1.エクステリア
「よいデザインは恒久的で、製品を分かりやすくする」とはドイツのインダストリアルデザイナー、ディーター・ラムスの言葉です。徹底した機能主義を貫くラムスのミニマルデザインとアプローチは異なりますが、S660を少し離れた場所から眺めたときに先ほどの言葉が頭に浮かびました。
エンジンルーム冷却のために設けられたインレット、駆動力を余すところなく路面に伝えるために採用された前後異径タイヤ……。MRレイアウトならではの普遍的なスタイルはそのままS660の走りを予感させるアイコンになっています。見ているだけでワクワクしてきませんか?
2.パーツのデザイン
S660をデザインする上でデザイナーがもっともこだわったのがサイドミラーなのだそうです。高さを抑えた形状、細いステーがセンターを貫くデザイン。実はこれ、2011年の東京モーターショーで展示されたS600の元となるコンセプトモデル“EV-STER”のミラーデザインをそのまま採用しているのです。
エンジンフード中央にあるスリットからさりげなく“HONDA”の文字が見えたり、ブラックアウトしたリアガーニッシュの中にバックランプを配置し後退時以外は存在を目立たなくするなど、オーナーをにやっとさせる“隠れキャラ”的なデザインも取り入れられています。
3.エンジンルーム
ミッドシップエンジン、後輪駆動のS660ですから、エンジンルームはドライバーズシート後方に配置されています。エンジンルームのボンネットはリアを支点に開く構造です。同じMR方式の軽自動車ということで比較されることも多いホンダ「ビート」はボンネットの支点がキャビン側にありエンジンがほとんど見えない構造でした。エンジンがしっかり見えるS660はメンテナンスがやりやすそうですね。
ちなみにビートのトランクはエンジンルーム後方にありましたが、S660はフロントに設置されています。ただし積載性はお世辞にも高いと言えないのはどちらも共通しています。
4.インテリア~居住空間
筆者は身長が188cmあるため、「&GP」編集部は窮屈そうにしている写真も撮っておこうと考えていたようです。しかし実際は窮屈どころか余裕がたっぷりあり、編集部の目論見は空振りに終わりました(笑)。
ヒップポイントをS2000より40mmも低い335mmに設定したことで、低い目線で体感速度を上げるだけでなく頭上のタイト感を和らげる効果も得たようです。フルオープンになる幌だとフレームは横方向に設置されますが、タルガタイプのS660は縦方向にフレームが通る構造に。そのため頭上にフレームがこないよう設計することができたそうです。
5.室内装備
S660ならではの装備のひとつが“3つ目”のパワーウインドウでしょう。タルガトップタイプのためフルオープンならではの開放感を味わうことはできませんが、その代りキャビン後方、運転席と助手席の間に小さな窓が設置されているのです。この窓を開けることでフルオープンに近い感覚を味わえるだけでなく、エンジンサウンドも楽しむことができるのです。
オプション設定されるセンターディスプレイにはナビ機能がありません。しかしスマートフォンにホンダの純正アプリ「internavi POCKET」をダウンロードすればナビ画面を表示できます。
エアコンには真冬のオープンドライブ時に腰回りに暖かい風を送るミッドモードが備わります。オーディオもCDを搭載しないなど、スマートフォン使用に的を絞ったのが潔いですね。
6.ルーフ
S600のルーフはフルオープンではなくタルガトップタイプ。そしてもちろん手動で脱着します。これらはひとえに軽量化のため。ライトウエイトスポーツならではの走りを存分に楽しめることを第一に考えているため、余計な装備はつけなかったそうです。
ただこの割り切りには別の効果が出てくるでしょう。純正アクセサリーで赤いソフトトップが発売されていますが、ホンダ以外のショップからもさまざまなルーフトップが発売されてくるはず。自分の好きな色を選べる環境はそう遠くない未来に整うかもしれませんよ。
最後に.走り~まとめ
ライトウエイトスポーツといえばエンジンを目いっぱい回してワインディングを走ると気持ちいいですよね。しかし今回S660に試乗して感じたのは60km/h以下の速度域でもエンジンをしっかり回して走りを楽しめることでした。これって一般道でも実力を持て余すのではなく、存分にクルマのポテンシャルを発揮できるということです。
わざわざどこかに行かなくても、日常の中で非日常的な高揚感を味わえる。たとえば通勤用でS660を所有できたら、毎日の退屈な道のりがワクワクする時間に変わるはずです。こんなクルマ、そうはありませんよ。
冒頭でもお伝えしたように今からだと来年早々~3月末ごろの納車になってしまいます。待てない人は中古車市場に出てきたものを狙うしかありませんが、中古車情報サイトで確認したところ1台だけあった中古車は“価格応談”。しばらくはプレミアム相場が続くでしょう。となると、素直に6月のオーダー受付を狙うのが賢い選択。欲しい人はこのタイミングを逃さないでくださいね!
(文/高橋 満<BRIDGE MAN>)
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