新型プリウスの“走り”に関して、「確かに先代モデルと比較するとスポーティにはなったけれど、絶対的には“ホット”というレベルではない」と(エラそうに)思っていました。従来の、ステアリングホイールとタイヤが遠く離れているような感覚は薄まったけれど、「『運転が楽しい!』とうれしくなるほどではない」と。
プリウス TRD Ver.1に乗り込む時も「大きな飛躍はないだろう」と考えていました。なぜなら、デリケートな動力系=ハイブリッドシステムには手を入れづらいので、変更できるのは空力パーツと足回り程度ですから。
ところが、白いTRDプリウスを駆ってクローズドコースを走ってみて、すっかり興奮しました。コレ、ちゃんと“スポーツ”してるじゃないですか!
印象的だったのは、ステアリング操作に対するクルマの反応が、リニアで機敏だったこと。足回りがしっかり接地している一方、むやみに頑張り過ぎていません。思いどおりにクルマが動いてくれるので、“曲がる”のが楽しいし、タイトコーナーでは、少しばかりオーバースピードで飛び込んで、タックインで軽くタイヤをスライドさせる…なんて“遊び”が、安心感高く、気軽にできちゃいます。クルマが手の中に入っている気がするので、実際の大きさよりひと回り小さいスポーツハッチを繰っている感じ。これは、イイ!
今回のプリウス Ver.1には、TRDのサスペンションセット(ダンパー+スプリング/10万8000円)に加え、MCB(8万6400円)が装着されていました。
MCBとは、モーション・コントロール・ビームの略。内部に重ねた皿バネと摩擦板を収めた筐体を持つバーで、ボディの前後に装着されます。MCBが1mm弱伸縮することで、ボディの剛性を適度に高め、同時に、振動を減衰させる効果があります。ボディの基礎体力を上げることで、運動性、スタビリティ、そして乗り心地を向上させられるのです。
プリウス TRD Ver.1は、見事にプリウスをスポーツモデルに変身させていました。愛車のプリウスを、外観だけでなく、機能面でもチューンしていきたいオーナーの人は、気になるパーツから交換、装着していくといいのでは? 例えば“走り”好きの方なら、まずはTRDのサスペンションセットから試してみてはいかがでしょう。
(文・写真/ダン・アオキ)