選ぶ楽しさも広がった!最新型マツダ「CX-30」は走りの実力がさらにブラッシュアップ

■北米でのセールスが60%近く伸びたCX-30

2021年のアメリカの新車市場は、2020年よりわずかに増加したと予測されている。その中で、売り上げを大きく伸ばしたメーカーのが日本のマツダだ。同社の2021年の通年販売台数は33万2756台。これは2020年比で19.2%増という好成績だ。

その内訳で注目すべきは、2020年比で58.1%アップという驚異的な伸びを示したモデルがあったこと。それがここに紹介するCX-30だ。2019年にデビューしたCX-30は、今ではマツダを支えるマーケットとなった北米において、「CX-5」(2021年の販売台数は16万8383台)に次ぐ人気モデルへと成長している。

また、CX-30と多くのメカニズムを共用する「マツダ3」との関係性も興味深い。2021年に6万185台を北米マーケットで売り上げたCX-30に対し、マツダ3の販売台数は半分強の3万7653台。この結果、北米マーケットでは今や“Cセグメント”でもハッチバックやセダンよりSUVの方が売れていることを示している。

そんなCX-30というモデルをおさらいすると、Cセグメントに属する全長4.4mのコンパクトSUVで、マツダ内でのポジショニングは“「CX-3」以上CX-5未満”。日本車におけるライバルは、トヨタ「カローラクロス」やスバル「XV」といったところだ。厳密にいえばクラスは異なるが、パッケージング的にはホンダ「ヴェゼル」も競合となるだろう。つまりCX-30は、日本市場においてもホットなジャンルに属すモデルといえるだろう。

■過去1年ほどの間に3回も改良を受けたスカイアクティブX搭載車

先日、そんなCX-30の最新型に触れる機会を得た。マツダはレクサスやスバルと同様、“年次改良”と呼ばれる商品改良をほぼ1年おきに実施するプログラムを取り入れており(中には、半年ほどで改良を実施するケースもある)、今回ドライブしたのはその最新モデルだ。

ここからは、CX-30の過去1年ほどの動きを振り返ってみよう。

2020年12月の商品改良では、独自の燃焼方式を採用したガソリンエンジン“スカイアクティブX”の燃焼制御を変更し、パワーやドライブフィーリングを向上させた。また同時に、1.8リッターのディーゼルターボエンジン“スカイアクティブD”の最高出力を向上させ、アクセル操作に対する反応も高めている。

さらに、先進運転サポート機能のひとつであるステアリングアシストの作動上限速度を引き上げ、ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)の加減速制御をより滑らかに進化させている。このように、パワートレーン&先進機能の制御をかなりアップデートさせたのだ。

そのわずか半年後の2021年4月には、スカイアクティブXの燃費と排出ガス性能が向上。さらに全グレードのサスペンションを改良し、乗り心地を良化させている。

そして、そこから半年後の2021年10月には、同じ年に2度目となる改良を実施している。スカイアクティブXは、吸気口やサイレンサーのパーツを変更して加速時のエンジンサウンドを強調。また、スカイアクティブXのATモデルでは、アクセルペダルの反力を重くしている。

マツダは前者の改良について「シフトアップごとに変速のタイミングとサウンドの変化がシンクロすることで、停車時から発進加速するシーンでリズムよく変速する気持ち良さを高めた」と説明。また後者の改良については「アクセルペダルを操作している感覚を明瞭に感じられ、クルマとの一体感が増す」と解説する。単にスペックを追い求めるのではなく、フィーリング向上にもしっかり踏み込んでいるのがマツダらしい。

いずれにせよ、スカイアクティブX搭載車に関しては、過去1年ほどの間に3回も改良を受けたことになる。これは「絶え間なくしっかりとクルマを育てていく」という、マツダの決意を感じられるエピソードだ。

