売れるのも分かる!日産「ノートオーラ」は爽快な走りと上質な仕立てでライバルを凌駕

■同じように見えて差別化が明確なオーラとノート

「やっぱり違うなぁ」。久しぶりに対面したオーラに乗り込み、コックピットを見回して改めてそう感じた。違うというのは“フツーのノートとは違う”という意味だ。

オーラは2021年6月に発表された日産のコンパクトカーで、2020年12月にフルモデルチェンジしたノートの上級モデルという位置づけだ。オーラとノートの違いに関する詳細は発表時のレポートで触れているので深掘りしないが、大きな差別化ポイントとなっているのは上質なインテリアだ。

しかも差別化されているのは、インテリアだけにとどまらない。ルックスも結構違っていて、フロント、リアが専用デザインとなるほか、フェンダーも片側20mmずつ張り出しが大きくなっており、全幅が40mm拡大。オーラは全幅1735mmの3ナンバーサイズとなっている(ノートは5ナンバーサイズ)。クルマは全幅が拡大すると一般的にスタイリングの安定感が増すため、わずか40mmの差とはいえ視覚的な効果は大きい。オーラを見た後にノートを眺めると妙に貧弱に思えるほどだ。

もうひとつの差別化ポイントは、ノートに対してパワーアップしていること。ノートもオーラも“e-POWER”と呼ばれる機構を積んだハイブリッド専用車で、エンジンを発電専用としつつ、すべての駆動力はその電気を使って回すモーターによって生み出される。1.2リッターの3気筒エンジンやバッテリー、そしてモーターは2台とも共通だが、制御の変更などによりオーラはトルクが7%、最高出力は18%もアップした高出力タイプを搭載。動力性能でも格上としているわけだ。

ちなみに、オーラが搭載するフロントモーターの最高出力は136馬力、最大トルクは30.6kgf-mであり、ガソリンエンジンで例えるなら3リッターの自然吸気に相当する。こうしたスペックからも、オーラの動力性能のレベルがいかに高いかが分かるはずだ。

■上等なリビングルームのようにくつろげる室内

ここからは、オーラと1日過ごしてみての印象をお伝えしよう。

まずはドアを開けて運転席に乗り込んでみる。ダッシュボードを始め、センターコンソールやシートなどの基本造形はオーラもノートも変わらないから、パッと見たところ大きな違いがあるわけではない。

しかし、オーラのダッシュボードには木目調パネルやツイード調表皮があしらわれ、より上級のクルマだと感じられる。また、センターコンソールにも木目調パネルが貼られていて落ち着きがある。

かつて日産自動車は“モダンリビング”を提唱し、初代「ティアナ」で大胆に木目調パネルを使ったコックピットを提案したことがあったが、あの時のような新しさとリラックスできる雰囲気が、オーラのインテリアからも伝わってくる。革を使ったこれ見よがしの高級感ではなく、上等なリビングルームにいるかのようにくつろげる感じがいい。

一方、メーターパネルは先進性を感じさせる。バイザーのないタブレット端末のようなパネルはデザイン的にも従来のメーターとは全く異なるし、12.3インチと高級車に匹敵するほどパネルが大きいのも魅力。近年、メーターパネルに液晶ディスプレイを使用するモデルが高級車を中心に増えているが、コンパクトカーでここまで大きいサイズを採用した例は珍しい(日産自動車によるとクラス初)。

例えば、液晶のメーターパネルを積極的に導入しているメルセデス・ベンツでも、「Cクラス」などは12.3インチとなる一方、「Aクラス」のコンパクトカーだと10.25インチ、もしくは7インチと小さくなる。その点オーラは、Aクラスより下のクラスであり、価格が安いにもかかわらず、Cクラスどころか「Sクラス」と同じサイズのディスプレイを搭載しているのだからすごいことだ。

しかもオーラのそれは、ノートのものと一見、同じにみえるが、ノートの場合、表示部が7インチTFTディスプレイと5インチセグメント表示の組み合わせとなるなど、中身は異なっている。メーターからも漂うオーラの上級感は、こうした理由があるのである。

