■飛行機のランディングギアに使われる高級ステンレス
素材はオールステンレスです。そもそもステンレスとは、鋼にクロムを11%以上含んだ金属。耐食性=さびにくさと、高強度、高温にも低温にも強い特性があることから、航空機の離着陸装置の素材としても使われるそうです。
ちなみにステンレスは「不動態被膜」というものに覆われており、例えば傷が入ってそこから錆が始まっても、被膜が自己修復して傷口をふさぐため、表面だけ錆があっても深くまで浸食しにくい、という原理みたいです。ステンレスも錆がでますが、拭けば割とすぐにきれいになるのはそういうことなんですね。
ただしこの素材、硬いので、加工難易度は高め。だから職人の手仕事が不可欠でしょう。加工コストの高いステンレスを、燕三条の職人が、手作業で一本ずつ作り上げているから、精度が高い逸品に仕上がっているんですね。この価格にも納得です。
あー説明している間に、もう一本欲しくなってきた…。
■なぜにスノーピーク? 1本のプライヤーが背負った数奇なストーリー
さて、最後にブランド名の秘密について。スノーピークとダイワそれぞれのお客様センターに問い合わせしてみました。大人の事情でこのあたり答えてくれないかと思いきや…両ブランドのお客様センターの方が快く答えてくれました。
スノーピークは、かつてフィッシング事業を手掛けたことがありましたが、のちに撤退。そのときに釣り具の販路ならダイワに…ということで、スノーピークの釣具商品を、ブランドごとダイワ(現・グローブライド)に事業譲渡したのだそうです。このプライヤーを含め、その後もいくつかの商品はブランドとして継続。しかし、スノーピークから受け継いだ、日本製の高品質な金属加工系の釣具を「CARP」として再ブランドしました。
なんと、偶然にもこの原稿を書いていた2020年春から、このプライヤーもCARPブランドにロゴが変更され、WEBカタログに登場しました。ただし「ブランドだけの変更で、素材や製法などは一切変わりません」(ダイワ)とのことだったので、ひと安心ですね。
1本ずつ、職人が仕上げているから、歩留まりが悪い。素材と作りにこだわれば、効率良く作れない。どうしてもコストがあがる。しかし、3年間使っての満足感はとても高かったのは紛れもない事実です。
フィールドでの1日をどこまで心地よく楽しめるか否かは、道具が左右します。できれば、使って満足できる逸品に囲まれて釣りを楽しみたいものですね!
>> CARP「PSE-002ステンボーンプライヤー190」
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(取材・文/ナオ・サクライ)