パーツを選んで自分だけのオリジナル機械式腕時計を組み立てる【組み立て編①】

■パーツが揃ったらいよいよ組み立て開始!

すべてが揃ったところで、まずは全パーツを整理します。

こちらがセイコーのNH35Aと各パーツ。ドイツ製のパイロットウォッチをイメージしてパーツをセレクトしました。

そしてこちらがMIYOTAの8215と各パーツ。某有名ブランドのダイバーズウォッチをイメージして揃えています。

パーツも揃ったことですし、いよいよ工作開始ですが、どちらから作るか? なんとなく直感でセイコーから始めたのですが、これが大正解でした。両方作り終わった今だから分かりますが、セイコーのNH35Aの方がはるかに初心者向きでした。このあと、MIYOTA8215の組み立てではかなり苦戦することになりますが、それはまだ先のお話。まずはセイコーNH35Aから。

■まずはムーブメントにダイアルを付ける

腕時計の組み立ての第1段階はムーブメントにダイアルを取り付けることから始まります。

ダイアルの裏側を見ると干支足と呼ばれるピンが2本取り付けられています。このピンをムーブメントの所定の位置に固定することで、ダイアルはムーブメントと一体となるのです。

NH35Aの固定位置はこの2箇所。

少しきつめの穴にぐっと押し込むと、ダイアルはしっかりと固定されました。

■0時0分にムーブメントを合わせる

次に針(ハンズ)の取り付けなのですが、カレンダー付きムーブメントの場合は一手間かかります。それがムーブメントを0時0分に合わせること。当たり前ですが、カレンダーの日付は夜中の0時0分に切り換わらなければ意味をなしません。しかし針がない状態では、そのムーブメントの今が何時何分かわからないのです。この状態で適当な位置に針を付けると、全然関係のない時間に日付が動いてしまいます。

ではどうやって0時0分を見つけるのか。

まず仮で分針を中央のピンに取り付けます。ピンセットでは傷つくのでセロハンテープに軽く引っ付けて持つとやりやすかったです。

分針がついたらリューズを時間合わせの位置に引き出し、進む方向に回します。もし最初から時間合わせの位置と進む方向がわかっていれば、いちいち分針を仮付けする必要はありません。

どんどん針を回していけば、やがてカレンダーが少しずつ動き始めます。そうすれば0時0分が近い合図。慎重に進めカレンダーが変わったところが0時0分です。

■針(ハンズ)を取り付ける

ここから改めて針(ハンズ)の取り付けです。使うのは「針おさえ」と呼ばれる道具。ピンセットだけでもムーブメントのピンに穴を合わせ針を押し込むことは可能なのですが、針おさえを使った方が正確に作業ができます。

針がダイアルに対して正確に平行にならないと、途中で針がダイアルや他の針に接触して動かなくなってしまいます。また針同士の間隔なども微妙なので専門工具を使った方がいいでしょう。

使い方は難しくなく、針を中央のピンに軽く乗せたら、上から針おさえで圧着するだけです。

ただ時針と分針は問題なかったのですが、秒針が難しかった…。

正直、秒針に開いているはずの穴は肉眼では確認できません。

0時0分0秒の位置は諦め、とにかくグリグリと押し込み続け、少し引っかかったところで無理やり針おさえで押し込みました。

■100均一のボールを使ってケースを開ける

続いてケースが登場します。今回購入したケースはステンレス製で裏蓋はねじ込み式のタイプ。リューズもねじ込み式でパッキンが入っており、おそらくですが防水性能があると思われます。ねじ込み式の裏蓋は、前回の電池交換でも使った3点式オープナーで開け閉めするのが普通ですが、新品ピカピカのケースに傷をつけたくありません。

そこで登場するのが100均のゴムボール! これを使って裏蓋の開閉ができるという裏技情報を仕入れていたのです。少し弾力と粘っこさがあるゴムボールを使用し、裏蓋に押し付けながら回転させることで、ピンタイプのオープナーを使うことなく裏蓋を開閉できるすごい技。

実際にやってみたところ、工場でしっかりと密閉された市販の防水時計では難しそうですが、今回の場合は非常に有効に使える技でした。

さてここまで順調に進んできた機械式腕時計の組み立てDIY。所要時間はわずか3時間程度。初めての経験で、調べ物をしながらこの時間は、なかなかの出来ではないでしょうか。これは完成まで余裕だなと思っていたのですが、この考えは甘々だったのです。

※  ※  ※

さあ次回、いよいよパイロットウォッチが完成し、ダイバーズウォッチの組み立てに挑戦していきます! 果たしてカッコいい腕時計を作ることができるのか、お楽しみにお待ちください!!

NH35Aムーブメント:約4000円
ケース:約4000円
ダイアル:約1500円
ハンズ:約800円

※以上、輸入のため為替レートで値段は異なります

工具セット:3800円
針押さえセット:1200円
ムーブメント台;1430円
<写真・文/阪口 克>

阪口克|旅と自然の中の暮らしをテーマに国内外を取材するフリーカメラマン。秩父郡長瀞町の自宅は6年かけて家族でセルフビルド。家を経験ゼロからDIYで建てる。家族でセルフビルドした日々を描いた『家をセルフでビルドしたい』が文藝春秋から発売中。ほか近著に『笑って!小屋作り』(山と渓谷社)、『世界中からいただきます』(偕成社)など。

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