Aピラーの内側に生える取っ手を握って「ヨッコラショ」と乗り込むと、視点が高いですねぇ。目の前に大きなボンネットが広がっていて、なんだか自分が偉くなったように思えます。
試乗車は、ガーネットと呼ばれるざくろ色の革シートが奢られていました。インストルメントパネルを横断するウッドパネル、ステッチが施されたインパネ表皮、そして、左手を置く場所に設けられた“リモートタッチ”が、ラグジュアリーSUVであることを主張します。
リモートタッチとは、あたかもPCのマウスのように手のひらで操作して、センターコンソールの画面を操作するデバイス。レクサス車に乗るたびに、その使いやすさと、画面からのフィードバックによって操作時の手応えが変わることに感心します。
エンジンに火を入れて走りはじめると、5.7リッターV8が野太くうなって、存在感をアピール。たくましくレクサスのトップSUVを動かします。ステアリングは意外に重め。クルマの性格に合わせているのでしょう。
最新のモデルらしく、LX570は先進の安全装備も充実。“レクサス セーフティ システム+”としてパッケージ化されています。
“レーダークルーズコントロール(全車速追従機能付き)”は、カメラセンサーの補助を得て、先行車や割り込み車両への対応が正確、かつスムーズになりました。このカメラは“レーンデパーチャーアラート”にも用いられ、車線逸脱の恐れがある場合、ブザー音やステアリングホイールの振動でドライバーに警告します。
ミリ波レーダーと単眼カメラは“プリクラッシュセーフティシステム”でも活用されます。路上の他車や人を検知して衝突しそうになると、警告し、ブレーキをアシストし、場合によっては自動ブレーキをかけて被害を軽減するシステムです。
夜間には、ハイビーム走行を基本として、先行車や対向車がいる場合、直接ライトを浴びせないようLEDランプを制御する“アダプティブハイビームシステム”が、ドライバーの運転を助けます。
このようにレクサスLX570は、トップ・オブ・SUVにふさわしい安全技術を搭載しているのです。一説には、安全性能を充実させてから日本に導入するために、マイナーチェンジを受けるまで発売が見送られていたのだとか。
いうまでもなく、オフロード性能は“陸の王者”ランクルゆずり。路面の状況によって走行モードを変える“マルチテレインセレクト”、ドライバーがハンドル操作に集中できるよう自動で微速前進する“クロールコントロール”、前後左右の路面状況をモニターで確認できる“マルチテレインモニター”など装備満載。さらに、エアサスペンションを使って最低地上高を3段階に切り替えることもできます。
一般的なLXオーナーが、こうしたオフロード機能をフルに使うことは、まずないでしょう。けれど「何のために付いているのか?」と不満に思う人もいないはずです。
LX570は、過給機を備えるライバルたちのように、スロットルペダルを踏んだとたん“怒濤の加速!”というわけにはいきません。でもそこは、LXを語るポイントではありません。むしろ、周囲を見下ろしながら自信を持って悠然と走る。路面を踏みしめながら感じる自信の源は、絶対的なオフロード性能なのです。
何はともあれ、レクサスLX570が戦火にさらされるようなことがありませんように。
<SPECIFICATIONS>
☆570
ボディサイズ:L5065×W1980×H1910mm
車重:2720kg
駆動方式:4WD
エンジン:5662cc V型8気筒 DOHC
トランスミッション:8AT
最高出力:377馬力/5600回転
最大トルク:54.5kg-m/3200回転
価格:1100万円
(文&写真/ダン・アオキ)