スポーツカーとSUVの魅力が1台に!アウディ「RSQ3」は刺激的走りと使い勝手が秀逸

■欧州のSUVは走りのいい高性能仕様が多彩

ヨーロッパ車にあって日本車にないもの。そのひとつが“超高性能SUV”だ。しかし、超高性能といっても、オフローダーならではの悪路走破性のことではない。トヨタ「ランドクルーザー」やスズキ「ジムニー」が見せる超高性能な悪路走破性は、すでに世界が認めるところだ。

今回テーマとする日本車にはない超高性能とは、SUVの本質というべきそうした性能ではなく、それとは全く逆の舗装路における速さのこと。オフローダーではなく、スポーツカー的なベクトルである。

舗装路で超高性能を発揮するモデルとして有名なのは、なんといってもポルシェ「カイエン」だろう。さすがスポーツカーメーカーが手掛けるSUVだけあって、悪路よりもサーキットの方が似合う。最高峰モデルは640馬力の最高出力と300km/hの最高速度を誇る「カイエンターボGT」。ポルシェにはカイエンよりコンパクトな「マカン」があるが、こちらも同様にオンロードでの走行性能に優れている。

こうしたオンロードでの走りを極めたSUVの先駆けは、なんといってもBMWの「X5」だ。ミッドサイズセダンの「5シリーズ」をベースとし、2000年に登場した初代は、オフロードでの優れた悪路走破性と、セダンに匹敵するオンロードでの乗り心地&ハンドリングを兼備。一躍、人気に火がついた。そして現在、BMWのSUV「Xシリーズ」には、「X5 M」を始め、「X3 M」「X4 M」「X6 M」など、サーキットでの走りを磨いたモデルが多数ラインナップされている。

同様にメルセデス・ベンツも、高性能ラインのAMGで多彩なSUVを展開。コンパクトなボディに421馬力のエンジンを詰め込んだメルセデスAMG「GLA45S 4マチック+」や、612馬力のエンジンを組み合わせた最高峰モデル、メルセデスAMG「GLS63 4マチック+」など、多くの超高性能SUVをとりそろえている。

そして、BMWやメルセデス・ベンツと並ぶドイツ・プレミアムブランド御三家のアウディにも、超高性能なSUVとして「RS」シリーズが用意される、その1台が、今回フォーカスするRS Q3だ。

■レーシーかつ高級感を感じさせる仕立て

RS Q3のベースとなっているのは“Cセグメント”SUVの「Q3」と、それをベースにクーペスタイルに仕立てた「Q3スポーツバック」。ボディサイズは全長4505mm、全幅1855mmなので、日本の道路環境でも気にならない大きさである。

気になる心臓部は、同社の「RS3」やリアルスポーツカー「TT RS」と同じ、2.5リッターの直列5気筒ターボ。ちなみにこのエンジンは、エンジンの良し悪しを評価する“インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤー”の2.0〜2.5リッターカテゴリーにおいて、9年連続でベストエンジン賞に輝いたもので、新しくはないもののその評価はゆるぎない。

そんな2.5リッター直列5気筒ターボは、新しいRS Q3への搭載に際し、最高出力が400馬力まで引き上げられている。ちなみに駆動方式は“クワトロ”と呼ばれるアウディ独自のフルタイム4WD。前後輪へのトルク配分は、路面状況などに合わせて電子制御式の油圧多板クラッチが瞬時にコントロールする。

RS Q3のエクステリアは、大きく口を開けたフロントバンパーがスポーツモデルらしさを主張しているが、昨今のアウディ車は通常モデルのスポーティ仕様「Sライン」のデザインも過激になっているので“RSらしい迫力”というか、特別なオーラはあまり感じない。その理由はおそらく、RS Q3には背の低いRSモデルに見られる、大胆に張り出したオーバーフェンダーが備わらないからだろう。

