■耳から近いから聞き取りやすい
ネックスピーカーというと数年前に続々登場したスマホ接続可能なBluetooth方式が多いなか、オーディオテクニカ「AT-NSP700TV」はワイヤレス送信機も付属する特化型。使い始める前から「それってBluetooth接続で良いのでは?」と思ってしまいがちですが、残念ながら薄型テレビではBlueooth送信機能を搭載するメーカーは少ないんですよね。誰もが使う機能ではないのでコストの問題、遅延という技術的な課題もあって…なかなか広がりません。
ちなみに、ワイヤレス方式は無線2.4GHz帯を利用するFHSS変調方式で、いわゆる汎用のBluetoothとは別モノだったりします。
スピーカー部は、首元に掛けるネックスピーカー型。首元の左右に上向きにスピーカーがついているので、耳を塞がず顔に近い位置から音を聴ける仕組み。ちなみにバッテリー内蔵で最大13時間再生。本体重量は約103gですが…首から肩にかけて乗る形なので、やや重さを感じます。
送信部は、電源のほかにテレビ接続用に光デジタル入力端子、ヘッドホン端子に接続するアナログ入力端子を用意。テレビ音声は古いテレビにも搭載されている、一般的な音声出力端子を利用してワイヤレス化します。
送信機側には音の左右バランス調整と、人の声をクリアにする“はっきり”の機能を搭載。音量調整はネックバンドスピーカー側にあります。
今回接続したテレビは寝室にある東芝映像ソリューションのレグザ24V34という24V型の小型テレビ。背面にある光デジタル端子から接続しました。
使い始める際には、ネックスピーカーの左手前にある電源ボリュームノブから操作。出荷時からワイヤレス接続設定済みなので、「電源が入りました」と日本語でアナウンスが流れてすぐにTV音声が流るなど、分かりやすい!
実際にテレビ音声を聞いてみると、耳から近いので小音量でも聴ける。CMなどでBGMが流れると音に包み込まれる感覚も出ます。そして人の声は、聞き取りやすさだけでなく、声のニュアンスも伝わり予想以上にいい音。オーディオ的な高音質ではないけど、聞きやすさとナチュラルさのバランスが絶妙。“はっきり”を有効にすると声がより立ちますが、音バランスとしては高域が強すぎですね。
動画配信で映画を見ても、BGMの音の広がりと臨場感アップ。声もクッキリ聞こえるのですが、サラウンド的な音の良さを期待するとちょっとパワー不足。
またネックスピーカーはTVの音声を聞きつつ周囲の音も聞ける“ながら聞き”デバイスとして考えることもできるのですが…肩の位置にスピーカーがあるので遮音はゼロ。ただそれでもTVの音量は抑えられ、隣の部屋への音漏れを減らす効果はあります。特にヘッドホン・イヤホンのお悩みである、インターホンや家族の呼びかけに対応できる用途は目当てと考えると、意外とハマるかも。
ワイヤレス性能は10m。木の壁やドアなら貫通するので、TV音声を聞きつつ家事を片付ける、なんて使い方も。IPX2の防水で水飛沫くらいなら問題ありません。
テレビの音を首元でワイヤレスで流すことに特化したオーディオテクニカ「AT-NSP700TV」。利用シーンを限定しているからこそ、操作性やサウンドの聞き取りやすさの完成度も上々。シニア世代向けというイメージもありますが、おうちエンタメ用途でも活用できますよ!
<取材・文/折原一也>
折原一也|1979年生まれ。PC系出版社の編集職を経て、オーディオ・ビジュアルライター/AV評論家として専門誌、Web、雑誌などで取材・執筆。国内、海外イベント取材によるトレンド解説はもちろん、実機取材による高画質・高音質の評価も行う。2009年によりオーディオビジュアルアワード「VGP」審査員/ライフスタイル分科会副座長
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