■3度目の改良でD型フォレスターへと進化
「フォレスターが進化した」と書けば、「またか?」と思う人も多いのではないだろうか? そう感じる人がいるのも無理はない。なぜならフォレスター(だけでなくスバル車のほぼすべて)は、毎年改良を受けて地道に進化しているからだ。
スバルは年次改良と称し、毎年のように各モデルを進化させ続けている。今から1年ほど前の2020年10月には、フォレスターに対して「2.5リッターの自然吸気エンジン車を廃止して、1.8リッターのターボエンジン車を追加する」という大きなバリエーション変更を実施。それに続いて、2021年8月に大改良を受けてアップデートされたのが、今回紹介する最新モデルというわけだ。
スバル車は、フルモデルチェンジ直後の初期モデルを「A型」とし、改良を受けるたびに「B型」、「C型」……とアルファベット順に型式が変わっていく。そのルールに照らし合わせると、2021年8月以降のフォレスターは「D型」と呼ばれ、3度目の改良を受けたモデルとなる。
■初めてエクステリアデザインに手が入った
最新モデルであるD型のポイントはいくつかあるが、最大のトピックは顔つきが変わったことだろう。2018年6月のデビュー以来、初めてエクステリアデザインに手が加えられたのだ。
中でも注目はヘッドライトだろう。スバルの新デザイン言語である“BOLDER”の思想を取り入れた新型のヘッドライトは、大胆な、とか、目立つといった意味を持つ“BOLDER”という言葉から想起させるように、フロントグリルの脇(フロントバンパー上部)の一部がヘッドライトにめり込んだ形状となっている。
これは2020年秋にフルモデルチェンジした「レヴォーグ」と同じテイストで、この部分こそがフォレスターが最新モデルであるか否かを見分ける最大のポイントになっている。またヘッドライトの形状変更に合わせ、フロントバンパーやフロントグリルも新デザインとなっている。
そのほかエクステリアでは、18インチアルミホイールのデザインが変更されたほか、ルーフレールがこれまで一部仕様にだけ設定されていた“ロープホール(ロープを通すための穴)”の付いたタイプに全グレードとも統一されている。
インテリアでは、「アドバンス」グレードにオプション設定される本革シートの素材が、ナッパレザーへと格上げされた。ナッパレザーとは、特別な処理を施した上質な本革で、肌触りが柔らかいのがポイント。
フォレスターといえば、撥水素材のシート表皮を多くのグレードに採用するなど、アウトドア向けとかタフといったイメージが強いが、D型はナッパレザーを選べるようになったことで上質さも磨かれている。
■アイサイトはシステムごとそっくり入れ替え
とはいえ、こうした目に見える部分の変更は、今回の年次改良の一部にすぎない。実は見えない部分にもしっかりと、しかも大きく手が加えられているのだ。
その筆頭ともいえるのが、“新世代アイサイト”の採用だ。衝突被害軽減ブレーキやACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)といった先進安全装備&先進運転補助機能の総称である“アイサイト”は、2020年秋に登場した現行レヴォーグから、新世代のものへと進化しているが、それが今回、D型フォレスターにも導入されたのだ。つまり最新のフォレスターは、アイサイトのシステムをそっくり入れ替えてきたのである。
ステレオカメラは画角(見える範囲)が大幅に広がり、センサーの精度向上もあって、画像認識とそれに対する制御がより高度かつ精密になった。その結果として、交差点における左右折時の衝突回避サポートなど、プリクラッシュブレーキの作動領域が拡大。また、ACC使用時の動きが滑らかになったことは、進化のメリットをより実感しやすいポイントといえるだろう。
さらにハイブリッド仕様では、コーナー進入時にCVTの減速比をあらかじめ高めて減速をアシストし、立ち上がりの加速を鋭くする“e-アクティブシフトコントロール”の搭載グレードが、従来の「X-BREAK(エックス・ブレイク)」のみから、「ツーリング」と「アドバンス」にまで拡大。悪路や雪道で発進などをアシストするオフロード走行時制御機能“X-MODE(エックス・モード)”には、車速に応じて制御の有無を自動で切り替える機能を追加するなど、走行機能が進化しているのも見逃せない。
またフォレスターには、カメラでドライバーを検知し、シートやミラー位置などをあらかじめ設定しておいたポジションに整える“ドライバーモニタリングシステム”が設定されているが、その機能も強化された。
インパネ中央上部のディスプレイ上に内蔵されたカメラの前で手を動かすことで、エアコンの設定温度を切り替えるシステムを新搭載。手を「パー」の状態にすると設定温度が上がり、「グー」にすると設定温度が下がるというユニークなアイデアだ。
■“見た目より中身”を重視した改良
そんなD型フォレスターをドライブして感じたのは、何よりスバルの真面目さだった。
今回の改良は、大幅改良とはいえ見た目が大幅に変わったものではない。ヘッドライトの形状変更など最小限で、クルマに詳しい人でなければ従来モデルと判別するのは難しいはずだ。
しかし実際は、先進安全機能の代表といえるアイサイトのシステムを、ハードウェアを含めてごっそりと入れ替えるなど、性能はしっかり進化。“見た目より中身”を重視した今回の大改良は、「より完成度を高めていく」というモノづくりに対するスバルのひたむきな姿勢そのものといっていい。
乗り味は、今回の試乗車である“e-BOXER(イー・ボクサー)”と呼ばれるハイブリッド仕様も、必要にして十分な力強さを発揮してくれるが、個人的には、トルクフルでCVTの感覚もダイレクト感が強い1.8リッターターボを搭載する「SPORT(スポーツ)」グレードが好印象である。
5世代目となる現行フォレスターがデビューしたのは、2018年6月のこと。前身となる4代目のモデルライフが2012年から2018年までの6年間だったことを考えれば、デビューから3年目に行われた今回の大幅改良は、モデルライフの折り返し地点を迎えたと証といえるだろう。各部の完成度が高まったD型フォレスターは、ますます買いのモデルになったといえそうだ。
<SPECIFICATIONS>
☆アドバンス
ボディサイズ:L4640×W1815×H1715mm
車重:1660kg
駆動方式:4WD
エンジン:1995cc 水平対向4気筒 DOHC+モーター
トランスミッション:CVT(リニアトロニック)
エンジン最高出力:145馬力/6000回転
エンジン最大トルク:19.2kgf-m/4000回転
モーター最高出力:13.6馬力
モーター最大トルク:6.6kgf-m
価格:348万7000円
文/工藤貴宏
工藤貴宏|自動車専門誌の編集部員として活動後、フリーランスの自動車ライターとして独立。使い勝手やバイヤーズガイドを軸とする新車の紹介・解説を得意とし、『&GP』を始め、幅広いWebメディアや雑誌に寄稿している。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
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