全長は約280cmで重さが約940g(本体のみ)。刃渡りは約115mm。素材は「多喜火鉈」と同じ鋼。斧としては珍しく持ち手部分までが一体となっているフルタング仕様という点も同じです。持ち手のウォルナットがしっくりきてますね。
ナタとの最大の違いは、この厚さ。ナタが5mmなのに対して、斧は9mm。いかにも斧らしい分厚さです。
これだけの厚さがあるので、当然ながら重心は刃側。そもそも斧は重みを活かして刃を薪に食い込ませるのが基本的な使い方。この「多喜火斧」も斧らしい使い方ができるようになっています。
トンと薪に刃先を食い込ませ、食い込みが足りなければ別の薪で背を叩いてバトニング。重さがあるから、軽く15cm程度振り下ろす程度で薪に食い込んでくれます。
斧というと振りかぶって薪に叩きつけるというイメージの人は多いかもしれません。でも、そもそもキャンプでの目的は薪を割ること。木を切るわけではありません。思いっきり振ると危ないし、重さのあるものをしっかり薪に当てるのは意外と難しい。
軽く振って刃先を薪に少し食い込ませ、食い込みが足りない場合はバトニング。薪に刃先がしっかり食い込んで斧と薪が一緒に持ち上がるようになったら、あとはそのまま薪割り台に叩きつけて割っていくのが正しい使い方。
そういう意味では、この「多喜火斧」は小型なのに刃渡りはそこそこあるので、薪に当てやすい。重さも、自重で食い込ませるという観点から考えても絶妙です。それに両刃仕様になっているので、利き手がどちらでも使いやすいという点も助かります。
ソロキャンプとはいえ、クルマで行く人にとっては長くて大きな斧だって問題ないかもしれません。でもこれはキャンプ道具あるあるかもしれませんが、小さい道具が持つ不思議な魅力というものがあります。「多喜火斧」も「多喜火鉈」も、そんな小さい道具らしさにあふれています。もちろん装備はコンパクトにしたいという人にとっては絶妙なサイズ感。ツーリングキャンプや徒歩キャンプの人でも持っていけるという点はありがたい。
使わない時は付属のレザーケースで刃を隠して保護。黒打ち仕上げの鋼にウォルナットの持ち手、そして黒いレザーのケース。この組み合わせからくる得も言われぬ雰囲気も「多喜火」シリーズの魅力です。
この組み合わせで思い浮かぶのは、大人気の薪バサミ、テオゴニアの「ファイヤープレーストング」。
焚き火台の横に、道具たちを置いてのんびりと炎を眺める時間って最高ですよね。キャンプ道具はもちろん機能性が最重要ですが、同じぐらい持っていきたくなる雰囲気も大事。しっかり使えて頑丈で手に馴染む。「多喜火斧」は、長く使って愛用品に育てたくなる焚き火道具です。
<文/円道秀和(&GP) 写真/田口陽介>
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