■オーテックジャパンのこだわりが特別な日産車を育む
今回フォーカスするノートAUTECHは、ノートe-POWERをベースとするこだわりモデルで、オーテックジャパンという会社がコーディネートしている。
そもそもオーテックジャパンとはどんな組織なのか? まずはそこから説明しよう。日本を代表するモータースポーツ“Super GT”において日産ワークスの「GT-R」(23号車)をスポンサードしていることでも知られるオーテックジャパンは、実は日産自動車の子会社だ。特装車の開発や組み立てを担当し、福祉車両や特殊用途の商用車など、顧客ニーズに合わせたカスタマイズ車両を主に手掛けている。その小回りの良さを生かし、昨今は日産車のカスタマイズモデルも手掛けていて、「GT-R NISMO(ニスモ)」を始めとする日産車の高性能仕様「NISMOロードカー」の開発や架装もオーテックジャパンが行っている。
同社は1986年に設立。初代社長を務めたのは“「スカイライン」の生みの親”としても知られる名エンジニア、故・桜井眞一郎氏だった。そんなオーテックジャパンの名を世に知らしめたのは、何といっても1992年発売の「スカイライン AUTECHバージョン」だろう。R32型GT-Rのエンジンからターボチャージャーを取り外し、自然吸気仕様とした心臓部を4ドアのスカイラインに搭載。まさに“羊の革を被った狼”というべき仕立てだった。
その後もオーテックジャパンは、R33型「スカイラインGT-R」には存在しなかった4ドアバージョンを手掛けてみたり、ステーションワゴンの「ステージア」にR33型GT-Rのメカニズムを移植した「ステージア260RS」を展開したりと、ベースモデルに大掛かりな改造を施したカスタマイズカーを生み出し、クルマ好きの注目を集めた。また近年は、日産車の内外装をプレミアム仕立てとしたドレスアップモデル「AUTECHシリーズ」も展開。“プレミアムスポーティ”をコンセプトに、軽自動車の「ルークス」からフラッグシップミニバンの「エルグランド」まで、多彩なモデルを手掛けている。
■ブルーへのこだわりとシルバーのアクセントが光る
そんなAUTECHシリーズの最新モデルがノートAUTECHだ。ベースモデルはノートe-POWERの「X」グレードで、ドレッシーという言葉がふさわしいカスタマイズが施されている。
まず目に飛び込んでくるのは、クルマを1周取り囲むようにあしらわれたシルバーのデコレーション。フロント、サイド、そしてリアと、ボディ下部にAUTECH専用のパーツが装着される。それらはすべてシルバーに塗られていて、クルマの重心を低く見せる演出にもなっている。またドアミラーも、同じくシルバーでコーディネートされている。
専用デザインの16インチアルミホイールとともにAUTECHの特徴となっているのがフロントグリル。立体形状のデザインから“ドットグリル”と呼ばれており、バランスを考えてドットのひとつひとつの形(とサイズ)を変えているというデザイナーこだわりのパーツだ。そのほかフロントバンパーの両サイドにはLEDランプを追加。光の色はオーテックジャパンのイメージカラーであるブルーとしている。
ブルーといえば、試乗車のボディに塗られたオーロラフレアブルーパール×スーパーブラックによるツートーンのカラーは、スタンダードなノートe-POWERには設定のないノートAUTECHだけの専用色。AUTECHシリーズはオーテックジャパンのイメージカラーであるブルーを、ベースモデルにはない形でラインナップするのがお約束だ。
ちなみにノートAUTECHは上記のブルー×ブラックのほかに、ピュアホワイトパール×スーパーブラックのツートーン、モノトーンのミッドナイトブラックなど、フツーのノートe-POWERにはない専用カラーが設定されている。もちろん、ガーネットレッドやプレミアムホライズンオレンジなど、ノートe-POWERと共通のカラーも5色用意されており、計8タイプのボディカラーから選択可能だ。
■プレミアムな世界観でクルマ好きの心をくすぐる
エクステリアだけでなくインテリアも、AUTECHシリーズ独自のコーディネートが施されている。
シート表皮やハンドル、インパネの加飾パネルなどは、ブルーを基調としたAUTECH専用パーツとなり、AUTECHシリーズならではの世界観を演出。そのこだわりは徹底していて、アームレスト類に入るステッチの色もブルーで統一されている。
またシート表皮には、上質な本革のように肌触りが柔らかく、かつ手入れのラクなレザレット(人工皮革)を採用。さらにインパネのデコレーションパネルには、ダークグレーをベースとする“紫檀(したん)”のパネル表面に、ブルーに光るパールをあしらうなどプレミアムな仕立てとなっている。このインテリアの世界観を味わうためだけに、あえてAUTECHシリーズを選びたくなるのは筆者だけではないだろう。
気になる走りは、定評あるノートe-POWERの美点を継承。刷新されたプラットフォームによって乗り味はしなやかだし、進化したe-POWERは力強い上に静粛性も上々。AUTECHシリーズが掲げる“プレミアムスポーティ”というコンセプトにマッチした、上質な走りを味わわせてくれる。
そんなノートAUTECHの価格は250万4000円〜。ベースグレードのXは218万6800円〜なので30万円強のアップとなる。気になるのは「30万円アップに見合うだけの価値があるか?」ということだが、それに関しては自信を持って「イエス!」と断言できる。それくらいノートAUTECHには、全身にクルマ好きの心をくすぐる“いいモノ感”が漂っている。
<SPECIFICATIONS>
☆AUTECH(2WD)
ボディサイズ:L4080×W1695×H1520mm
車重:1230kg
駆動方式:FWD
エンジン:1198cc 直列3気筒 DOHC
エンジン最高出力:82馬力/6000回転
エンジン最大トルク:10.5kgf-m/4800回転
モーター最高出力:116馬力/2900〜1万341回転
モーター最大トルク:28.6kgf-m/0〜2900回転
価格:250万4700円
文/工藤貴宏
工藤貴宏|自動車専門誌の編集部員として活動後、フリーランスの自動車ライターとして独立。使い勝手やバイヤーズガイドを軸とする新車の紹介・解説を得意とし、『&GP』を始め、幅広いWebメディアや雑誌に寄稿している。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
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