理由1:信じられないような坂道を登って絶景に出会える
走ったのは熊本県阿蘇の山々に広がる牧草地。通常は許可がないと入れない場所ですが、「コギダス」のツアーに申し込めば(道の駅阿蘇のwebから申し込み可能)、ガイドさんとともに広大な草原を走れます。MTBの持ち込みも可能ですが、レンタルのe-MTBが利用できるので、そちらがオススメ。手入れされた牧草地は走りやすいのですが、かなりアップダウンがあるのでアシストのないMTBで走るのはかなりキツそう。
レンタルできるのはパナソニックのe-MTBで「XM1」と「XM2」の2種類。フロントにサスペンションを装備したハードテイルと呼ばれるタイプです。自社製のe-Bike専用ドライブユニットを搭載し、パワフルでスムーズなアシストを得られるのが特徴。「XM2」のほうは、ドライブユニットに変速ギアも内蔵されており、リアの外装11段変速との組み合わせで22段の変速が可能です。
どこまでも続くような草原を、アシストを活かして自由に走り回るのは爽快の一言。普通、MTBのコースは幅が狭く、横に並んで走るのは難しいのですが、ここは複数台で横に広がって走っても全く問題ないほど広大です。こんなロケーションはなかなかありません。結構キツめのアップダウンもありますが、アシストがあるのでラクに登れます。これこそが、e-MTBが世界的に支持されている最大の理由。街中でここまでの激坂に出会うことはめったにありませんが、山の中を走るとアシストがあることのメリットを痛感させられます。
そして、アシストがあることで、通常のMTBでは登り切れないような高さまで到達できるので、日常ではあり得ないような絶景に出会えます。特に今回走ったコースは、阿蘇山を一望できるスポットや、どこまでも続く草原を見渡せる場所など絶景スポットの連続。もちろん、その手前には登り坂が待っているのですが、アシストを活かして楽々登れるので、次々に現れる絶景スポットをハシゴすることができました。
理由2:体力を温存してたくさん走れる
この日は2時間ほど、アップダウンのある草原を走り回りました。真冬にも関わらず、じっとり汗ばむくらいの運動量でしたが、脚にはまったく疲れが残っていません。アシストのおかげで激坂を登りまくっても筋肉に疲労が残らないのです。これなら、翌日も同じくらい走り回れそう。無酸素運動領域をモーターがアシストしてくれるため、効率的に有酸素運動ができるのもe-Bikeのメリットです。
日本国内の法規では、時速10kmまでは人力の2倍までのアシストが認められていますが、それ以上の速度になるとアシストの比率は減っていき、時速24kmではゼロになってしまいます。ロードバイクなどで舗装路を走ると、割とすぐに時速24kmを超えてしまうのですが、未舗装で坂の多い山の中を走るe-MTBの場合、アシスト領域を超えることはほとんどありません。つまり、アシストの恩恵を常に受けながら走れるということ。e-MTBはe-Bikeのメリットをフルに感じられるカテゴリーなのです。
これだけ走り回っても、バッテリーは1目盛り分も減っていないくらい。最近のe-Bikeは大容量のバッテリーを搭載しているので、エコモードで100km以上の距離をアシスト走行できます。山の中では、もっとアシストが強いモードで乗っていましたが、それでもバッテリーの減りはわずかだったので、1日中走り回ったとしてもバッテリーがなくなることはありません。
理由3:アシストがあるので自転車の重さが気にならない
e-Bikeはモーターやバッテリーを搭載しているため、スポーツタイプの自転車としては重くなります。軽さを身上とするロードバイクの場合、アシストがあるメリットよりも、重量増のデメリットを嫌う人もいますが、MTBはそもそも、そこそこ重さがある乗り物。前述のように坂を楽に登れるメリットや、アシストの恩恵を得やすい速度域で走る乗り物ということもあって、重量増がそれほど気になりません。「XM2」の重量は24kgで、これは一昔前のダウンヒル用MTBとあまり変わらない重さです。重量よりもアシストがあることのメリットの方が大きく感じられます。
今回は、パナソニックの最新モデルである「XM-D2V」も試乗することができましたが、こちらは前後にサスペンションを装備したフルサスと呼ばれるタイプ。その分、重量は26.5kgとさらに重いのですが、実際にオフロードを走ってみると、こちらのほうが圧倒的に楽に感じます。モーターは基本的に「XM2」と同じものなのですが、アシストも強くなっているように思えるほど。これはリアのサスペンションが駆動輪を地面に押し付ける働きをすることで、駆動力を伝える力がアップするためです。
もちろん、路面からのショックを吸収する機能も向上しているので、下りの安定感も大幅に向上。荒れたオフロードの坂も安心して下って行けます。そして、下った坂を反対に登って行くこともできるのがe-MTBのいいところ。普通のMTBでは登ろうとも思わないような激坂も登れてしまうので、新しい楽しみ方が広がります。
理由4:街乗りも快適に楽しめる
MTBはオフロード走行に対応した太いブロックタイヤを装備しているので、舗装路を走るとペダルが重く感じてしまうというデメリットがあります。しかし、e-MTBの場合、アシストがあるのでその重さをほとんど感じません。車体も重いので、アシストが切れる時速24km以上になると、当然重さを感じますが、それ以下の速度であれば大丈夫。クルマでいうところのSUVのような感覚で乗り回せます。
ちなみに、今回体験した草原ライドの窓口となっている道の駅阿蘇では、e-MTBのレンタルが可能。周辺のグルメを楽しんだり、阿蘇の山を巡ることもできます。この辺りは赤牛と呼ばれる牛肉や馬刺しが名物なので、ぜひ味わいたいところ。
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自然の中を自由に駆け回れて、日常の足としても活用できるe-MTB。行動の幅を一気に広げてくれる乗り物なのは間違いありません。個人的にオススメしたいのは、1990年代のMTBブームを知る世代の人たち。MTBの魅力は知っているが、少し体力が落ちてきたのが気になる…という向きには、アシストを活かして美味しいところだけを味わえるe-MTBで、あの頃のワクワク感を思い出してもらいたいところです。
>> パナソニック「XM2」
<取材・文/増谷茂樹>
増谷茂樹|編集プロダクションやモノ系雑誌の編集部などを経て、フリーランスのライターに。クルマ、バイク、自転車など、タイヤの付いている乗り物が好物。専門的な情報をできるだけ分かりやすく書くことを信条に、さまざまな雑誌やWebメディアに寄稿している。
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