Appleは3月末、9.7インチモデルのiPad Proを発売しました。12.9インチのiPad Proと同じくA9Xチップを搭載し、「Apple Pencil」や 「Smart Keyboard」が使えます。その上で、サイズはiPad Air 2と同じなので、外出時に持ち運びやすく、汎用性が高いです。今回は、筆者が本機を3週間使ってみたうえで、魅力的だと感じた5つのポイントを紹介していきます。
1.専用ペンの書き心地がもはや「鉛筆」
iPad Proは「Apple Pencil」に対応しています。筆圧や傾きを検知して太さや濃さを変えられるのが特徴で、指でタッチ操作をするよりも繊細な操作が可能。イラストを書いたり、メモを書き込む際に活躍します。
まず、感動したのはペアリングと充電の手軽さです。Apple Pencilには、Lightning端子が付いているので、使用するiPad Proに差し込みましょう。一瞬で充電が完了し、ペアリングも終了します。「Bluetoothを開いて接続して……」という面倒な設定は必要ありません。
書き心地も素晴らしいです。ペン先を動かした際のディスプレイ反応遅延がほとんどないので、スタイラスペンとは思えないほどスラスラ書けます。感触的には「ガラスの机の上に薄い紙を一枚敷いて鉛筆で書いている」ようなイメージ。メモアプリや、イラスト向けのアプリなどを活用する際に、本領を発揮するでしょう。
ただし、デッサンのような何度も筆を往復させるような描き方をする場合には、ディスプレイ表面のガラスに触れるたびにカツカツと音が鳴ります。どうしても気になるという人は、自分の好みにあった摩擦と弾力を持つ保護シートを貼り付けると良いかもしれません。
ちなみに、Apple PencilはAdobeのモバイルアプリと相性が良いです。下の動画は「Adobe Illustrator Draw」でApple Pencilを試した映像。
もちろん、プロのイラストレーターやデザイナーが専門的な使い方をする場合には、環境を整えたデスクトップPCに比べて満足できない部分も出てくるでしょう。しかし、持ち運びができるタブレットとしては、完成度は非常に高いです。9.7インチのサイズ感は、電車や飛行機での移動中など、下地を準備する用途に最適でしょう。
Apple Pencilは別売で1万1800円(税別)ですが、せっかくiPad Proを使用するならば、ちょっと奮発してセット購入したいですね。
2.純正カバーは文字入力だけじゃない
9.7インチiPad Pro用のカバー「Smart Keyboard」が別売されています。その名の通り単なる保護カバーではなく、キーボードが付いているので、ちょっとしたテキスト入力に利用できます。
”百聞は一見にしかず”ということで、早速折りたたみの様子を御覧ください。
パターン①:キーボード
「Smart Keyboard」が優れているのは、ペアリングが一切必要ないこと。「Smart Connector」と呼ばれる端子を接続するだけで使えます。充電の必要もないので、「キーボードの充電を忘れて使えない!」という事態が起こりません。せっかく買ったBluetoothキーボードにホコリがかぶってしまった皆さん、要注目ですよ。
パターン②:ビューワー
映画やYouTubeを見るときはこのスタイルにしましょう。キーボードを利用するときとは、反対側に折りたたみます。
パターン③:保護カバー
持ち運ぶ際はすっきり収納。保護カバーとして使えるので、一石二鳥です。キーボードが付いているとは思えないスリム感です。
「Smart Keyboard」も別売で1万6800円(税別)となります。タブレットはスマホと比べると比較的長期間使うことになるので、予算的に少し厳しくてもなるべく購入しておきたいところ。
さて、キーボードの使い心地についてですが、このサイズのキーボードとしては打鍵感はなかなか良いです。ストロークは短いですが、カチカチという感触があります。
ただし、9.7型ゆえに幅が狭いので、通常のキーボードを使う場合と、意識的に打ち方を変えないと入力ミスが増えます。要するに、ちょっとしたメモを取るには非常に便利ですが、1日に数万字を書くような使い方には向いていません。
3.スピーカーのクオリティが凄い
タブレットでネット動画を頻繁に視聴する人は、オーディオ性能だけでiPad Proを購入する価値があります。iPad Proの四隅には、Hi-Fiスピーカーが搭載されていて、音量も大きく、迫力満点のサウンドを楽しめるからです。ディスプレイ正面で動画を見ると、まるで「ミニ映画館」のように感じるでしょう。
スピーカーはそれぞれ役割分担をする仕組みで、縦・横どちらで視聴していても、上2つから高周波が出るように自動で調整されます。なお、低音域は4つのスピーカーから出ます。
4.ディスプレイの色が自然で反射が少ない
iPad Air 2と比較すると、9.7インチiPad Proのディスプレイ性能はかなり向上しています。
- 輝度:25%明るくなった
- 反射:40%ほど抑えられた
- 色域:25%広くなった
また、自然な色合いを再現する「True Toneディスプレイ」を採用しました。この機能をONにしておくと、環境光センサーを使って周囲の光を検知し、色と明度を自動的に適応させます。つまり、実際に白い紙を見ているように、Webサイトや電子書籍の白地が自然な色に表現されるというわけです。
ディスプレイ上の色温度が自然に調整され、反射も少なく、色域が広い。つまり、デジカメ等で撮影した画像を転送して、色味やディティールを確認するのに最適です。もちろんiPad Pro自体も1200万画素の背面カメラを搭載しているので、大きさが気にならない人は直接撮影してもOKですよ。
5.Apple SIMに対応している
最後に、内蔵SIMを採用した点が9.7インチiPad Proのユニークな点です。これは、SIMのスロットとは別に、iPad内部にApple SIMが組み込まれているということ。キャリアやMVNOが提供するSIMを挿入していなくても、いざというときにプリペイドの通信サービスが購入できます。ただし、利用できるのはWi-Fi + Cellularモデルのみです。
国内では、auの通信プランがApple SIMに対応しました。「設定」アプリから、1500円で1GB分の通信料を購入できます。
値段に関してはプリペイドなので割高ですが、今後対応するプランが増えていけば、もっとお得にApple SIMが使えるようになるかもしれませんね。
価格は6万6800円~
気になるお値段は下記の通りになります。カラーはシルバー、ゴールド、スペースグレイ、ローズゴールドの4色展開です。
Wi-Fiモデル/Wi-Fi + Cellularモデル
32GB:6万6800円/8万2800円
128GB:8万4800円/10万800円
256GB:10万2800円/11万8800円
なお、iPad Proには12インチの大画面モデルもあります。使い方によっては、こちらも検討してみてください。 iPad Pro
(文/井上 晃)
スマートフォン関連の記事を中心に、スマートウォッチ、ウエアラブルデバイス、ロボットなど、多岐にわたる記事を雑誌やWebメディアへ寄稿。雑誌・ムックの編集にも携わる。モットーは「実際に触った・見た人だけが分かる情報を伝える」こと。編集プロダクション「ゴーズ」所属。
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