■軽快に曲がるのにひとクラス上の安定感も兼備

続いて、オーラの走りにフォーカスしてみよう。

何を隠そう、ノート&オーラ、トヨタ「ヤリス」&「アクア」、ホンダ「フィット」とひと通り出そろった国産コンパクトカーのハイブリッド仕様の中で、最も加速フィールが心地いいのはノート&オーラである。駆動力のすべてをモーターに任せるノート&オーラの加速感は電気自動車と同じで、スムーズかつリニア。その上、搭載するe-POWERは、気持ちのいいガソリンエンジンのようにパワーの盛り上がりを感じられる。スムーズでリニアなだけでは、洗練されているけれど味気ないフィーリングになりがちだが、そこに盛り上がりを演出することでドライバーは高揚感を得られるのだ。

パワーが増したオーラでは、そうした走りの爽快感がさらに濃密になっている。ノートやオーラがハイブリッド専用車となったことに対して賛否両論あるものの、おそらくこの心地いいハイブリッドシステムがなければ、オーラの世界観は完成されていなかったはず。さらに、エンジンの音を抑えつつ、遮音ガラスなどを採用して静粛性にこだわったことも、オーラの特別感を強めている。

ワインディングにおけるキツい上り坂に差し掛かっても、オーラはストレスなく、おまけに、突然エンジンが高回転まで回り、けたたましいノイズを上げることもなく、スイスイとスムーズに登っていく。まさにモーター駆動によるメリットを実感させられるシーンだ。

しかもワインディングでは、運転が気持ちいいと感じられる。その理由は、オーラのハンドリングの良さに尽きるだろう。クルマの動きが軽快な上に、ハンドル操作に対する反応が素早くて素直。ドライバーがイメージした通りに曲がってくれるから、ヘアピンコーナーのように深く曲がり込んだカーブでも外側にはみ出すことなくキレイに曲がっていく。

それでいて高速道路では、挙動がビタッと安定していて落ち着きがある。コンパクトカーらしく軽快に曲がるのに、ひとクラス上のクルマのような安定感も兼ね備えた、不思議なドライブフィールだ。その最大の要因は、ノートから採用が始まった新しいプラットフォームのポテンシャルがものすごく高いことだろう。その上オーラでは、絶妙な味つけのサスペンションも効いている。

■目の肥えたダウンサイザーも評価したプレミアム感

日産自動車によると。オーラは発売から2カ月で約2万台を受注したという。“小さな高級車”というキャラクターが、大きなクルマから乗り換えるダウンサイザーのお眼鏡にも適ったようだ。事実、日産自動車によると、オーラ購入者のうち下取り車のある人の48%がダウンサイザーだったという。

オーラの価格は261万円からと、単純比較すればノートより60万円ほど高いが、それでも、あえてオーラを選ぶカスタマーがしっかり存在するということだ。しかも販売状況の内訳をみると、最上級グレードの「Gレザーエディション」を選ぶ人が全体の66%で、さらにナビゲーションや先進安全装備の“プロパイロット”、BOSEのプレミアムオーディオを組み合わせた40万円を超えるセットオプション装着率も、86%に達するというから驚くばかりだ。

もちろんコストパフォーマンスにおいては、オーラはノートにはかなわない。価格重視ではなく、違いが分かる人に向けた商品企画である。そんなオーラのセールスが好調という事実は、時代が“小さな高級車”を求めているという日産自動車の商品企画が、間違っていなかったことを示している。

<SPECIFICATIONS>
☆G(2WD)
ボディサイズ:L4045×W1735×H1525mm
車重:1260kg
駆動方式:FWD
エンジン:1198cc 直列3気筒 DOHC
エンジン最高出力:82馬力/6000回転
エンジン最大トルク:10.5kgf-m/4800回転
モーター最高出力:136馬力/3183〜8500回転
モーター最大トルク:30.6kgf-m/0〜3183回転
価格:261万300円

>>日産「「ノート オーラ」

文/工藤貴宏

工藤貴宏|自動車専門誌の編集部員として活動後、フリーランスの自動車ライターとして独立。使い勝手やバイヤーズガイドを軸とする新車の紹介・解説を得意とし、『&GP』を始め、幅広いWebメディアや雑誌に寄稿している。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

 

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