■ロードスターだからこそ粋に見える色づかい
先の商品改良において、マツダはロードスターに新しい内装色とボディカラーを追加した。新しいカラーの追加は、ソフトトップの「ロードスター」と、ハードトップ仕様の「ロードスターRF」に共通する内容だ。
新しく設定された内装色はホワイトだ。通常の革(牛革)よりも滑らかさとしなやかさを向上させたナッパレザーのカラーリングに、新色のピュアホワイトを設定した。“ピュア”という言葉が示すように純白で、目に鮮やかである。革本来の風合いが漂うナッパレザーとの組み合わせのため、どぎつくなく、程良く柔らかいイメージ。このピュアホワイトのナッパレザーインテリアは、ロードスターの「S レザーパッケージ ホワイトセレクション」、ロードスターRFの「VS ホワイトセレクション」に設定される。
一方、新たに追加されたボディカラーは“ディープブルークリスタルマイカ”。その名の通り、深い海を連想させる濃い青だ。ベタッとした闇のような青ではなく、透明感のある深い青である。
今回の試乗車は、ロードスターのS レザーパッケージ ホワイトセレクションにディープブルークリスタルマイカを組み合わせたものだったが、これがもう「反則だろう!」と思うくらい似合っていた。きっとロードスターだから似合うのだろう。実用一点張りのクルマに、深く透明感のある青と抜けるように鮮やかな白の組み合わせはキザに過ぎる。ロードスターだから粋なのだ。
ファッションでも同様だ。例えば、白いパンツと青いジャケットの組み合わせなど、誰にでも着こなせるわけではない。サマになるには身に着ける人間のスタイル(それは外面だけでなく内面も)が影響する。オープン仕様のライトウエイトスポーツカー、それも30年を超す伝統を受け継ぐロードスターだからこそ、ややもすると自意識過剰に映ったり、野暮に映ったりしてしまうような色合いもスマートに着こなせてしまうのだ。実車を前にしてそう感じた。
ちなみに、ディープブルークリスタルマイカのボディカラーは、従来の“エターナルブルーマイカ”に替えての採用だ。やや淡い青だったエターナルブルーマイカに比べると、ディープブルークリスタルマイカは大人っぽい印象。色に質量があるとすれば、エターナルブルーマイカは軽く、ディープブルークリスタルマイカは重い。
また、光の当たり方によって表情を変えるのも、ディープブルークリスタルマイカの特徴だ。日陰や夜間はマットな濃い青に見える一方、日中の強い日差しの下では、塗装面に物理的な深さを感じるくらい奥行きを感じる。まるで深い海をのぞき込んでいるかのようだ。そこに持ってきて、鮮やかなピュアホワイトの内装色である。青々とした南国の海と、純白のクルーザーの対比を連想させる。これほど見る者の胸を打つ色の組み合わせはないといえそうだ。
■ストイックに走ろうという気分にはならない
そんなムードを漂わせるディープブルークリスタルマイカのS レザーパッケージ ホワイトセレクションだからこそ、ソフトトップを収納し、オープンにして走りたくなる。クルマに近づき、ドアを開ける瞬間が最高だ。深い青と鮮やかな白が同時に、しかも間近に目に入る。
一方、クルマを操作するに当たっても、走らせている際のクルマの動きに関しても、気になる動きや、注意しないとうまくいかないような引っかかりの要素が一切なく、ナチュラルにつき合えるのがロードスターの美点だ。自然体でクルマと向き合うことができる。だから、気持ちに余裕ができて、レザーシートの色や風合いを愛で、和やかな気分になったり、ボディカラーが光の明暗や強弱によって表情を変える様子を楽しんだりすることができる。そんなドライブ時、ロードスター専用に開発された1.5リッターの直列4気筒自然吸気エンジンが奏でる乾いたエキゾーストサウンドは、いいBGMになる。
もちろん、オーディオを楽しむのもいい。S レザーパッケージ ホワイトセレクションには、ボーズ製のサウンドシステムが標準装備される。運転席と助手席のヘッドレストには、スピーカーを内蔵。クルマの外の音に邪魔されず、かといって音楽にすべての外音がかき消されることなく、絶妙に混じり合って耳に届く。窓外を通り過ぎる景色や音、それに匂いと音楽とが渾然一体となって、移動の記録として心に刻まれる。
きっと、ホワイトセレクションとディープブルークリスタルマイカの組み合わせがそうさせるのだろう。ストイックに走ろうという気分にはならない(もちろん、個人差はあるだろうが)。それよりも、波に身を任せて海上を漂うような気分でロードスターと向き合うのが合っている気がする。
2015年に日本で現行のロードスターをデビューさせて以来、マツダは積極的に新しい外装色や内装色、そしてソフトトップのカラーを採用し、ロードスターに新たな魅力を与えてきた。ピュアホワイトのナッパレザー内装とディープブルークリスタルマイカの外装色はその最新事例にして、最強の組み合わせといえるだろう。しかし、デザインに一家言持つマツダのことだ、きっとまだまだネタを隠し持っているに違いない。
<SPECIFICATIONS>
☆S レザーパッケージ ホワイトセレクション(MT)
ボディサイズ:L3915×W1735×H1235mm
車重:1020kg
駆動方式:FR
エンジン:1496cc 直列4気筒 DOHC
トランスミッション:6速MT
最高出力:132馬力/7000回転
最大トルク:15.5kgf-m/4500回転
価格:320万9800円
文/世良耕太
世良耕太|出版社で編集者・ライターとして活動後、独立。クルマやモータースポーツ、自動車テクノロジーの取材で世界を駆け回る。多くの取材を通して得た、テクノロジーへの高い理解度が売り。クルマ関連の話題にとどまらず、建築やウイスキーなど興味は多岐にわたる。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
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