新型「レヴォーグ」はココがスゴい!②スバルの超革新で走りと安全性はさらなる高みに

■従来モデルからの進化の度合いは驚くほど大きい

来たる10月15日に正式発表が予定されている新型レヴォーグ。それを前に、今回プロトタイプに試乗する機会を得たのだが、その会場はサーキットだった。「新型レヴォーグの走行性能の高さを知ってもらいたい」という、スバルの思いが伝わってくるようだ。

早速、新型の実力を試したい…という気持ちをグッと抑え、まずコースインしたのは従来モデル。その実力をおさらいし、新型と乗り比べて進化の伸び代を体感しようではないか。ちなみに会場に用意されていた従来モデルは、走行距離わずか1000kmほどの真新しい車両。“使い古されたクルマではなく、新車に近い状態のモデル”が用意されていたのは、公正に新旧比較を行えるようにとのスバルの配慮からだ。

というわけで、まずは従来モデルでコースインする。「これはこれで相当いいじゃん!」というのが正直な感想だ。車体がしっかりしている上に、ドライバーのハンドル操作に応じて素直に曲がり、何より走らせていて安心感がある。

従来型レヴォーグ

人間が、普段の暮らしの中よりもスポーツをしている時の方が身体能力の差が表れやすいように、クルマも速度を上げて負荷がかかるほど運動性能の違いが露呈しやすい。速度が乗って旋回スピードが高くなり、公道では考えられないような負荷がクルマにもドライバーにも掛かるサーキットは、性能差が出やすい場所なのだ。

しかし従来モデルも、サーキットを走らせていて不安は一切ない。安心して高い速度域で走れ、スポーツ走行もこなせる。すなわち、新型レヴォーグはよほど出来が良くなければ、乗り換えた際に“進化を体感しづらい”ことになる。

そんな不安と期待を胸に、新型に乗り換えてコースインする。果たして違いを感じ取ることはできるのか? 結論からいえば、両車の差は驚くほど大きかった。新型は運動性能の違いをしっかり把握できるほど、性能が大幅に引き上げられていたのだ。

まず感心したのは、ハンドルを回した時の滑らかなフィーリングだ。ハンドルを切る際、(日産「スカイライン」などハンドルとタイヤが機械的につながっていないモデルを除けば)どんなクルマもステアリングシステムの構造に起因する引っ掛かり=フリクションが生じる。多くのドライバーはそれに慣れて適応し、感じにくくなっているのだが、新型レヴォーグはそのフリクション自体がものすごく小さく、ハンドルの動きがスムーズなのだ。その上、パワーステアリングの反応遅れもないため、細かな操作時にも“渋い動き”が生じず、ハンドルを握っていて心地いいのである。

新型レヴォーグのステアリングラックには、ドライバーのハンドル操作による入力と、電動パワステのアシストによる入力とを別の位置で行う“2ピニオン電動パワーステアリング”が搭載されている(一般的なクルマでは、ステアリングラックの同じ位置で力が加わる)が、これが滑らかでダイレクトなフィーリングを実現しているのだろう。

■従来型と同じように走らせてもスピードが乗る

従来モデルと比べ、走行中の車体の上下動が抑えられ、“フラットライド感”が高まっているのも新型レヴォーグの美点だ。

サーキットのように路面がフラットな場所においては、上下動は少ないと思われがちだが、実はそんなことはない。速度を上げていくと、加速、減速、そして旋回時はもちろんのこと、ちょっとした路面のうねりでも車体が上下左右に動くのだ。しかし新型レヴォーグは、そうした動きが明らかに抑えられていて、姿勢が変化することが少ない。また、従来モデルとの差が歴然なだけでなく、他の市販車にと比べても明らかにフラットな姿勢に保たれている印象だ。また、ハイスピード領域でも落ち着きがあり、車体が揺さぶられないから乗り心地も良好である。

一方、曲がり始める時にスパッとハンドルを切る量が定まり、旋回中はもちろん直進中も、ハンドルを微調整する必要が少ないのには驚かされた。これは、ドライバーのハンドル操作に対し、思った通りにクルマが反応してくれてことを意味していて、ドライバーがハンドルを「1」操作した時に、クルマの反応が「0.9」と小さかったり、「1.1」と反応しすぎたりすることがなく、しっかり「1」だけ反応してくれる印象だ。言葉で表すのは簡単なことだが、多数の部品で構成され、ステアリング機構からサスペンション、そして車体剛性まで、さまざまな要素が複雑に絡み合う市販車で実現するには、多くのハードルがあったことは想像に難くない。

今回の試乗は、従来型と新型との比較がテーマだったこともあり、アクセルペダルの踏み方や旋回時の操作をそろえるなど、両車ともできるだけ同じ感覚で運ドライブするよう心掛けた。にもかかわらず、2台のスピードは明確に違っていた。スピードメーターを見ると、新型は明らかに直線での速度が乗っているのだ。

その理由は、新型は安定性が高く、同じような感覚で走ると気づかぬうちにコーナーの旋回速度が上がっているため。このことは、新型レヴォーグの運動性能の進化を何よりも証明しているといえるだろう。

