“ノーマルTT”こと「TTクーペ 2.0 TFSI」に搭載される2リッター直4ターボのアウトプットは、最高出力230馬力、最大トルク37.7kg-m。一方“トップ・オブ・TT”たるTTSのそれは、TTクーペと同じ排気量から286馬力と38.8kg-mを絞り出します。
面白いのは、TTSのハイチューン版エンジンも、圧縮比はTTクーペと同じ9.6:1で、カタログに記載されるJC08モード燃費は、TTSの方がリッター当たり0.2km優れる14.9km/L。車重は、TTSの方がTTより90kg重い1410kgであるにもかかわらず、です。うーむ、もしやアウディは、ノーマルTTのパワー&トルクを、出し惜しみしてるのではないでしょうか…?
車名にも使われる“TFSIエンジン”は、アウディが誇る直噴ターボユニット。シリンダー内に燃料を直接噴射することで、より精緻に燃焼をコントロールするシステムです。
かつてターボエンジンといえば、ノッキング(シリンダー内の異常燃焼)を防ぐために、圧縮比を低くせざるを得ませんでした。それがイコール、燃費の悪さにつながっていたんですね。「ターボ車は“ガス喰い"」なんていわれた由縁です。ところが、直噴技術の発達のおかげで一転、ターボエンジンは燃費向上に貢献するキーデバイスのひとつとなったわけです!
ちょっと意地の悪いチェックをしてみましょう。アウディと同じグループのフォルクスワーゲンでも、基本的に同じエンジンが使われています。
ホットハッチの代名詞「ゴルフGTI」に積まれる2リッターターボのボア×ストロークは、82.5×92.8mm。TTやTTSのそれと全く同じです。圧縮比もTTやTTSと同じ9.6ながら、最高出力220馬力、最大トルク35.7kg-mと抑え気味のスペック。GTIという輝ける名前からは意外なことに、ノーマルTTのアウトプットに10馬力と2.0kg-m届きません。
その分(!?)、ゴルフGTIのカタログ燃費は15.9km/L(デュアルクラッチ式6AT車)と、3車の中で最高の数値を記録しています。車重は、TTとTTSの中間に位置する1390kg。
TT/TTSのようなスペシャルボディは、ベースとなるハッチバックから派生することが多く、いかなプラットフォーム共有戦略が進んでも、多少なりともムリが生じるものです。ですから「TTのカタログ燃費がいまひとつ」というよりは、「TTSはハイチューンエンジンを積んでいるにもかかわらず、燃費の面でも相当がんばっている」と捉えるべきでしょう(それにしても、TTとTTSのカタログ燃費の値は不可解ですね…)。