薪ストーブに環境的な制限はあるのか?
——現在、都市部に住む人でも薪ストーブを楽しむ人が増えているように感じます。一方で住宅密集地の家で設置するためには特別な注意点もあるように思います。
梶浦:業界全般ではなく弊社の例になりますが、新築物件で薪ストーブの採用率が5割を超えています。半分以上の方が設置しているので、これは決して少なくない数だと思います。ちなみにBESSの場合、初めて家を買う方で自宅として利用される方が9割を超えているので、多くの方が別荘ではなく自宅に薪ストーブを設置していると言えます。
——住宅密集地などで薪ストーブを設置するのに問題はないのでしょうか。
梶浦:住宅密集地は、そもそも屋根や外壁に防火の制限がかかっています。そのため、薪ストーブを設置するうえで守るべき、煙突の設置や内装制限をクリアすれば設置可能です。
——もうひとつ気になるのは近隣関係です。たとえば煙突から出た灰が近隣に飛び散るようなことは?
梶浦:薪ストーブの原理自体は昔から変わっていませんが、現在の薪ストーブの多くは灰を燃焼させ煤にする、さらに煤まで燃焼させるものが増えています。正しい使い方をすれば、近隣に灰が落ちるということはほとんどありません。
ただ、まだ多くの人にこのようなことが浸透していないので、煙突がある=そこから煙が出てニオイがつくというイメージはあります。その意味でもご近所との付き合いを大事にして理解していただくことは大切かもしれないですね。
薪ストーブ設置予算はおよそ軽自動車一台分
——薪ストーブは新築で設置する人と、後から追加する人がいると思います。それぞれ選び方の注意点などを教えてください。
梶浦:料理がしやすい二層式のものや炎が眺めやすいガラス窓を大きくしたものなど、薪ストーブはいろいろなタイプが出ているので、自分のライフスタイルに適したものを選ぶのが一番です。
大きさも家のサイズに合わせたものを選ぶのがいいでしょう。同じ量の薪を燃やすなら、大きい薪ストーブより小さな薪ストーブの方が、気流などによって火力が増すため、暖まりやすい。とはいえ、暮らしを楽しんだり、暖をとるうえでは、好みで選んでいいと思います。
BESSでは薪ストーブのある暮らしを提案しているので、さまざまな薪ストーブを用意していますし、ストーブベースもタイル型、石門型、ピクチャーウインドウタイプなどいろいろあります。
BESSでの新築の場合は薪ストーブのある暮らしを家の基本設計の段階からプランニングするので、神経質にならなくても大丈夫でしょう。後付けの場合は煙突設置スペースや内装制限をクリアする必要があるので、設計者や工務店と相談になります。これから家を建てる方で予算的に薪ストーブを設置するのは難しいから将来的に、と考えているようであれば、最初に設置スペースを決めて煙突の穴を開けておくのもいいでしょう。
——設置コストはどのくらい見ておくといいでしょう?
梶浦:製品と薪ストーブベースをどう作るかにより大きく違うので一概に言えませんが、本体が30万~60万円くらい、そこに煙突+設置費用が50万~100万円くらいですね。
——みなさん薪はどのように調達しているのですか?
梶浦:簡単なのはWebで購入することですね。あとはホームセンターでも薪を取り扱っているところはたくさんあります。ただ、薪ストーブ愛好家は薪の調達をひとつの楽しみにしていることが多いですよ。たとえば工務店や資材屋と仲良くなって廃材を分けてもらったり、自治体が伐採した木を配る日をチェックしていたり。山を持っている方と仲良くなり、間伐材をいただいているという方もたくさんいらっしゃいます。
——薪を通して新たな仲間が増える感じですね(笑)。薪ストーブを使う段階で気を付けたほうがいいことはありますか?
梶浦:まず薪はしっかり乾燥させてから使ったほうがいいです。そのほうが熱量が出るのはもちろん、ストーブへの負担も少なくなります。少なくても半年~1年くらい乾燥させたものをオススメします。
薪ストーブは炉が暖まっている状態のほうが火が付きやすいので、最初は薪を多めに入れたほうがいいでしょう。また小さなお子さんがいるお宅では、安全のために柵を設置した方がいいかもしれませんね。熱は上にたまりますので、天井が高い家ならシーリグファンを設置した方がいいでしょう。
——メンテナンス面ではどのような注意が必要ですか?
梶浦:シーズンごとに煙突の掃除だけは欠かさないでいただきたいです。高いところに登るのでできれば最初は職人さんにお願いして、やり方を覚えてからご自身でやられた方がいいでしょう。あとはガラスの煤を拭きとるなど、日常的な手入れだけで普通にお使いいただけます。
プロに教わる、初心者のための薪ストーブ
1.薪ストーブを楽しむ上で必要な道具
2.ストーブの基本的な火のつけかた
焚き火と同じように細い木から順番に火をつけます
BESSの展示場では、冬の間に薪ストーブに火がつくので実際にその魅力が体感できます。全国に42カ所の展示場があり、受付を済ませたら自由に見学できます。家を購入する予定がない人でも楽しめるので、薪ストーブに興味がある人にオススメです。●総合展示場「BESSスクエア」http://www.bess.jp
夏はキャンプで焚き火、秋から春先は家で薪ストーブ。そんな暮らしが実現すると楽しいですよね! これを機に本気で薪ストーブを考えてみたくなりました!
(文/高橋 満<BRIDGE MAN>)
1970年、東京都新宿区生まれ。ガテン、B-ingなど求人誌の編集部を経て、カーセンサー編集部に。独立後は音楽誌、クルマ誌の編集に携わりながら多くの媒体で執筆。現在はクルマ、アウトドアなどをフィールドにすると同時にさまざまなテーマで著名人へのインタビューを担当。
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