■操縦性に優れる新型レヴォーグは危険回避能力も高い

今回、サーキットで新旧2台を乗り比べてみて痛感したのは、新型レヴォーグは乗りやすく、心地良く、そして速いということ。従来モデルがまだ一線級の性能を備えていることにも驚いたが、乗り換えた新型レヴォーグの仕上がりはもはや次元が違っていた。

こうした運動性能の向上には強固な車体が不可欠となるが、新型レヴォーグはクルマの背骨に相当するプラットフォームから刷新。さらに組み立て時に、まず車体骨格を組み上げてから外板パネルを接合し、ひときわ強固な構造とする“フルインナーフレーム構造”を採用するなど、ガッチリとした車体を生み出すために製造工程にまでメスを入れている。

ねじり剛性が従来モデル比で44%アップした車体がまず基本としてあり、その上に、サスペンションの新しい構造やチューニング、パワーステアリングの進化などが加わったことで、飛躍的な運動性能アップにつながっているのである。

またパワートレーンは、新開発の1.8リッター水平対向4気筒ターボエンジンに、構成部品の約8割を新設計として変速幅を格段にアップさせた独自のCVT“リニアトロニック”を組み合わせている。エンジンは、低回転域からトルクが厚くて乗りやすく、CVTはダイレクト感が大幅に向上していることを今回の試乗から理解できた。刺激や官能性を感じられる仕立てではないが、動力性能に不足はなく、何よりCVTといっても、ひと昔前のそれような違和感がなく心地良く走れるのは立派だ。

そして、皆さんに知っておいてもらいたいのは、そうした走りの性能がもたらすのは、何もドライバビリティの向上だけではないということ。操縦性に優れるクルマは、危険回避能力も高いのである。例えば、高速道路を走行中、突然、道路に障害物が現れたとしよう。運動能力の高いクルマは避けられる可能性が高くなるのはいうまでもない。

そして、その先にあるのが先進安全機能だ。なんといっても、新型レヴォーグの大きなトピックのひとつは、先進安全システムの性能が一気にジャンプアップしたこと。最大の注目である“アイサイトX”のハンズオフ=手放し運転機能の正確さは、以前、レポートした通り。

ほかにも、ブレーキ制御だけでの衝突回避が困難な場合、操舵制御まで支援(約80km/以下)したり、広い道路に出る際など、交差点で左右から近づくクルマを検知してブレーキを制御したり、右折時の対向車や右左折時に横断する歩行者に対応するといった交差点での衝突回避状況が拡大したりと、先進安全機能が格段に充実している。レヴォーグというモデルは、実質的にスバルの(日本向けの)フラッグシップだけに、これまで温めていた先進技術が一気に投入された感がある。

こうした先進安全系のメカニズムを子細に見ると、アイサイトの基礎ともいうべきステレオカメラが刷新されたほか、前側方レーダーの採用、電動ブレーキブースターの導入など、各種デバイスが大幅に強化されていることが分かる。今回の試乗会場では、衝突被害軽減ブレーキの性能についてデモンストレーションが披露されたが、新型レヴォーグは60km/hを超える速度からでも前方の障害物に反応し、衝突被害軽減ブレーキできちんと停止できていた。

どんどん加速し「この速さから止まれるの?」と思うような勢いから、ドライバーが操作しなくてもしっかり停止できる能力はさすがだ。と同時に、その直前までブレーキに介入しないという制御の緻密さにも驚かされた。カメラの性能向上に加え、応答性の高さが特徴の電動ブレーキブースターを組み込んだことで、ギリギリまで作動を“待てる”ようになり、より正確な判断と制御が行えるようになったのだ。

Part.1でお伝えしたように、新型レヴォーグはユーティリティを始めとするステーションワゴンとしての完成度が高いモデルだが、実質的なスバルのフラッグシップモデルだけあって、その見どころは磨き上げられた運動性能や機能が充実した先進安全性能にまで及んでいる。今回、新型レヴォーグに触れてみて、改めてスバルの底力を見せつけられた気がする。

<SPECIFICATIONS>
☆STIスポーツ EX(プロトタイプ)
ボディサイズ:L4755×W1795×H1500mm
車重:1580kg
駆動方式:4WD
エンジン:1795cc 水平対向4気筒 DOHC ターボ
トランスミッション:CVT
最高出力:177馬力/5200〜5600回転
最大トルク:30.6kgf-m/1600〜3600回転
(スペックはプロトタイプによる開発目標値)

<SPECIFICATIONS>
☆GT-H EX(プロトタイプ)
ボディサイズ:L4755×W1795×H1500mm
車重:1570kg
駆動方式:4WD
エンジン:1795cc 水平対向4気筒 DOHC ターボ
トランスミッション:CVT
最高出力:177馬力/5200〜5600回転
最大トルク:30.6kgf-m/1600〜3600回転
(スペックはプロトタイプによる開発目標値)


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文/工藤貴宏

工藤貴宏|自動車専門誌の編集部員として活動後、フリーランスの自動車ライターとして独立。使い勝手やバイヤーズガイドを軸とする新車の紹介・解説を得意とし、『&GP』を始め、幅広いWebメディアや雑誌に寄稿している。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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