのは、ちょっとした装備変更という小手先レベルのものではなく、先進安全装備の大幅アップデートなど、クルマの中枢にまで変更が加えられたことだ。
例えば従来モデルは、先進安全システムの“目”に相当する部分に単眼カメラを採用していたが、新型はそこにミリ波レーダーをプラスするという、まさに“システム総入れ替え”状態の変更を実施。より正確に、かつ詳細に、車両前方の状況を把握できるようになった。その結果、車両や歩行者との衝突を回避し、衝突被害を軽減してくれる自動ブレーキは、夜間性能が向上したのはもちろんのこと、直前のクルマだけでなく、2台前を走るクルマの動きまで検知し、予測を立てられる高度なシステムへと進化した。
加えて、日産独自の運転支援技術“プロパイロット”も性能向上。中でも、高速道路上でドライバーがアクセルやブレーキを操作することなく、前方車両と一定の車間を空けながら速度を自動調整する“ACC(追従型クルーズコントロール)”の制御が、格段に進化している。実際、高速道路で試してみたが、前方のクルマが減速した際の速度コントロールが一段と巧みになり、ドライブ時の違和感がさらになくなった。
今回の安全装備類のアップデートは、テレビに例えれば「見た目は同じでも、画質がハイビジョンから4Kに変わった」くらいの劇的進化。もちろん、クルマの基幹にかかわる部分だけに、車両全体の制御なども大幅に変更されている。たかが“一部改良”のために、日産自動車はよくぞ、相当な労力とコストを費やしたものだ。「安全システムはしっかりバージョンアップさせていく」という、開発陣の意気込みを感じさせる。
そして今回の一部改良では、本革シートなどを組み合わせた新グレード「20Xiレザーエディション」が追加された。タン色の肌触りのいいレザーで、前後シートはもちろんのこと、ドアやセンターのアームレスト、ダッシュボードの一部、そして、センターコンソール側面までをコーディネート。エクストレイル=タフギアというイメージが強かったが、ラグジュアリーな仕立ての20Xiレザーエディションは、これまでにない新たな個性を感じさせる。
ちなみに、20Xiレザーエディションに用いられるレザー素材は、撥水処理が施されていないのでアウトドアレジャーの相棒には向きにくいが、都会派のユーザーにはマッチングがいいはず。この新グレードの追加は、もしかすると「次期モデルでは高級路線へシフトしますよ」という伏線なのかもしれない。
■インテリジェント4×4は依然として一流の性能
このように、新しい個性をプラスしながら、熟成の域に達した現行エクストレイル。その4WD性能を、この冬、雪の北海道でテストする機会を得た。
エクストレイルに搭載される4WDシステムは、“インテリジェント4×4”と呼ばれる電子制御式だ。ドライバーのハンドル操作を検知する“舵角センサー”や、クルマの旋回状態を判断する“ヨーレイトセンサー”を活用し、走行中のクルマがどのような状況にあるのかをしっかり把握。ドライバーの意思をクルマが予測しながら、前後輪への駆動力配分をきめ細かく制御してくれるため、4WDのモードスイッチを「AUTO」にしておくだけで、滑りやすい雪上路でもしっかり曲がってくれるのだ。
さらに、モードスイッチを悪路向けの「LOCK」にすれば、前後タイヤへの駆動力配分が、おおむね前輪50:後輪50に固定される。このモードでは後輪にも大きな駆動力が伝わるため、ドライバーのテクニック次第では、旋回中にアクセルペダルを踏み込むことで積極的に曲がっていける状態となる。
舗装路はもちろんのこと、滑りやすい雪の上でもダイナミックに走れるエクストレイル。過酷な環境において味わえる、走る楽しさは、依然として一線級だ。
<SPECIFICATIONS>
☆20Xiレザーエディション(4WD)
ボディサイズ:L4690X×W1820×H1740mm
車重:1560kg
駆動方式:4WD
エンジン:1997cc 直列4気筒 DOHC
トランスミッション:CVT
最高出力:147馬力/6000回転
最大トルク:21.1kg-m/4400回転
価格:350万3500円
(文/工藤貴宏 写真/&GP編集部)
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