GS Fのボディサイズは、全長4915×全幅1855×全高1440mm。BMWの「M5」よりわずかに小さいですが、ほぼ同じ大きさといっていいでしょう。ホイールベースは、M5比で115mm短い2850mm。クイックなハンドリングには有利ですね。
やや大きなお尻は、見かけに違わず520リッター(VDA値)のラゲッジスペースを確保しています。BMW「5シリーズ」の560リッターには及びませんが、日常的には十分な容量でしょう。
リア回りで注目すべきは、トランクリッドに付いたカーボン製リアスポイラーと、“F”のお約束、八の字にレイアウトされた4本出しマフラー。これまた分かりやすく、スペシャルモデルであることを強調しています。
ドアを開けて運転席に座ると、素材の使い方が独特であることに気づきます。インパネ回りには、レザーに加え、バックスキン調のアルカンターラが要所要所に使われます。ことに特徴的なのは、ヘッドレスト一体型のスポーツシート。2色のレザーが組み合わされ、その上、派手なステッチが斜めに走ります。
もちろん、生地のカッティングで目を驚かせるだけでなく、丸みを帯びたバックレストが乗員をやんわり抱き、しっかりとホールドしてくれる。機能性にも優れたシートです。
スターターボタンを押してエンジンに火を入れると、8気筒の低いうなり声が再びドライバーを驚かせます。その存在感たるや! おとなしいエンジンが多い、というか、エンジンの存在を感じさせないのを良しとする高級車が多い中、GS Fは、V8エンジンを積んだスポーツモデルであることを常にドライバーに意識させます。オーナーにとってはそれがまた、うれしいポイントなのですね。
そろそろと走り始めると…、例えば駐車場から一般道に出る段差を越える時などに、このクルマがただ者でないことを、またまたドライバーは確認することになります。道路へ斜めにアプローチして、前後対角線上のタイヤ2輪でクルマを支える体勢になっても、GS Fのボディは、ミシリともいわない。その気配さえ見せない。ものすごい剛性感です。
それもそのはず、GS Fのボディ骨格には、レーザー溶接やスポット増しが施され、パネルの合わせ目、さらにはガラスとボディに間にも特殊な接着剤を用いて剛性アップが図られている。そうです、スポーツモデルは、体の根幹から鍛えないとダメなんです。Fの称号は、伊達ではないんです!
フロントに収まる4968ccのV8エンジンは、477馬力/7100回転の最高出力と、54.0kg-m/4800〜5600回転の最大トルクを発生。ライバルであるBMW M5の場合、4394ccのV8エンジンをターボで過給して、最高出力560馬力、最大トルク69.3kg-mを得てます。
カタログスペック上では及びませんが、GS Fの、走り始めのプッシュの強さは、大排気量のNAエンジンならではの力強さ。また、その最高出力の発生回転数からも分かるように、自然吸気エンジンらしく伸びやかに回して、リニアな加速を堪能することができます。“ASC”ことアクティブサウンドコントロールが、速度に合わせてエンジンサウンドを演出してくれるのは、ご愛敬!?
レクサスのGS Fには、「エコ」「ノーマル」「スポーツ」そして「スポーツ+」と走行モードを切り替えられる“ドライブモードセレクト”が備わり、モードを切り替えるごとに、各モード専用のメーターがナセル内に表示されます。液晶タイプのメーターならではの演出ですね。
ちょっと面白いのはエコモード時のメーター表示で、アクセルを踏み込むと、それに反応して円周内側の青い帯が短くなります。逆にアクセルをゆるめたり、エンジンブレーキを利かせたりすると、青い帯が伸びていきます。GS Fは高性能なスポーツモデルですが、「キチンとエコも評価している」というわけです。
ただしGS Fは、エコモードでも十二分に速いので、隣に大事な人を乗せた時などは要注意です。信号グランプリを気取って、いたずら半分にアクセルペダルをベタ踏みすると、文字どおり、顔から血の気が引くほどの加速を見せます! きっと、助手席から本気で怒られますよ…。
高剛性ボディに大排気量エンジンという、古典的かつ基本に忠実な成り立ちを持つGS Fですが、一方で、先進の電子デバイスも満載しています。コーナリング中の駆動力を制御して“曲がり”を手助けする“TVD”。乱れた挙動を安定化させる“VDIM”も、走行モードに合わせて特性を変化させられます。
走行性能を向上させるだけでなく、GS Fの電子デバイスは安全面でも活用されます。さまざまなセーフティテクノロジーが“レクサス セーフティ システム+”としてパッケージングされています。ミリ波レーダーや単眼カメラを駆使し、車線からの逸脱や、他車が死角に入ったことを警告したり、衝突しそうな時は自動でブレーキをかけたりします。夜道では、ハイビームで視界を確保しつつ、対向車のドライバーや歩行者がまぶしくないよう、照射範囲を細かくコントロールするという気遣いもみせます。
GS Fは攻めるも守るも頼りになる、鋼のボディを持つスポーツサルーンなのです。カッコいいですね。
<SPECIFICATIONS>
☆GS F
ボディサイズ:L4915×W1855×H1440mm
車重:1830kg
駆動方式:FR
エンジン:4968cc V型8気筒 DOHC
トランスミッション:8AT
エンジン最高出力:477馬力/7100回転
エンジン最大トルク:54.0kg-m/4800〜5600回転
価格:1100万円
(文&写真/ダン・アオキ)
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