■小さくてもしっかり重低音!
最初にMarshall「EMBERTON」の説明に突っ込んでおくべきしょう。“わずか”700gって、Bluetoothスピーカーとしてミドル級の重量です。カバンに入れて持ち歩くには重いなと思います。これまでMarshallから登場した「WOBURN II」(8.55kg)や「ACTON BTⅡ」(2.85kg)といったギターアンプ風デザインのスピーカー群と比べると、「EMBERTON」は軽量でコンパクトですが、ちょっと基準が違いますね。
同梱の説明書を見ても、使い方はわずか1ページの図解で全て済むくらいに簡単。天面にゴールドに輝くコントロールノブが電源や再生/停止、スキップ、音量操作までを兼ねていて、電源を入れてスマホからBluetoothでペアリングするだけ。電源ON/OFFの動作音はゴギゲンなエレキギターで気分を盛り上げてくれます。
iPhoneとペアリングして、Marshallだからと英国の音楽を聞いてみようとエド・シーラン『Shape of You』を流してみたら、いきなり驚きました。イントロのリズムの刻みから楽器の生っぽさ、弦を弾く姿が浮かぶようにシャープで立体的。重厚なサウンドフィールドのなかでクッキリと立ち上がる歌声も本格的。ダイニングテーブルの上にポンと置いただけで音楽の場を作り上げる表現力で、Marshallによるマルチディレクショナル(全方位)サウンドが上手く機能しています。
普段からサウンドを聴くリファレンスにしている宇多田ヒカルの『あなた』を聴いても、シャープに立つ情勢ボーカルの歌声に、少しUKっぽさのある重めの低音で再現してくれる。一方、ビリー・アイリッシュの『bad guy』は持ち前のヘヴィーな重低音で、ベースもバスドラムも完全に分離して聴かせる凄みあるサウンド。マンションで使っていると、重低音が響きすぎて近所からクレームが入るかもしれません。
機能としてはスマホを繋いで音楽を流すだけのBluetoothスピーカー(よくあるハンズフリー通話用マイクすら内蔵していないストイックさ!)だから、あとは置き場所を変えて音楽を流して遊んでみるくらい。
”映え”を意識しつつMarshall「EMBERTON」の置き場所を動かしてみると、一番マッチしたのが高さ1.5mほどの位置にある飾り棚。高めの設置位置でレンガの壁を背にすると音の厚みが増して、30畳ほどある空間もリッチな音楽で満たしてくれます。これ、小型でも革命的なサウンドかも。
またIPX7の防水対応しているので、お風呂に持ち込んで濡れても、それどころか水中に落下させても問題ナシ(規格上は30分まで)。実際に浴室で音楽を聴いてみると、小さめの音量でも壁からの反響音でエコーが付いて雰囲気が出てサイコーです。でも気持ちよく聴けるからって音量の上げ過ぎにはくれぐれもご注意を。
機能的にはシンプルなBluetoothスピーカーと呼ぶしかないMarshall「EMBERTON」ですが、音がいい! カッコイイ! それだけで最強ですよ。実勢価格2万2990円で英国の雰囲気が出せるって時点で、買いかもしれません。
<取材・文/折原一也>
折原一也|1979年生まれ。PC系出版社の編集職を経て、オーディオ・ビジュアルライター/AV評論家として専門誌、Web、雑誌などで取材・執筆。国内、海外イベント取材によるトレンド解説はもちろん、実機取材による高画質・高音質の評価も行う。2009年によりオーディオビジュアルアワード「VGP」審査員/ライフスタイル分科会副座長
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