まずは「航空サブスクサービス」の料金内で利用可能な1泊2日で何をするかを考えてみました。素直に昨今の情勢を踏まえると、ワーケーション利用で“仕事”と“観光”かなと思い、そこに的を絞ってみます。
仕事一本? ちょこっと観光? 実はそのバランスこそが滞在の充実度を左右していました。
今回、筆者が体験するにあたり滞在1回目・長崎は仕事に全振り。2回目・札幌はチェックインまでは観光、その後ワーケーション(通常業務+観光)。3回目・南紀白浜はホカンス(ホテル+休暇)を意識、と3パターンを試してみました。
結果、1回目はかなりストレスフルな状況に。2回目は仕事も観光も効率よくこなし大満足。3回目は業務とともに温泉利用など癒しもプラスし心身ともに軽やかに。
効果の具体例として、在宅業務で1日の歩数が500歩前後だったのが、旅中は1万5000歩以上にアップ。1日の中でデジタルデトックスの時間や他者とのコミュニケーションも増え、前向きな時間が増えました。なお、1泊2日の場合は出発前に業務の前倒しなど、事前準備で仕事量を減らし余裕を持たせることも大事だと実感。
JAL(日本航空)とJTB、NTTデータ経営研究所が実施した“ワーケーションの効果検証実験”では“ワーケーションが生産性・心身の健康にポジティブな効果がある”と結果が出ています(※2020年7月27日リリース「ワーケーションは従業員の生産性と心身の健康の向上に寄与する ワーケーションの効果検証を目的とした実証実験を実施」参照)。
また、上記実験結果の具体例として、仕事とプライベートの切り分けの促進や、所属意識の向上、さらに実施中の仕事の効率アップやストレスの低減とその持続効果、活動量の増加などが挙げられています。
ユーザー側はメリットや効果が実証されていますが、宿泊事業者側の視点も気になるところ。今回宿泊した2施設に話を伺いました。
札幌で利用した「THE KNOT SAPPORO」の宿泊支配人・黒田裕敏氏は稼働率としては「緊急事態宣言中のワーケーション利用がもともと顕著でしたが、サブスク利用のお客様も多く、我々としてもその効果は大きいと感じています」と話します。
ちなみに都心部でのホテル利用のワーケーションのコツも聞いたところ「一度の滞在で周辺観光地を見るよりも、今回はグルメ、次回は名所などとひとつテーマを決めてメリハリをつけておくと仕事と観光の両立がしやすくなるのでは」と提案も。ホテル自体の「リピート利用も想定より多い」とのことで、環境と仕事のしやすさで、再度の利用につなげているようです。
同館には、24時間営業の「セイコーマート」や北海道銘菓「ノースマン」を提供する「札幌千秋庵」が入り、手軽に夜食の入手や銘菓を味わえます。さらにホテルスタッフにおすすめ飲食店を聞けば、美味しい地元料理が味わえるなど、中心地ならではのメリットもありました。
一方、ワーケーションの聖地とも呼ばれ、企業のサテライトオフィスなどが多い南紀白浜エリア。「SHIRAHAMA KEY TERRACE HOTEL SEAMORE」を運営し、今回の実証実験で「SEAMORE RESIDENCE」を提供する同ホテルの営業部・松平哲也氏は「1名利用の増加によりRESIDENCE側の稼働率がホテルよりも高かった時期もあった」と話します。
以前は温泉街として1名利用者の受け入れが難しい時期もあったが、県や自治体のサイクリングやワーケーションへの取り組み、さらにホテル自体の改装を経てここ数年で環境が変わり開かれた場所へとなったとのこと。
同氏は「ワーケーション環境構築をさらに進めるとともに、逆に今後デジタルデトックスも提案していきたい」と話します。
また、“ホカンス”についても言及。温泉や足湯、有名ベーカリーの監修カフェの併設や地元産の魚介を使った寿司店など、滞在中のあれこれはホテル内のみで完結するのが同館の大きな魅力。「移動がない分、選択肢を複数用意し、ホテル滞在ならではの提案も続けていきたい」としました。
なお、観光やワーケーション以外の「航空サブスク」の使い方として、ユーザーからは“ちょこっと帰省”や“出張の前乗り”利用なども挙げられました。利用者や地元の人々とのコミュニケーションのツールとして利用するユーザーも多い印象です。
ワーケーションスペースで知り合った相手との繋がりを、現地イベントやSNSなどを通じてその場限りではなく次に活かし、現地集合現地解散の旅仲間を作るなどの使い方もされているようです。
ワーケーションはもちろん、気軽な一人旅、コミュニケーションツール、帰省と、自分なりの使い方で利用の幅が広がる「航空サブスク」サービス。定額だからこそのメリットは、まだまだ未知数。自分なりの活用術を見つられれば新たな生活スタイルの基盤となるのかもしれません。
>> HafH
<取材・文/相川真由美>
相川真由美|エディター/ライター。ライフスタイル系雑誌の編集アシスタントを経て、IT系週刊誌・月刊誌で約10年以上編集者として刊行にたずさわる。現在は、フリーの編集記者として国内外のテーマパークやエンタメ、ならびに観光、航空関連の取材・インタビューを中心に執筆中。
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