私をはじめ“スバリスト”と呼ばれるスバル車の熱心なファンたちは、スバルの開発陣との交流や、スバルファン同士によるコミュニケーションを長年、望んできました。併せて、スバル車の開発施設を見学したり、スバルのクルマづくりやその技術を学んだりしたいという熱望もありました。
実は富士重工業自身も、そんなスバリストたちの熱い気持ちをかねてから把握していたようです。そして今回、スバルの重要なコア技術のひとつである水平対向エンジンが発売から50周年を迎えたことをきっかけに、ファンとの大規模な交流会の開催がついに実現したのです。
会場となった栃木県佐野市の「スバル研究実験センター(SKC)」には、競争率約3.5倍という抽選で選ばれた、約1000台のスバル車とそのユーザー関係者約2500人が集結。往年の名車の展示や同乗試乗、技術セミナーなど、ファン待望の多彩なプログラムが開催されたのです。
SKCは、普段は新車の開発テストなどが行われている秘匿エリア。一般の方には非公開であるのはもちろん、富士重工業の社員でさえも、開発に携わる部署の人以外は滅多に足を踏み入れられない、特別な場所です。
SKCが作られたのは1989年。スバルが主力車種を「レオーネ」から「レガシィ」にバトンタッチし、雪上や未舗装路のみならず、アスファルト上での高速走行性能も飛躍的に高め“スバルの走りが激変した”と評価され始めた頃から使われてきた歴史ある施設です。
SKCは市販車のみならず、ニュルブルクリンク24時間耐久レースの参戦マシンなど、モータースポーツ向けのマシン開発やテストにも使われています。1990~2000年代に参戦していたWRC(世界ラリー選手権)での黄金期には、チャンピオンドライバーのペター・ソルベルグをはじめとする一流のラリードライバーたちが訪問。彼らが市販車の開発に携わったといった逸話も多く残る、スバルファンにとってはまさに“未踏の聖地”として知られきた場所です。
SKCには、200km/h以上の高速走行も試せる、1周約4.3kmのオーバルコースをはじめ、 ダートコースや旋回試験場、低μ路や登板路など、市販車の開発テストに必要なあらゆる実験施設を完備されています。また、過去に発売した歴代モデルの多くがSKCに動態保存されるなど、往年の名車の保管庫的な役割も担っている場所。中には、日の目を見ることのなかった試作車も保管されているのですが、今回のイベントでは、その一部も公開されました。
スバルファンなら、ただ足を踏み入れるだけでも満足できる聖地。しかも今回のイベントでは、メーカーの開発エンジニアやラリードライバーたちと対話できる上に、これまでスバルが世に送り出してきた名車たちを目の当たりにできるとあって、参加応募者が殺到したのです。