W杯でドイツが燃えていた2006年にBMW M社を訪問した時、私は当時の上級マネージャーに「なぜ『1シリーズ』にMモデルを設定しないの?」と尋ねました。
ちなみにBMW M社は、BMWグループにおいて3つの役割を担っています。
1:「Mモデル」に代表される高性能車の開発
2:「インディビジュアル」と呼ばれる特注車の製作
3:サーキットを使ったドライビングレッスンなどの開催
(ちなみにレース活動はBMWモータースポーツという別部門が担当)
「3シリーズ」をベースにした「M3」、「5シリーズ」がベースの「M5」、「6シリーズ」ベースの「M6」があって、最高級サルーンの「7シリーズ」をベースにした「M7」がないのはまだしも、「1シリーズ」ベースのMモデルがラインナップされないのはどういうことなのか?…と詰め寄ったわけです。
ひょっとしてネーミングが、BMW初のスーパーカーにして初のMモデルである往年の「M1」と被ってしまうから?…
彼の答えはこうでした。
「コンパクトで軽量な1シリーズでMモデルを作ったら、面白いモデルが出来上がるのは間違いありません。しかし今のところ、その予定はないのです…」
まぁ、ツレない返事。
なぜ予定がなかったのか。当時(今もそんなに変わらないと思いますが)、Mモデルのメインマーケットは北米でした。その北米では、1シリーズを展開していなかったのです。メインマーケットで売る道筋のないM1(仮称)を作ってもビジネスが成り立たない、という判断だったのではないでしょうか。以上、あくまで推測です。
しかし「M1があったら面白い」なんていうのは、開発者、ドライバー、セールスマンの総意でしょう。事実、先代に当たる「1シリーズ クーペ」のモデル末期には「1シリーズ Mクーペ」なんていう“ほぼMモデル”を限定ながらもリリースしました。残念ながら正規輸入はされませんでしたので、日本には並行輸入車がわずかに存在するのみです。
時を経て、1シリーズから派生した「2シリーズ クーペ」が、北米でもリリースされました。となると俄然、期待が高まったのですが、Mモデルに待望の新顔が追加されるまでは、BMW内でもかなり擦った揉んだがあったようです。出すの、出さないの、やっぱり出すことにしよっと…。
紆余曲折を経て、ついに(!)世へ送り出されました。「M2クーペ」登場です。
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