最新こそ最良の「マツダ3」!走り味が格段に熟成した最新版はまさに今が買い時

■200万円台のスカイアクティブX搭載車を新設定

ここも違うし、あそこも違う…。2021年10月末に恒例の商品改良を実施した最新版のマツダ3は、ちょっとした間違い探しの様相を呈している。

今回の商品改良について、マツダのプレスリリースには「ダイナミクス・燃費・装備などの改良および新外板色の追加と機種ラインナップのリニューアルおよび特別仕様車の追加設定」と書いてある。

中でも大きなニュースは、新グレードと特別仕様車の追加だ。トピックはふたつある。

ひとつ目は、eスカイアクティブXと呼ばれる独自の燃焼方式を採用したガソリンエンジン搭載車に、新たなエントリーグレードとして「X スマートエディション」が追加されたこと。上級グレードと比べると、アダプティブ・クルーズ・コントロールに車線維持支援機能を組み合わせた“クルージング&トラフィック・サポート”が非採用となるなど、ベーシックグレードの「15S」に相当する装備レベルとすることで、279万741円というプライスタグを実現している。

X スマートエディション

ちなみに、マツダ3に200万円台のスカイアクティブX搭載車がラインナップされるのはこれが初めて。従来、eスカイアクティブX搭載車は、最も安くても「Xプロアクティブ」(現在は廃止)の319万8148円だったことを考えると、約40万円もエントリー価格が下がったことになる。

もうひとつのトピックは、特別仕様車「ブラックトーンエディション」がラインナップされたこと。これは、SUVの「CX-5」などで人気を博しているモデルで、ホイールやドアミラーをブラック仕上げとし、ステッチなどにレッドのアクセントを添えたインテリアをコーディネートしている。

加えて新型は、ボディカラーの選択肢も増えた。一部グレードに、マツダの上級グレード専用のボディカラーとして定番になりつつあるプラチナクォーツメタリックを設定。

新色・プラチナクォーツメタリック

さらにセダンでは、これまで設定のなかったポリメタルグレーメタリックを選べるようになっている。

■プレスリリースに書かれていない多彩な改良点

新しいマツダ3には、さらに細かい部分にも改良の手が及んでいる。

例えばウインカーが、「CX-30」や「MX-30」に採用されている、まるで光がゆっくりと消えながら点滅し、鼓動のような生命感を感じさせる“デュミングターンシグナル”にバージョンアップしたのも最新モデルだけの特徴だ。

このほかeスカイアクティブX搭載車では、吸気口やサイレンサーの部品を変更するなど吸排気系のエンジンサウンドをチューニングし、加速時のサウンドを強調。高回転域まで爽快に加速していく感覚を強めている。

さらにeスカイアクティブX搭載車のAT仕様では、アクセルペダルの踏力特性を変更(反力アップ=重くした)することでアクセルの操作感を明瞭に感じられるようにし、ドライバーとクルマとの一体感が増すよう改良したという。

以上ここまでが、マツダのプレスリリースに書かれている今回の商品改良の内容だ。しかし、実車に施された変更は、それだけではない。

本当に細かい部分だが、リアコンビネーションランプのウインカー周囲に、十字を切ったような処理が施されているのが、従来型と異なる最新型の見極めポイントのひとつ。

加えて、リアゲートやトランクリッドにある「MAZDA3」というエンブレムも、よくよく見ると変化している。これまでは、下部のラインで各文字がつながった一体型エンブレムだったのに対し、新型のそれは文字の間隔が広がり、1文字ずつ独立したものとなっている。

このように、リリースには書いてないけれど、新しいマツダ3の実車には、まるで間違い探しのような変更点がいくつも加えられているのである。

■低い速度でも分かる乗り心地とブレーキの進化

というわけで、最新版のマツダ3をドライブに連れ出してみた。

試乗車はセダンのブラックトーンエディションで、ボディカラーはセダンでは初の設定となるポリメタルグレーメタリック。つまり、従来のマツダ3では選べなかった、見る人が見れば最新モデルと分かるツウ好みの仕様である。

