SUVじゃ満足できない人に!BMW「3シリーズツーリング」で再考するワゴンの真価

■走りで選ぶならステーションワゴンでもBMW

最後に、ライバルであるメルセデス・ベンツ「Cクラス ステーションワゴン」やアウディ「A4アバント」と比べての、3シリーズツーリングのアドバンテージについて触れておこう。

まず、ステーションワゴンである以上、外せないのはラゲッジスペースの使い勝手。もちろん、広さ自体も重要だが、実はそれぞれの個性が現れるのは、荷室に関わる細かな機能なのだ。

その点、3シリーズツーリングはリアゲート全体が開くのに加え、リアのウインドウ部だけを開けられる構造を採用している。これは、BMWのステーションワゴンに受け継がれる伝統の機能で、気軽に開閉できるのが美点だ。バッグなどの小物を出し入れする際にはとても重宝するし、一度使うと、リアゲートだけではわずらわしく感じることもある。この機能を備えるのは、3台の中では3シリーズツーリングだけだ。

また3シリーズツーリングは、運転支援機能の充実ぶりも魅力的だ。例えば、前進してきた道をクルマがたどり、自動で50mまでバックしてくれる“リバースアシスト”は、狭い道で対向車とすれ違えなくなった時などに威力を発揮。さらに、BMWが日本で販売されるクルマで初めて実現した高速道路での“ハンズオフ”機能は、ハンドルから手を離した状態でも、車線に沿うようハンドル操作を制御してくれる(ただし、自動運転ではないため、ドライバーは前方を注視し、すぐに操作を行える状態にしておく必要がある)。使用できるシーンに制約はあるものの、これもライバルにはない大きなアドバンテージといえるだろう。

そして何より、3シリーズツーリングには運転する歓びがあふれている。ワゴン化による重量増などに起因するネガは全く感じられず、セダンと同様、ハンドルを切るとスッとシャープに向きを変える。この感覚のためだけにBMWを選んだとしても、後悔はないだろう。また、官能的な6気筒エンジン、爽快な4気筒ガソリンエンジンなど、パワーユニットのフィーリングはライバルを凌駕。フットワークはどのグレードを選んでも軽快だから、走りにこだわる向きには、ステーションワゴンでもやはりBMWがオススメだ。

日本でも、3シリーズを始めとするドイツ・プレミアムブランドのDセグメントやEセグメントでは、ステーションワゴンを愛用している人が多い。週末や長期の休日に、高速道路を使って郊外のリゾートへ出掛けるシーンがよく似合うこれらのモデルが選ばれるのは、やはり、走りも実用性もハイレベルで、ツウな選択肢だからだろう。つまるところ、ドイツで愛されているのと同じ理由なのである。

ちなみにBMWは、近い将来、超高性能エンジンを搭載した3シリーズツーリング=「M3ツーリング」を発売するとアナウンスしている。日本への導入は未定ながら、高性能ワゴンの魅力を余すところなく味わえるモデルとなるだろう。

<SPECIFICATIONS>
☆320d xDrive ツーリング Mスポーツ
ボディサイズ:L4715×W1825×H1475mm
車重:1750kg
駆動方式:4WD
エンジン:1995cc 直列4気筒 DOHC ディーゼル ターボ
トランスミッション:8速AT
最高出力:190馬力/4000回転
最大トルク:40.8kgf-m/1750〜2500回転
価格:666万円


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文/工藤貴宏

工藤貴宏|自動車専門誌の編集部員として活動後、フリーランスの自動車ライターとして独立。使い勝手やバイヤーズガイドを軸とする新車の紹介・解説を得意とし、『&GP』を始め、幅広いWebメディアや雑誌に寄稿している。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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