かつての「ウーノ」や「ティーポ」(懐かしい!)に代わって、すっかりフィアットの顔となった「500」=チンクエチェントシリーズ。
BMW傘下にあるMINIと同様、3ドアハッチに加え、5ドアハッチ(=「500L」)やクロスオーバーモデル(=「500X」)も追加され、ひとつの生態系を形成しつつあります。
レトロデザイン復活の嚆矢となった、フォルクスワーゲン「ニュービートル」は、「ザ・ビートル」と改名して2世代目になった現在も、依然として傍流なのとは対照的です。
日本市場で展開されるチンクエチェントは、ベーシックな「500」(199万8000〜)、3ペダル式の5MTを備えた、ちょっとマニアックな「500S」(231万1200円)、そして、ルーフをソフトトップとしたオープンモデル「500C」(252万7200円〜)に大別されます。
この日ドライブしたのは、トップグレードである500C ツインエア ラウンジ(279万7200円)。華やかな“パソドブレ レッド”のボディペイントに、アイボリーのトップという瀟洒な組み合わせ。ちょっとクラシカルな意匠のアロイホイールが目を引きます。
それにしても、デビューから10年が経とうというのに、このチンクエチェント、ちっとも古くなりませんね。まあ、元から古かったともいえますが…。1950年代のヌオーバ・チンクエチェントのデザインを、見事に甦らせたデザインです。
とはいえ、商品性を高めるため、2016年モデルではマイナーチェンジが施されました。
外観の変更はごく小規模。ノーズのエアインテークにクロームモールが追加され、ポジショニングライトがC字状に光るようになりました。フロントバンパーは下部が少し広がり、よりスポーティなイメージに。面白いのがリアのコンビネーションランプで、中央に“□”のカタチのパネルが付き、そこにボディカラーを覗かせる新デザインが採用されました。小ワザが利いてますね。
潜在的な500ユーザーや、販売店のスタッフにとって、より実質的でうれしい変更は、インテリアでしょう。ニューチンクエチェント、ようやく(!?)インダッシュ式のディスプレイ(7インチ)が付くようになりました! これで「500のデザインを損なわず、どうやってナビを取り付けよう…?」と、頭を悩まさずに済みそうです。
さらに、ステアリングホイールに設けられたボタンを使い、オーディオの音量を変えられるようになった点も、クルマ業界全体では小さな一歩ですが、チンクユーザーにとっては大きな飛躍です。
シートの生地は、小洒落たグレーのチェック模様。コレ、ドイツ車あたりがやると、なんだか野暮ったく感じられることもあるんですが(それがまた、たまらないんですけどね)、500の場合はまさに、オシャレなイタリア車の面目躍如といった感じ。シートのサイズは、前後長はほどほどですが、幅がやや細めでこじんまりとしています。
頭上のソフトトップは、天井に備わるスイッチひとつで開閉可能。サイドのルーフラインを残しつつ、後方へスライドしていきます。ワンタッチで、Cピラーの上あたりまでオープン。この状態だと、特大のサンルーフといったところ。風の巻き込みは、あまり気にしなくて済むレベルです。
さらにもうひと押しすると、ハッチゲートの上までもう1段階、ソフトトップが下がります。この状態でハッチゲートを開けようとオープナーに触れると、畳まれたソフトトップが自動でCピラー上まで戻ります。うーん、細やかな心遣い。
試乗車に装着されていた、後ろからの風を遮るための“ウインドストップ”は、アクセサリーとして用意されます。