■エッジを強調した四角いデザインに戻った
次期型エクストレイルで最大のトピックは、そのデザインだ。久しぶりに“四角い”エクストレイルが帰ってくる。
2000年にデビューした初代エクストレイルは直線的な四角いデザインが特徴で、それが無骨さや力強さ、そして道具感を印象づけるものとなった。2007年にデビューした2代目もその延長線上にあるデザインで、「エクストレイルといえば四角いデザイン」というイメージをより強固なものとした。
しかし2013年に登場した現行の3代目は、そんなイメージを打ち破るルックスで登場。丸みを帯びたスタイルには「エクストレイルらしくない」という否定的な声も多かったが、さすがに7年も経つとすっかり見慣れてしまったという人も、多いのではないだろうか。実は筆者もそのひとりだ。
そんな中で登場する次期型は、エッジを強調した四角いデザインに再び戻った。と同時に、「やはりエクストレイルはこうじゃなきゃ!」と、安心したのが正直な気持ちだ。
とはいえ、単に直線的でないところが次期型の特徴。いかにも“箱”という印象だった初代や2代目とは異なり、次期型はフロントの顔つきや傾いたリアピラー形状、そして抑揚をつけたショルダーラインやフェンダーの張り出しなどから、躍動感が増した印象を受ける。四角く直線的なルックスに戻りつつも、従来の“静”からダイナミックな“動”へと雰囲気が大きく変わったといっていい。
上下2段のヘッドライト(ハイビームやロービームは下側、上側はクリアランスランプ)はかなり奇抜で、「北米仕様と日本仕様ではフロントデザインが変わるのでは?」という声もあるが、2021年4月に発表された中国市場向けの新型エクストレイルも、基本的には北米ローグと同じデザインだった。そうした流れを考えても、日本仕様は細部の変更こそあるものの、基本的には北米のローグと同様になると考えられる。
ちなみに北米ローグのボディサイズは、全長4648mm、全幅1839mm。日本市場向けの現行エクストレイルはそれぞれ1690mm、1820mmなので、比べるとわずかに短く、ちょっとだけワイドなプロポーションだ。
■刷新されたインテリアデザインと広い後席空間
フルモデルチェンジだけあって、次期型エクストレイルはインテリアも刷新される。
ダッシュボードは現行エクストレイルのT字型レイアウトから、左右の広がりを重視した水平基調のレイアウトとなり、中央には8インチのタッチパネルディスプレイを備えるほか、メーターパネルも12.3インチの全面液晶となる。
ただし、現行「ノート」や電気自動車のSUVである「アリア」とは異なり、センターディスプレイとメーターパネルを横に並べてはいない。また、メーターもバイザーレスではなく、一般的な場所に収まっているのが興味深いところだ。つまり次期型エクストレイルのインテリアは日産車デザインの最新フェーズではなく、そのことを残念に思う人もいるかもしれない。しかし一方、「最新の日産車のインテリアは斬新だけど、なかなか馴染めない」という人なら、素直に受け入れることができそうだ。
そのほか、太いセンターコンソールも特徴的だ。そこには電子制御式のシフトレバーが置かれるが、形状こそ違うものの操作方法は現行ノートと同じ。マウスを前後に動かすような感覚の操作性はかなり良好で、驚くほど違和感なくすぐに馴染める。
さらに特筆すべきは、足元スペースが広い後席の居住性だ。北米ローグは座面のクッションも厚く、座り心地も優れている。
ただし、3列シート仕様も用意される現行のエクストレイルとは異なり、北米ローグには今のところ、3列シート仕様の設定がない。日本向けはどうなるかが興味深いところだが、現行型でもしっかりとしたニーズがあることは分かっているはずなので、次期型エクストレイルには設定される可能性が高そうだ。
■新型の技術的ハイライトはパワートレーンにあり
そんな次期型エクストレイルの技術的なハイライトは、なんといってもエンジンだろう。北米ローグは2.5リッター4気筒自然吸気エンジンのみの設定だが、日本仕様のエクストレイルには、1.5リッターの3気筒エンジンが搭載されそうだ。
そう聞くと「非力すぎない?」と感じる人も多いのではないだろうか? とはいえそのスペックは、最高出力204馬力、最大トルク31.1kgf-mと、2.5〜3リッター級の自然吸気ガソリンエンジンに匹敵。排気量が小さくて燃費がいい上に、最高出力や最大トルクも十分すぎるほどの実力を備えているのだ。
燃料と出力という、相反する要素を両立できた秘密は、日産独自の“可変圧縮比”という技術。エンジンが発明されて以来、上死点と下死点の比率である圧縮比は常に一定というのが常識だったが、日産は独自の技術で、量産車として初めて圧縮比を変化させるエンジンを開発したのである。
そのおかげで、通常は圧縮比を上げて低燃費走行をしつつ、パワーが必要な時には圧縮比を落とし、ターボチャージャーを積極的に活用することで高出力を実現。エコとハイパワーというふたつのキャラを使い分ける。“VC(バリアブル・コンプレッション=可変圧縮)ターボ”と呼ばれるこのエンジンは、これまで2リッター4気筒版が北米や中国向けに市販されていたが、次期型エクストレイルには新設計の1.5リッター3気筒が搭載されることになりそうだ。
筆者は先日、このエンジンを積んだプロトタイプをドライブする機会を得たが、状況に合わせて変化する圧縮比の制御はスムーズで、ドライバーがその変化を体感できるのは、メーターパネル内の表示を通してのみ。まるで大排気量エンジンのクルマに乗っているかのような走り味で、その上、現行エクストレイルが搭載する2リッター自然吸気エンジンよりも15%ほど燃費がいいという。
加えて日本仕様には、エンジンで発電した電気で回すモーターがすべての駆動力を生み出す“e-POWER”仕様が用意されるとのウワサも。気になるデビューは2022年の早いうちといわれているから、その登場が今から楽しみだ。
文/工藤貴宏
工藤貴宏|自動車専門誌の編集部員として活動後、フリーランスの自動車ライターとして独立。使い勝手やバイヤーズガイドを軸とする新車の紹介・解説を得意とし、『&GP』を始め、幅広いWebメディアや雑誌に寄稿している。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
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