【試乗】ヴェルファイアが激変!トヨタ直系TRD製“魔法”のパーツ

ドアスタビライザー&ブレースセットは、ザックリというと「ミニバンのボディ剛性をアップさせるパーツ」。より正確に説明するなら、クルマが路面の段差を超えたり、ステアリングを切った際にボディに力がかかったりした時に、車体がゆがむのを抑える働きをします。

ドアスタビライザーはその名のとおり、ボディとドアをガッシリと結びつけるためのパーツ。具体的には、根本部分にスライドする樹脂板を備えた“キャッチ(ドアを留めるパーツ)”と、ドア側の“ストライカー(キャッチを噛むパーツ)”付近に貼る樹脂版とで構成されます。

TRD ヴェルファイア ドアスタビライザー&ブレースセット

ドアを閉めた時に、キャッチ側の樹脂板がスライドしながらドア側の樹脂板を受けとめることで、両者のすき間が埋められ、ドアとボディがしっかり“手を結ぶ”わけです。

クルマ好きの方にとって「なにを今さら…」の話かもしれませんが、ボディ剛性は、ドライブフィールの善し悪しにとどまらず、走行性能そのものの根幹にかかわる大切な要素です。そしてドア周りは、クルマのボディ剛性にかかわる重要なセクション…というか、弱点なんです。

現代のクルマのほとんどはモノコック構造を採っていて、ボディ全体で剛性を得ています(現実的には、ボディの骨格で大部分の剛性を得ているのですが)。そのため、ボディの大きな開口部となるドア部分では、ドアとボディをガッチリ結びつけておきたい。

でも、平面であるボディ側に、やはり平面であるドアが弧を描いて開け閉めされるのですから、両者にわずかなすき間がないと、ドアとして機能しません。

ボディ側のキャッチを見ると、コの字状になっていて、ある程度の誤差を許容する仕組みになっていることが分かります。そこに、ドアのストライカーがガチャリと引っ掛かるのです。ですから、どんなにキッチリ閉まっているようでも、ボディとドアは“点”で接しているに過ぎません。

ボディ剛性を考えると、ボディとドアはガッチリ結びつけておきたい。けれども“遊び"がないと機能しない…。そのジレンマを多少なりとも緩和するため、キャッチパーツ以外に、ボディとドアに、それぞれ凹形状と凸形状の樹脂パーツを装着し、応力が掛かった時にボディのねじれを減らす工夫を施したクルマもかつてありました。

その考えを徹底させたのが、TRDのドアスタビライザー、というわけです。

先述したように、ドアとボディのキャッチ部分に、広い面積を持つ樹脂と、スライドする樹脂パーツを追加し、ドア部分が持つ宿命的な“すき間”を積極的に埋める機能を持たせています。ドアとボディ、両者の接点を“点”から“面”にするのです。

TRD ヴェルファイア ドアスタビライザー&ブレースセット

TRD ヴェルファイア ドアスタビライザー&ブレースセット

実は、ドアスタビライザー自体は以前から販売されていて、例えば、トヨタ「86」専用のそれは1万4000円。「iQ」「アクア」から「マークX」「クラウンマジェスタ」まで、さまざまな車種に適合する汎用タイプ(1万5000円)も用意されます。隠れた人気商品なんですね。

ところが、リアにスライドドアを採用したミニバンの場合、フロント部分はドアスタビライザーでねじれを抑えられますが、より大きな開口部を持つボディ後半はそのままになってしまいます。では、どうするのか? その課題に応えたのが、ドアスタビライザー&ブレースセットの「ブレース」です。

TRD ヴェルファイア ドアスタビライザー&ブレースセット

薄くしなやかな細長い鋼板(上の写真・奥の2本)で、これを、標準装着されているブレース(上の写真・手前の2本)と交換します。ボディ後半部分の底面左右に斜めに取り付けることで、外から力が加わった時に、スライドドア部分のボディがゆがむのを抑えます。エンジンルーム内の左右に渡されるストラットタワーバーの“底面版"といえましょうか。

TRD ヴェルファイア ドアスタビライザー&ブレースセット

試乗車には親切なことに、ドアスタビライザー&ブレースセットを装着したトヨタ「ヴェルファイア」と、同セットを装着していないヴェルファイアが用意されていました。いずれも外装には、TRD自慢の空力パーツを付いています。

TRD ヴェルファイア ドアスタビライザー&ブレースセット

TRD ヴェルファイア ドアスタビライザー&ブレースセット

TRD ヴェルファイア ドアスタビライザー&ブレースセット

まずは、ドアスタビライザー&ブレースセットの付いていない、“非装着"ヴェルファイアに乗ってみます。3.5リッターV6を搭載するトヨタのトップ・オブ・ミンバンですから、走りも立派なものです。乗り心地良く、おおらかなドライブフィールです。

続いて、ドアスタビライザー&ブレースセットの“装着"ヴェルファイアに試乗。ドアを開けると、ボディ側のキャッチとドア側のストライカー周りに、TRDのパーツが付けられています。

ハンドルを握って走り始めると…。

あら不思議!? なんだかボディが“締まって”いる! 市街地走行を模して、40〜60km/hの間で軽く左右にスラロームしてみると、非装着車との違いがハッキリします。

特に激しくハンドルを切ったわけでもないのに、大柄なミニバンが操作に合わせ、キュッ、キュッと素早く向きを変えてくれるではありませんか! ステアリング操作に対するボディの反応が早いので、結果的にステアリングホイールを回す量が少なくて済みます。

もうひとつ感心したことは、後輪がしっかりステアリング操作に付いてきて、前輪の軌跡をキレイになぞる…感覚があることです。非装着車では遠いところにあったリアタイヤが、装着車では背後に迫って来た、そんな印象です。

いずれも、外から力が加わった際に「ボディがゆがむ量が減ったから」でしょう。

分析力のなさと、感覚の鈍さには定評のある私ですが(泣)、それでも両者の差が明確に分かりました! 普段からミニバンに乗るオーナーの方なら、なおさら、その違いにビックリすることと思います。

TRD ヴェルファイア ドアスタビライザー&ブレースセット

今回テストしたドアスタビライザー&ブレースセットはまだ試作品ですが、発売間近とのこと。まずは「アルファード」「ヴェルファイア」用がリリースされます。価格は3万円(1台分)くらいになるとのこと。リーズナブルな価格じゃないでしょうか。

愛車の走りを、もう少し「シャキッとさせたい!」と考えているオーナーの皆さま、試してみてはいかがでしょう。

また、ドアスタビライザー&ブレースセットは、「ノア」「ヴォクシー」「エスクァイア」など、他のミニバン用の開発も検討中とのこと。隠れたヒット商品になりそうな予感がします。

(文・写真/ダン・アオキ)

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