そんな愛すべきイベントのために用意されていたサプライズとは、ニューヨーク国際オートショーでお披露目されたばかりのロードスター RF。日本で人目に触れるのはもちろん初めてであり、こうして太陽の下でさらされるのも世界初だとか。
アンベールの瞬間、期待度MAX。そして、期待を裏切りません!
ベールの下から現れたRFのシルエット、実に美しい!
リトラクタブル・ハードトップを備えるこの手のオープンカーでは、これまでルーフを格納しようとすると、どうしてもそれを前提としたフォルムにしなければなりませんでした。スタイリングが大きく制約を受けていたのですね。
そこをブレイクスルーしたのが、ロードスター RFのキーポイント。発想の逆転は「リアのピラーを格納しない」という選択でした。
このアイデアについて、ロードスターのチーフデザイナーを務める中山 雅さんはこう解説してくれました。
「カッコいいルーフラインを引くこと、それはデザイナーにとって簡単なことです。でも、それをカタチにしてくれるのは、エンジニアたち。彼らとの二人三脚があってこそ、RFは実現できたんです」
そのとおり、RF=“リトラクタブル・ファストバック”のルーフには、数々の工夫が盛り込まれています。ステージで繰り広げられた山本さんと中山さんのトークショーをまとめると、RFの見どころはざっとこんな感じ。
1)デザインについていえば、オープンにするとルーフトップが開くことから“タルガトップ”では? ともいわれるが、むしろ、往年のトヨタ「セリカ」などが採用していたファストバック・スタイルを実現したかった。
2)リアのピラー周辺のデザインは、フェラーリ「ディーノ」の“トンネルバック”に通じるかもしれない。
3)そして、最もこだわったのは、ロードスターらしいオープンエアを追求するため、リアウインドウも開くようにしていること。
実際、何度もルーフが開閉する様子を見ましたが、すでにソフトトップ仕様のND型を買った人でさえ、思わず買い換えたくなっちゃうのでは? と心配になるほどの高い完成度。この電動ハードトップが出るのを待っていたという人にとっては、ものすごい朗報です。
そしてトークショーでは、このスタイルを支えたエンジニアリングについて、山本さんから解説がありました。そのポイントを要約すると、こんな感じ。
1)RFのリトラクタブルルーフを実現するために、2分割されたルーフとピラー、この3つのパーツで構成されている。
2)ループパネルのフロント側(こちらの方が面積が広い)はアルミ製で、リア側はスチール製。リア側についてはアルミ製も検討したが、スチールにして厚みを抑えた方が最適との結論に至った。
3)リアのピラー部分については樹脂製としている。
樹脂製のリアピラーを採用したのは、軽量化、そして、荷重を支える構造ではないため、というのが理由でしょう。
展示されたモデルを見る限り、“マシーングレー”と呼ばれる新しいボディカラーは、アルミ、スチール、樹脂と材質の違いはあれど、塗色のツヤや色味に違いは感じられませんでした(特殊な照明下では違って見えるかもしれませんが…)。
「パネルとパネルのつなぎ目をどこにもってくるか、についてもこだわりました。自然に見えるよう、一番“いい場所”に配置しようとすると、リトラクタブルルーフを格納する間口が狭くなってします。この点に関しては、エンジニアが頑張ってくれました」と中山さん。
確かに、可動するピラーとボディのつなぎ目は、トランクフードのつなぎ目の延長線上にあり、ルーフを閉じた状態で横から見ると、まるでクーペのよう。ルーフが開閉するとは思えない仕上がりになっています。
また会場では、ロードスター誕生の瞬間からプロジェクトに携わってきた貴島孝雄元主査と、元デザイン本部長である福田成徳さんによるマツダOBによるトークショーも開催。
ロードスター RFについて福田さんは「開閉式のリアウインドウが、垂直じゃなくてスラントして開閉していく様子が素晴らしい。ガラスが少しラウンドしているのも見事!」とご満悦。この玄人目線、非常に感心させられました!
しかも福田さん、主査である山本さんを前にして「RFでもソフトトップ仕様に対して、7〜8kg程度の重量増に抑えられることを期待したい!」と無茶振り。マツダのOBたちもRFに対し、大きな期待を寄せている様子がうかがえました。
そんなわけで、最初から最後まで大盛況の軽井沢ミーティングでしたが、ロードスター RFの具体的なスペック、価格などについては、まだ公表できる段階にはないとのこと。ただ発売時期に関しては、今年度を目指している、というのは変わりないようです。
オープンエアモータリングの新しいマイルストーンとなる、ロードスター RF。今回、歴史の目撃者となった軽井沢ミーティング参加者たちとともに、その登場を座して待ちましょう!
(文・写真/ブンタ)