「The C-Class」と銘打たれたメルセデス・ベンツのカタログを開くと、最初の見開きに並ぶCクラス一族。セダン1車型の中に「よくぞまあ」と感心するほどバリエーションに富んだパワーソースが用意されています。
ガソリンの直4ターボ、ディーゼルターボ、センターに置かれるのは、青字で強調されたプラグインハイブリッドモデル。そして、AMG仕様のガソリンV6ターボに、メルセデスAMGが搭載するV8ターボ…。
707万円のC350eは、AMG系を除くノーマルCクラスの最上級グレードにして、トップパフォーマンスのモデルなんですね。
1.6リッター(156馬力)、2リッター(184馬力)、同(211馬力)と3種類ラインナップされる4気筒ガソリンエンジンのうち、C350eはハイチューン版の2リッターターボに、82馬力を発生する電気モーターを組み合わせます。双方を合わせたシステム出力は、最高出力279馬力、最大トルク61.2kg-m。
最大トルクに関しては「C450 AMG 4マチック」に搭載される3リッターV6ターボ(53.0kg-m)をしのぎ、メルセデスAMG「C63」が積む4リッターV8ターボ(66.3kg-m)に迫る数値です。C350eの強心臓ぶりがうかがえます。
もちろん、エンジンを休止させ、電気モーターだけで走行することも可能。約130km/hまでモーターだけでカバーできますから、自宅のガレージから市街地を抜け、高速に駆け上がって巡航に移るまで、ずーっとEV(電気自動車)として走れるわけです。
ちなみに、電気モーターの最大トルクは34.7kg-mですから、これだけでも3リッターV6エンジンに匹敵…といいますか、モーターの場合、スロットルペダルを踏んだ直後に最大トルクが立ち上がりますから、その出足の良さは、3リッターエンジンを上まわります。車名の“350”は伊達ではないのです。
面白いのは“EVモード(Eモード)”を選んで意識的にモーターだけで走っている場合、スロットルペダルを一定量踏むと、足裏に伝わる抵抗がグッと増えるポイントが生じること。これは“プレッシャ・ポイント”という機能で、そこからさらに踏み込むと、C350eはハイブリッドモードに移行し、モーター+エンジンの、より強力な加速が始まります。
逆にいうと、ハイブリッドモードに移行したくない、あくまでEV走行を楽しみたい場合は、ペダルの抵抗を感じた時点で踏むのをやめればいい…それだけです。C350eをイージーに、積極的にEVとしてドライブして欲しいという、メルセデス・ベンツ開発陣の意図が感じられます。
すこし横道にそれますが、スロットルペダルを使ってクルマとドライバー間のコミュニケーションを取ろうという試みが、C350eにはもうひとつあります。
レーダーセンサーで前走車との距離を把握し、前方を走るクルマが減速した時などに、ペダルにノックパルスを2回送る。つま、りトントンとペダルをノックすることで、ドライバーに対して、スロットルペダルから足を離すよう促すのです。これは“ダブル・パルス”と呼ばれるアシスト機能で、運転者が指示に従えば、不要な加速やガソリン(と電気)の消費を抑えられます。
プレッシャ・ポイント機能とダブル・パルス機能を併せて、メルセデス・ベンツは“インテリジェントアクセルペダル”と名づけ、「エコドライブを快適にアシストします」と謳います。これ以上機能を加えると、かえって運転者を混乱させそうですが、いかにも新世代のクルマらしい新機軸ですね。