■エキサイティングな交通事情
コーヒーから文化まで、さまざまなトラジャを見て回り、とうとうトラジャを去る日がきました。もちろん帰りもマカッサルまでは陸路で約10時間。
ランテパオからは一気に山を下り、海沿いの街、パレパレへ。そこからはひたすら南下します。
なかなかに交通事情がエキサイティングなインドネシア。鉄道や路線バスはジャカルタ周辺ぐらいしかないため、地方での近所の移動にはさまざまな手段が使われています。
そして日本車率高し! 見かけるクルマはほぼ日本車といってもいいぐらい。日本では見かけない現地向けの車種も走っていたりと、車窓を眺めているだけでも飽きません。
■インドネシアでも広がりを見せるスペシャルティコーヒー
マカッサルで1泊し、スラウェシ島最終日にはトアルコ・ジャヤ社が運営する直営店「トアルコ トラジャ コーヒー」に立ち寄りました。
2014年にオープンしたこちらでは、市場にはほぼ流通しないトラジャの産地別コーヒーをハンドドリップで楽しめます。
トラジャから直接送られてくる生豆を焙煎し提供しているアンテナショップです。
トアルコ・ジャヤ社代表取締役の石井さんによると「近年はタナ・トラジャが県をあげてコーヒーに力を入れている」とのこと。
「世界的なスペシャルティコーヒーブームの流れがインドネシアにも来ています。首都ジャカルタではロースタリーも増えてきました。今後インドネシア国内の需要は増えると見ています」
インドネシアにはいくつも有名なコーヒーの産地があります。トラジャもそのひとつですが、より「トアルコ トラジャ」を知ってもらうために実店舗を作ったといいます。
「ここ5年ほどで『トアルコ トラジャ』はインドネシア内で知名度が急激に上がってきているんです」
インドネシアで一般的にコーヒーといえば、練乳をたっぷり入れたトブロックです。でも、香り高く味わい深い、甘くしなくてもおいしく飲める「トアルコ トラジャ」のようなスペシャルティコーヒーの味を知ってもらい、ブラックでドリップコーヒーを楽しむ文化が広まれば、約2億6000万人という人口を抱えるインドネシアは魅力的な市場となります。
そのための施策のひとつがこの「トアルコ トラジャ コーヒー」なのです。
このお店には、バリスタが4人もいます。みな現地採用され、オープン前に9カ月間トレーニングし、スペシャルティコーヒーを熟知した人たちです。
そしてお店を後にして空港へ。マカッサルからジャカルタ経由で帰国となりました。
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気候変動などの影響で、コーヒーが飲めなくなるかもしれない「コーヒーの2050年問題」。世界中で親しまれ、世界中に愛飲者がいるコーヒーが飲めなくなるのは大きな問題です。いったい生産地はどうなっているのか。今回、トラジャツアーに参加したのは、それを知りたいと思ったからでした。
コーヒーベルトと呼ばれるコーヒーが生産できる地域のほとんどが発展途上国です。また標高が高い場所でないと質の高いコーヒーは作れないため、産地は町に近い場所ではなく山深い地になります。今回訪れたトラジャも、そういう場所でした。
そこには、日々おいしいコーヒーを作り続けるために研究を続ける人と、そしておいしいコーヒーを収穫することで生活が向上した人たちがいました。
トラジャをはじめ、世界中のコーヒー産地でいま、2050年問題の解決に取り組んでいます。そして生産者は、気候変動に負けずに質の高いコーヒーを供給するべく、工夫を重ねコーヒーを育てています。
コーヒーの木やコーヒーチェリーに触れ、生産者の人たちと接すると、いま目の前にあるコーヒーがとても貴重なものだということがわかります。そして一杯のコーヒーの向こうにはコーヒー農家の人たちがいることを肌で知ると、これまでより深く味わえるようになりました。
ちなみに石井さんは、帰国すると必ずラーメンを食べに行くそうです。やっぱりラーメンが恋しくなるんですね。
<取材・文/円道秀和 写真/田口陽介>
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