BMWの3シリーズが、このクラスの、いや、クラスを超えて走りのベンチマーク(基準車)に位置づけられていることは、自動車業界やクルマ好きの間では常識。真っ当な3ボックスセダンを手掛ける自動車メーカーなら、必ず何台かの3シリーズを購入しているはずです。
以前、ISの試乗会で話をうかがったエンジニアの方々も「3シリーズを研究した」とハッキリいっていました(余談ですが、日本の自動車メーカーの中で最も赤裸々に(!?)ハナシをしてくれるのは、トヨタ/レクサスの開発者陣。裏を返せば、それだけ“自信がある”ということなのでしょう)。
ISのサイズを見てみると、ホイールベースは3シリーズより10mm短い2800mm。その上に載るボディは、全長4665(3シリーズ比で+20)×全幅1810(同+10)×全高1430(同-10)mmと、非常に近い数値が並びます。
ちょっと意地の悪い表現をすると、ISは“3シリーズのスポーティなフォルムをより強調したスタイルを採っている”といえるかもしれません。
でも、IS200tがスゴいのは、そうした表面的な類似ゆえ、ではありません。
先のレクサス開発陣から聞いた内容に戻ると、BMWを研究して最も驚いたのが、ボディ剛性、より正確にいうと、ボディ剛性の出し方、だったそうです。
これまた、高張力・超高張力鋼板を何%使用して…という表面的な分析ではなく、適所適材はもとより、その使い方にビックリしたのだとか。例えば「あたかも十二単(じゅうにひとえ)のように、何枚かを重ねるようにして剛性を出している」んだそうです。ボディを構成する材料の、結合部のことですね。
BMWやレクサスといったプレミアムブランドでも、もちろん、コストや重量、それに生産性との兼ね合いがありますから、やみくもにガッシリしたボディを追求するわけにはいきません。いかに効率よく、的確に、かつ作りやすく剛性をアップさせるか。そこに経験が活かされるわけです。
レーシングカーを作る卓越したチームが、マシンのどこにスポット溶接を行えばいいか、ロールケージをどのように組んだら、安全性プラスαの効果を得られるか、ということを熟知しているようなものでしょう。
レクサスのエンジニア氏によると「BMWの場合、(開発陣だけでなく)生産現場もボディ剛性がいかに大事かを理解している」そうです。
そこでレクサスの開発陣も、3世代目のIS(=現行モデル)の開発と平行し、生産を担当する工場に趣き、現場の責任者と折衝を重ねたのだとか。ボディの剛性アップは、まさに一朝一夕にはならず、というわけです。
つまり、ワタクシが感心させられたIS200tのドライブフィールは、ボディの剛性アップという、まさにクルマの基本の“キ”から積み上げることで得られたものなのです。