ボルボはすでに、日本円にして1兆3000億円超の投資を行い、選択と集中を断行。手始めに、エンジンラインナップを断捨離しました。
4気筒、5気筒、6気筒と、あれこれリソース(開発スタッフと開発予算、そして生産設備)を分散させるのではなく、4気筒の新エンジンを軸に、ドカッと潤沢に開発費をブチ込んで(開発中の3気筒、そして発売中のディーゼルは、多数のパーツを新4気筒と共有)、一点豪華主義的な(?)、いや一点突破型の、よくデキたエンジンを作ってきたのです。
これが、ボルボのいう新世代パワートレイン群“Drive-E”なのです。基本設計は同じ。後は過給圧やセッティングを変えることで、車種、グレードに差別化しています。
そして、エンジンの次はいよいよクルマの基本骨格です。
新世代プラットフォーム“スケーラブル・プロダクト・アーキテクチャー(SPA)”を、複数の車種にまたがって採用をすることを前提に開発。その採用第1弾が、XC90なのです。新生ボルボの旗印ですね。
SUV発祥の地である北米では、日本より先行してXC90がリリースされ、すでにバカ売れしています。「北米トラック/SUV・オブ・ザ・イヤー」、米『モーター・トレンド』の「2016 SUV・オブ・ザ・イヤー」、『ワーズオート』誌の「10ベストインテリア2016」受賞など、ちょっとした旋風を巻き起こしています。
日本でも、初年度の割り当て予定だった500台がすでに底をつきそうで、一部のグレードを除いて、年内納車も危うい事態。急遽、追加の500台をキープできたということで、関係者も安堵したほどなのです。
今回ドライブしたのは、XC90のトップグレード「インスクリプション」のT8エンジン搭載モデルです。
T8は、4気筒エンジンにターボとスーパーチャージャー、ふたつの過給器を備えています。ターボはエンジンの排気ガスを、スーパーチャージャーはエンジンの回転を利用して羽根やポンプを回し、エンジンにたくさんの空気を送り込む仕掛け。
さらにT8は、電気モーターを後輪に搭載したプラグインハイブリッド仕様となります。プラグインハイブリッドは、出掛ける前に充電しておくのが前提。当然、それなりにバッテリーの容量がないと、あまり恩恵を得られません。
その点T8は、総電力量9.2kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載しています。これは車重の違いもありますが、この秋に出るとされているトヨタの新型「プリウス PHV」よりも大容量です。
効率の良いリチウムイオンバッテリーとはいえ、搭載するにはまとまったスペースが必要。なので、比較的大きなSUVタイプのプラグインハイブリッド車であっても、これまでの車種は少なからず、ラゲッジスペースや居住空間を損なっていました。結果、3列シート仕様も、プラグインハイブリッドモデルでは3列目シートを省略し、2列シート仕様にして…。
XC90は、この課題を解決しました。本来なら、4輪駆動のためにプロペラシャフトを通す床下のトンネル部分に、バッテリーを詰め込んだのです。リアタイヤの駆動は、電気モーターが担います。結果、プラグインハイブリットモデルとしては世界初の、7シーターSUVとなりました。
注目したいのは、このバッテリー搭載のために、XC90の中でもこのT8だけ、フロア部分の設計を変えていること。側面から衝突された場合でも、バッテリーのあるトンネルが変形しないよう補強を入れ、同時に、衝撃が分散するようにしています。さすがは、安全性に一家言持つボルボですね!