一方、RS Q3の足下を見ると、フロントホイールの内側に軽自動車のタイヤ径くらいはありそうな巨大なブレーキローターが収まっていて、タダモノではないことを静かに主張している。ちなみに試乗車には、メーカーオプションのセラミックブレーキが装着されていたが、これらパーツはまさに、リアルスポーツカーのそれである。

試乗車のインテリアは、ダッシュボードの一部やハンドルなどが赤いアルカンターラ仕上げとなり、カーボン製パーツも随所にあしらわれたスポーティなコーディネート。赤いステッチによるシート表皮のハニカム柄も個性的だ。レーシーであり、高級感を感じられる空間に仕上がっている。

またメーターパネルは全面液晶で、視認性に優れるバーグラフタイプのエンジン回転計を中心部にレイアウトすることも可能となる。

■ドライバーの五感に響くエンジン&ハンドリング

RS Q3がフツーじゃないのは、その勇ましいエンジン音からもよく分かる。ちょっと不協和音的に共鳴する独特のサウンドは、5気筒エンジンならではのもの。アクセルペダルを踏み込むと「バリバリ」という破裂音を放つ太い排気音も、まるでレーシングカーのようである。

そして回転フィールなども、音に負けず劣らず刺激に満ちている。ドライブモードを「ダイナミックモード」に切り替えると回転数が瞬時に高まり、吹け上がりの鋭さや高回転域でのパンチ力による高揚感がドライバーの感性を揺さぶってくる。

一方、オプションの“RSダンピングコントロールサスペンション”が装着された試乗車は、「ダイナミックモード」にした途端にサスペンションが一気に締まり、ハンドリングフィールは過剰なほどにシャープとなる。

実際のドライブフィールは、とにかく官能的というひと言だ。エンジンもハンドリングも、すべてがドライバーの五感に響く。ちなみにRS Q3の静止状態から100km/hまでの加速タイムは4.5秒で、最高速度は標準状態の場合、速度リミッターが作動する250km/hとなるが、今回の試乗車はオプションでそれが280km/hまで引き上げられていた。むろん、それを楽しめるステージはサーキットしかない。RS Q3はSUVだが、サーキットを楽しめるスポーツカーでもあるのだ。

それでいて、走行モードを「コンフォートモード」にしたRS Q3は、全く別の顔を見せる。エンジン音は静かになり、RSダンピングコントロールサスペンション装着車は乗り心地もマイルドになるなど、高級SUVとしての色合いが濃くなるのだ。これならファミリーカーとしても同乗者から文句が出ることはないだろう。

■日本のSUVにも高性能なイメージリーダーを期待

そういえば、かつて日本車にも、スバル「インプレッサ WRX STI」のメカニズムを「フォレスター」の車体にドッキングさせた「フォレスター STI」や、280馬力のターボエンジンを積む日産「エクストレイル」など、高性能なSUVがいくつかあった。それらはキャンプなどのレジャーシーンにマッチする実用的なパッケージングを備えると同時に、ドライビングが楽しく移動する歓びをもたらしてくれた。

しかし気づけば、日本のSUVからそうした高性能仕様が絶えて久しい。その理由は端的にいってニーズの低さだろう。しかし、これだけSUV人気が高騰し、バリエーションも増えた今、各モデルのイメージリーダーとしてそうした高性能仕様を用意してもいいのではないだろうか? 過激なRS Q3をドライブしながら、そんなことを考えた。

<SPECIFICATIONS>
☆RS Q3スポーツバック
ボディサイズ:L4505×W1855×H1555mm
車重:1730kg
駆動方式:4WD
エンジン:2480cc 直列5気筒 DOHC ターボ
最高出力:400馬力/5850〜7000回転
最大トルク:48.9kgf-m/1950~5850回転
価格:863万円

>>アウディ「RS Q3スポーツバック」

文/工藤貴宏

工藤貴宏|自動車専門誌の編集部員として活動後、フリーランスの自動車ライターとして独立。使い勝手やバイヤーズガイドを軸とする新車の紹介・解説を得意とし、『&GP』を始め、幅広いWebメディアや雑誌に寄稿している。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

 

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