コーヒーの生産地に行ってわかった“サステナビリティ”の本当の意味

■地元の人と協業して品質向上を目指す

現在、トアルコ・ジャヤ社が扱うコーヒー豆は、自社パダマラン農園および周辺の農家から買い取ったものだ。そのため、品質にバラつきが出ないよう、ランテパオの事務所では農家から集めた豆の、パダマラン農園では自分たちで収穫し精製した豆のカップテストを行う。

ブラックでもおいしいトアルコ トラジャコーヒーは、実は数々の選別をくぐり抜けた豆だ。まず農園でコーヒーを植える時に種の選別が行われる。イサックさんによると「植えるまで到達するのは80%ぐらい」という。その後、さび病などの病害にあわなかった健康な木から赤く熟したコーヒーチェリーのみが収穫される。そしてコーヒーチェリーから豆へと精製する段階でも不良豆は落とされる。さらに精製し乾燥させた生豆でも、粒の小さいものや黒いものは弾かれ、そして最後に焙煎してカップテストを行う。ここで一定以上の味わいのものが、晴れて「トアルコ トラジャ」となって世に送り出される。

トラジャに駐在している藤井宏和さんによると、「ペランギアンなどの集買所に持ち込まれる豆であれば、95%ぐらいは合格ですよ」という。

▲トアルコ・ジャヤ社 生産担当取締役、藤井宏和さん

「トラジャ事業は、まず農家のみなさんに基準を把握してもらうことから始まりました。だからコミュニケーションが重要です。生育状況などをフィードバックしてもらい、こちらも研究成果をフィードバックする。1976年のトラジャ事業開始時からそれを繰り返し、今の品質まできたんです」

またトアルコ・ジャヤ社では、“トアルコ トラジャ”コーヒーがどう楽しまれているかを積極的に農家の人々やパダマラン農園で働く人たちに知ってもらう活動も行っている。日本でビデオ撮影を行ったり、愛飲者の声を届けているという。

「コーヒー作りってすごく大変なんです。私なら、もし価格が安くなったらやらないですよ。だからみんなが問題なく生活していけるように品質向上のお手伝いをさせていただくし、豆の選別もしっかりさせてもらう。おかげでこの10年で最低賃金が倍になりました。でもやっぱり、自分たちが作った、携わったコーヒーがどう楽しまれているかがわかると、きっとうれしいと思うんですよね。だからみんなのモチベーションを保つ意味でも、いろいろな声を届けようと思っているんです」

近年の地球温暖化をはじめとした気候変動により、標高の低い土地に出るさび病が今後標高が高い場所でも出るかもしれないと言われている。そのため、さび病に強い品種を作ることも重要な課題となっている。また1本の木からの収量が多い品種なら、同じ広さの土地でもより多くの収入が期待できる。おいしいコーヒーをこれからも提供し続けるために、トアルコ・ジャヤ社では日々研究を続けている。その成果は巡り巡って、コーヒーを生業にしている土地の人々の生活にもつながっていく。

気候変動への対応の一環として2017年より始まったのが、コーヒーチェリーを氷温熟成する技術だ。

コーヒーチェリーを収穫後、氷結点ギリギリに温度設定した状態で保存する。これによりコーヒー豆のアミノ酸などが増え、類稀なる味わいのコーヒーになるという。藤井さんによると「収穫地の標高が200mぐらい高くなったような味わい」だという。地球温暖化による標高問題解決へのアプローチのひとつだ。

 

■コーヒーという情熱!

今年、創業100周年を迎えたキーコーヒー。それは生産地、そして生産者との協業の歴史でもあるということをトラジャ事業は物語っている。

▲パダマラン農園は、サステナビリティ認証である”レインフォレスト・アライアンス”を2009年に取得している

サステナビリティなんてしゃらくさい。そう思う人もいるかもしれない。しかし、そのサステナビリティが「コーヒーの2050年問題」の解決につながり、その結果として我々がこれからもおいしいコーヒーを楽しめるのであれば、ちょっと見方が変わるのではないだろうか。

▲働く人はみな明るい!

コーヒーが好きすぎて、自ら志願してトラジャに単身赴任している藤井さんが食事の席で言った言葉がある。

「トラジャがコーヒーのナパバレーになればいいなと思ってるんですよ!」

これぞまさしく、キーコーヒーが掲げる“コーヒーという情熱”なのかもしれない。

>> トアルコ トラジャ

>> キーコーヒー

<取材・文/円道秀和(&GP) 写真/田口陽介>

 

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