エンジンをかければ、ディーゼルということは分かるものの、以前の「ガラガラガラ…」という騒がしい無粋な音とは一線を画しています。わずか1600回転で45.9kg-mという、4.5リッターV8ガソリンエンジン級のトルクを発生するので、車重2300kgのプラドを苦もなく加速させます。力強い走りです。
足まわりは、フロントがダブルウイッシュボーンの独立懸架、リアは左右の車輪をつないだトレーリングリンク車軸式。タフなサスペンションですね。
街乗りでは、腰下と離れ、上屋が若干揺れる感がありますが、それはもう“プラドの乗り味”と表現していいレベルです。乗用車ベースのSUVから乗り換えた人は、初めのうちこそ多少の違和感を覚えるかもしれませんが、じきに“本格派クロカンの証”と頼もしく思うようになるでしょう。
今回ドライブしたグレード「TZ-G」の室内は、木目調のパネルが貼られ、ステアリングホイールは革巻き、そしてシートはステッチ付きの本革仕様という贅沢な仕立てでしたが、センターコンソールに目をやれば、ただのラグジュアリーSUVではないことがすぐに理解できます。
センターコンソール中央の一等地には、大きなダイヤルが配されています。これは“マルチテレインセレクト”という、オフロードの走破力を向上させるシステムのセレクターです。プラドは、常に4輪が地面をつかむフルタイム4WD車ですが、トランスファー(副変速機)を通常の“H4”から臨戦態勢の“L4”にすることで、マルチテレインセレクトがスタンバイします。
泥濘地、岩場、滑りやすい未舗装路など、ダイヤルを回して路面状況に合わせたモードを選ぶと、それぞれの状況に合わせたエンジンレスポンスになり、“アクティブトラクションコントロール”によるブレーキ制御も変更され、駆動力を確実に路面へと伝え続けるのです。
さらに難易度が高い路面では“クロールコントロール”を作動させます。自動でタイヤのスリップやロックをコントロールしながら、微速で前進してくれるので、ドライバーはハンドル操作だけに集中すればいいのです。
それでもスタックしてしまった場合には、デフロックという、古典的にして強力な手段があります。プラドの場合、センターデフロックとリアデフロックという2段階の備え有り。また“リアハイトコントロールエアサスペンション”によって、リアの車高、つまり最低地上高を高めることもできるんです。うーん、頼もしい!
ちなみにプラドには「取扱書」とは別に「オフロード走行 取扱書」が用意されています。素っ気ない装丁で、必要事項が淡々と記述されているだけですが、それがかえって“実用”っぽくてイイ!
出発前には不要な荷物を下ろし、一方、シャベルやスタック脱出用のロープ(など)を用意して…と、いわば“心構え+α”の説明から始まり、ハンドルの握り方と回し方、用語解説、オフロード機能の活用…と、飾り気なく続きます。これに目をとおすだけで、いっぱしのオフローダーになった気分です。
ランドクルーザー プラドは、乗用車ベース…時には「クロカンの皮を被ったスポーツカーじゃないの?」と思える最近のSUVみたいに、高速道路の追い越し車線をハイスピードでクルージングする、といったクルマではありません。走行車線をトコトコと行くのが似合います。
その代わり、ラグジュアリーSUVが躊躇する、はたまた近寄ろうともしない悪路を平気な顔で走破する。少々足場が悪くても、難なくアプローチできる。実際、そうした使い方をするオーナーは少数派かもしれませんが、でも、プラドのハンドルを握る人は、皆さん「いざとなれば…」と思っていることでしょう。そんなヘビーデューティなクルマなのです。
<SPECIFICATIONS>
☆プラド TZ-G
ボディサイズ:L4760×W1885×H1835mm
車重:2300kg
駆動方式:4WD
エンジン:2754cc 直列4気筒 ディーゼルターボ
トランスミッション:6AT
最高出力:177馬力/3400回転
最大トルク:45.9kg-m/1600〜2400回転
価格:513万3927円
(文&写真/ダン・アオキ)