率直にいって、今回の試乗車はかなりカッコいい。ポリメタルグレーメタリックという、シックでありながら光の当たり方などによって華やかさも感じられるボディカラーと、ホイールやミラーがブラックに塗られたブラックトーンエディションは好相性。マツダ3セダンの魅力のひとつだった美しさに、精悍さがプラスされている。

そして、内外装のチェックを終え、走り始めてすぐに「おや?」と感じた。人が歩くくらいのスピードで路面の凹凸を踏み超えた瞬間、ドライバーに伝わってくる衝撃が緩和されているように思えたのだ。気のせいかと思ったら、次の凹凸でもやはり同様だった。

従来のマツダ3、特にデビュー直後の初期型は、路面の凹凸から受けた衝撃や振動を比較的ダイレクトにドライバーへと伝えてくるモデルで、率直にいって乗り心地がいいとはいえなかった。しかし最新型は、サスペンションがしなやかで路面からの衝撃や振動がマイルドになり、乗り心地が良くなっている。いわゆる“カドが取れた”という印象だ。

そして、同様に低い速度からブレーキを踏んでみると、同じく「おや?」と感じた。最新型はブレーキの制御も変更されているようだ。

従来のマツダ3のブレーキは、ブレーキペダルを踏む際の“踏力”に応じてリニアにコントロールできるタイプで、速度域が高いシーンでのコントロール性に優れていた。しかし半面、街中など速度の低いシーンでは、初期の減速力の立ち上がりがもの足りないと感じるケースも多々あった。それが最新型では解消されていたのだ。

最新型は乗り心地が良くなり、日常領域におけるブレーキの扱いやすさもアップしている。ともに低い速度域からでも違いが分かる改良だ。リリースには詳しく書いていないけれど、走り味もしっかりブラッシュアップされていたのだ。

■最新のマツダ車が最良のマツダ車

今回の試乗車は、eスカイアクティブXではない普通の2リッターガソリンエンジン・スカイアクティブGを搭載する仕様だった。そのため正直なところ、スペックなどに特別すごい部分はない。

けれど、アクセルペダルを踏み込んだ際の吹け上がりはスムーズだし、高回転域での音は野太くてどことなくレーシングカーっぽい。パワーは過剰ではないけれど足りないわけでもなく、都市高速やワインディングロードを気持ち良く走るのに、ちょうどいい印象だ。

また、アクセル操作に対するパワートレーンのダイレクト感が高いのも好印象。これは、トランスミッションがCVTではなく、このクラスの日本車としては唯一のATだからという点も大きいだろう。しかもマツダの6速ATはロックアップ率が高いから、トルコンが滑っているような感覚はほとんどない。運転するのが好きな人なら、その気持ち良さを実感できるはずだ。

ハンドリングも決してシャープではないけれど、都市高速によくあるS字コーナーの切り返しにおけるフットワークは、スポーツカーを想起させるくらいスムーズかつ軽快だ。必要以上にスピードを出さなくても、流れに乗って走っているだけで自然なリズム感が心地良く、ついつい遠回りしたくなったほどだ。

最新型のマツダ3は、リリースなどに詳細こそ書かれていないものの、乗ってみると各部がブラッシュアップされていて、完成度が高まっているのを強く実感した。ポルシェはしばしば「最新のポルシェが最良のポルシェ」といわれるが、それになぞらえれば、「最新のマツダ車が最良のマツダ車」といえそうだ。

<SPECIFICATIONS>
☆セダン 20Sブラックトーンエディション(2WD)
ボディサイズ:L4660×W1795×H1445mm
車重:1350kg
駆動方式:FWD
エンジン:1997cc 直列4気筒 DOHC
トランスミッション:6速AT
最高出力:156馬力/6000回転
最大トルク:20.3kgf-m/4000回転
価格:256万3000円

>>「マツダ3」

文/工藤貴宏

工藤貴宏|自動車専門誌の編集部員として活動後、フリーランスの自動車ライターとして独立。使い勝手やバイヤーズガイドを軸とする新車の紹介・解説を得意とし、『&GP』を始め、幅広いWebメディアや雑誌に寄稿している。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

 

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