日本への帰国便は台北市内の松山機場からで、ここヘは台北駅から地下鉄で20~30分ほどで移動できると知り、ホテルをチェックアウト後にまずは地下鉄で台北駅へ。
初めての台湾、台北で、台北駅の構造もよくわからなかったものの、駅の案内地図を参考に、ひとまず台北駅の構内広場(1階)に上がってみました。
ぐるりと回ってみると、広場の写真奥の電光掲示板パネルに向かって左上方向の場所にもお弁当屋さんがあり、何人か並んでいます。
看板をよく見ると、この店こそが、台湾鉄道の駅弁の第一号店じゃないですか!
「臺鐵」(台鉄)の読みは「タイティエ」、「便當」(弁当)は「ビェンダン」。発音はわからなくても、漢字ですから、日本人なら雰囲気でなんとなくわかるでしょうか。
メニューの幟を見ると、駅弁は60元からあります。
1元は日本円で約4円ですから、60元なら約240円くらいでしょうか。安い!
60元を握りしめながら行列に並び、お目当ての駅弁を指差してお金を渡すと、店員のお兄さんが箸を添えて渡してくれます。ビニール袋には入れてくれません。どうやら袋は有料のようです。マイエコバッグに入れ、地下鉄で松山機場に向かうことにしましょう。
松山機場までの運賃は25元なので、料金の数字をタッチし、お金を入れると、プラスティックの丸いコインが出てきます。これが地下鉄の切符になります。改札のタッチパネルにコインをタッチして入場し、改札を出る時は専用の穴に入れればOK。
空港の国際線カウンターでチェックインを済ませたら、いよいよ駅弁にご対面! ロビーのソファーに腰を落ち着けたら、駅弁の外観を愛で、撮影してからいただきます。
大きな排骨(パイグー)がドーンと1枚乗っています。パイグーは骨付きの豚肉に衣をまぶして揚げたもの。左上には味のよくしみた煮卵がありますが、煮卵は滷蛋(ルーダン)といいます。
このパイグーと煮卵が台湾の伝統的な食のひとつであることから、駅弁にも入れるようにしたとか。パイグーの左下に隠れるように、日本の油揚げを何枚も重ねたような分厚い正方形のお揚げが入っています。パイグーもお揚げも卵も同じ煮汁で煮たと思われますが、大抵の日本人が好きな味付けの甘辛い味がよくしみ込んでいます。
パイグーは厚みがあって重量感があり、1枚でも満足の食べ応えで、お揚げは煮汁をたっぷり吸っていています。これはごはんが進みます。しかも、このごはん(白米)がとてもおいしく、今回の滞在中に食べた米の中で、一番といっていいほどのおいしさでした。
右端に見られるのは、煮たキャベツの細切れと、ザーサイを小さな賽の目にカットしたもの。ザーサイは、味も歯ごたえもいいアクセントになっています。
私が選んだ駅弁は紙の容器に入っていましたが、透明の丸型のプラスティックパックに入っている駅弁の方が多く販売されていました。台湾では、中身が見えていないと安心して買えない、という傾向があるようなのです。これも文化の違いですね。
紙の容器に、使用している紙素材の安全性についての印刷がされていたのは、さすが今の時代ならではです。
私が選んだこの駅弁が60元とは恐れ入りました。これだけ安いと気軽に買えますね。普通にランチ用に買っていると思われる会社員風の人もいました。また、出来立ての温かい状態で売られているのも、台湾の駅弁の特徴です。パイグーが乗った駅弁が多いので、たしかにこれは温かい方がおいしいと思います。
今回、台湾の鉄道に乗るチャンスはありませんでしたが、こんな素晴らしい駅弁があると知った以上、次回こそは温かい駅弁をお供に、鉄道で各地を巡る旅をしてみたいものです。
(取材・文/綿引まゆみ)
ワイン専門誌や料理系雑誌での記事執筆をはじめ、日本ソムリエ協会webサイトのコラムなどを執筆。ワインセミナー、トークショー、海外のワインコンクール審査員など、幅広い活動を行なっている。チーズプロフェッショナル、ビアソムリエ、コーヒー&ティーアドバイザーの資格も所有。スイーツ好き。
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