■これまでにないノイキャン強度
テクニクス「EAH-AZ60」は、同ブランドが1年半ぶりに発売する新製品で、新規のポイントも多数に及びます。
音響設計はバイオセルロース素材の8mmドライバーと先進素材系、さらにアコースティックコントロールチャンバー構造と、テクニクス独自の技術を搭載。また、高ビットレートでハイレゾ伝送も可能な“LDACコーデック”に対応と、Androidスマホ限定ではありますがソニー「WF-1000XM4」で改めてその高音質ポテンシャルが知れ渡った注目技術を、テクニクスも「EAH-AZ60」で採用した形です。
実機は片側約7gで耳に大部分が収まる形状。表面仕上げはブラックメタリックで、テクニクスブランドらしい上質さもあるデザインに。イヤホン表面はタッチパネル仕様で、IPX4相当の防滴対応です。
イヤーピースはなんと、XS1/XS2/S1/S2/M/L/XLと合計7サイズも付属。XSとSはイヤーピースの背の高さ違いで各2サイズあり、耳の形状によっては背の低いXS2/S2の方がノイキャン効果の出る人もいるとのこと。ノイキャンへのこだわりは、イヤーピースからも伺えます。
今どきの機種らしく充電ケースはコンパクト。ノイズキャンセルONの状態で、イヤホン本体で約7時間再生、充電ケース込みで約24時間再生できます。
各種設定はアプリ「Technics Audio Connect」を利用するのですが、このアプリがノイズキャンセル、外音取り込み、サウンドモードなどを設定できて、とても多機能。
なかでも他社にもあまりない機能が“ノイズキャンセルの最適化”。自分に合ったノイズキャンセル効果を探る機能で、スライダーを動かすと騒音の消える帯域が変化します。僕の場合は真ん中よりも少し上の位置がベスト。この機能は騒音下でテストした方が正確とのことです。
ノイズキャンセル調整を済ませた状態の騒音低減効果は“凄い”の一言。雑踏のガヤガヤする騒音はほとんど消え、低減が難しい高域よりのエアコンの騒音に対してもかなり有効。これはイヤーピースへのこだわりと、最適化の効果との合わせ技ですね。
取材時に利用した列車内でも低音の轟音はほぼなくなり、低減のレールが擦れる音、窓がガタガタなる音、風音にまでハッキリと効いていました。特に耳に付く騒音の尖りが落ちて、他機種が苦手とするような耳につくキツめの中高のノイズも気にならなくなります。
アプリからはノイズキャセル強度の調整可能もです。最大の100から60までは効果の微調整。騒音下では50あたりから下のレベルで周囲の騒音が聞こえ始めます。
また、“外音取り込み”を有効にすると、実際の耳で聴くより中域の音を取り込めるレベル。音楽リスニングをしつつ周囲の音を聞けて便利。こちらも100段階で調整可能です。
そしてノイキャンと並ぶテクニクス「EAH-AZ60」の特長が高音質設計。
まずiPhoneで宇多田ヒカル『あなた』を聴くと、完全ワイヤレスイヤホンとしてはリッチな情報量を引き出すナチュラル志向の高音質。女性ボーカルの歌声も透明感があるし、そして声の抑揚まで伝わる再現度。音場も広く優秀。低音はゆったりとしたリズム感と情報量があります。
BrunoMarsの『24K Magic』は相性が良く、鮮明な立ち上がりと奥行きまで感じる空間の見通しの良さで、ナチュラル志向の音空間で再現します。
続いて、Xperia1 IIで試した“LDACコーデック”。先ほどと同じく宇多田ヒカル『あなた』を聴くと、まるで音楽が演奏されている真っ只中にいるような音場感と臨場感ある音。それでいて歌声の繊細な伸びがあるし、楽器の生音らしさも現れます。
そしてBrunoMarsの『24K Magic』も、音楽を空間のなかで展開する、その立体的な音配置の再現性が抜群。バスドラムの音がきちんと楽器の音として判別できるほど。“LDACコーデック”による一番の高音質効果は音場の凄みですが、集中して聴くと個々の音まで繊細でリアル!
アプリからはイコライザーによる音質カスタマイズも可能なので、もっとガツンと重低音サウンドも可能です。
なお、“LDACコーデック”の再生音質は音質有線(990kbps)に設定すると屋内でも若干の音飛びがあったので、自動(330kbs/660kbps/990kbsで切り替え)の方が扱いやすやすそうです。
最後に通話系の機能も。独自の通話音声処理技術“JustMyVoice”テクノロジーは発話者の声だけを検出してくれます。実際にオンライン会議で試してみると、周囲の騒音は拾わないし、テレビをつけて音を出しても音声を拾うのは一部となかなか優秀。マイク音質も声の質感まで拾い、なかなか高音質でした。
* * *
ノイキャン性能だけでも業界トップ級なのに、“LDACコーデック”の高音質も、通話技術“JustMyVoice”テクノロジーも、全部トップ級の性能。これは2021年後半の新定番入り間違いナシの超優秀モデルです!!
※アプリの画面はテスト用のもので最終版ではありません
<文/折原一也>
折原一也|1979年生まれ。PC系出版社の編集職を経て、オーディオ・ビジュアルライター/AV評論家として専門誌、Web、雑誌などで取材・執筆。国内、海外イベント取材によるトレンド解説はもちろん、実機取材による高画質・高音質の評価も行う。2009年によりオーディオビジュアルアワード「VGP」審査員/ライフスタイル分科会副座長
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