■身近になったスカイアクティブXとハイコスパな「黒」の特別仕様

直近となる2021年10月の改良では、メカニズムの改良以外にも大きなトピックがあった。それはバリエーションの拡充だ。

まずはスカイアクティブX搭載車に追加された新グレード「X スマートエディション」。これはスカイアクティブX搭載車のベーシックグレードに相当するモデルだ。

「X スマートエディション」は、上級の「Lパッケージ」に対し、LEDヘッドライトやデイタイムランニングライト、ルームミラーやドアミラーの自動防眩機能、ステアリングヒーター、前席シートヒーター、運転席パワーシートなどが省かれている。さらに“クルージング&トラフィックサポート”と呼ばれる運転支援システムから、ハンドルアシスト、交通標識認識システム、前側方接近車両検知システムが省かれ、アダプティブヘッドランプも装備されない。

このように「X スマートエディション」は、ひと言でいえば装備を絞った仕様だが、注目すべきはその価格。288万7500円〜と、Lパッケージに対して約60万円も安いのだ。「スカイアクティブXは気になるけれど高価だから…」と二の足を踏んでいた人にとって、これは魅力的な存在といえるのではないだろうか。快適装備や先進装備は削られているものの、走行性能に関しては一切妥協がないから安心していい。

そして、もうひとつ追加されたバリエーションが、スカイアクティブX、スカイアクティブD、そして通常の2リッターガソリンエンジン“スカイアクティブG”に用意された「ブラックトーンエディション」だ。

これは、CX-5などに先行投入されて人気を博している仕様で、エクステリアではドアミラーやホイールを黒でコーディネート。一方インテリアには、赤いステッチの差し色を配すなどスポーティな仕立てとなっている。

そんなブラックトーンエディションの表のテーマは「スポーティなスタイル」だが、実はこのグレードには裏のテーマもあるように思う。それは、装備が充実している割に価格設定が低めで、コストパフォーマンスに優れていること。つまりCX-30のユーザー層をこれまで以上に広げる仕様、このブラックトーンエディションといえるのだ。

■パワートレーンの高い完成度も最新型の魅力

今回ドライブしたのはそのブラックトーンエディションで、パワートレーンはスカイアクティブDの前輪駆動だった。

首都高速を中心に試乗したが、改めて感じたのはCX-30自体の身のこなしの良さ。SUVならではの背の高さを一切感じさせず、レーンチェンジや、ジャンクションのループ路で大きく曲がり込むようなルートでも、クルマとの一体感が感じられて心地いい。シャーシのポテンシャルの高さが伝わってくる上にハンドリングもいいから、ドライバーは「自分の思った通りに動いてくれる」感覚を得られて安心してドライブできる。

CX-30はこれまで何度もロングツーリングを経験し、そのたびに「クルマの動きがいいし、疲れないクルマだな」と高く評価していたが、度重なる改良でそうしたポテンシャルの高さにさらに磨きが掛かった印象だ。

クルマ好きの中には、日本車に多いCVTの感覚が心地よくない、という人も多いだろう。そんな人にとって、このクラスの日本車で唯一、ATによる有段変速とそれが生み出す自然な加速フィールを楽しめるCX-30は、気になる存在となるだろう。加えて、スカイアクティブDのトルクフルな走りでも国産ライバルをリードしている。そうしたパワートレーンの完成度の高さも、最新型CX-30の魅力のひとつといえそうだ。

<SPECIFICATIONS>
☆XD ブラックトーンエディション(2WD)
ボディサイズ:L4395×W1795×H1540mm
車重:1460kg
駆動方式:FWD
エンジン:1756cc 直列4気筒DOHC ディーゼル ターボ
トランスミッション:6速AT
最高出力:130馬力/4000回転
最大トルク:27.5kgf-m/1600~2600回転
価格:313万9380円

>>マツダ「CX-30」

文/工藤貴宏

工藤貴宏|自動車専門誌の編集部員として活動後、フリーランスの自動車ライターとして独立。使い勝手やバイヤーズガイドを軸とする新車の紹介・解説を得意とし、『&GP』を始め、幅広いWebメディアや雑誌に寄稿している。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

 

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