■マゴチを狙うべくプロの指導の元、川にフルキャスト
今回、渡邉さんがポイントに選んだのは、太平洋に注ぐ一級河川の河口部。大河の先に太平洋の大海原を望むダイナミックな景観ですが、サーフよりも魚のいるポイントが近いので初心者でもゲームが成立しやすいのだとか。
狙うターゲットはシーバスとマゴチ。マゴチはヒラメとならびサーフルアーフィッシングの人気ターゲットですが、イワシなど中層のエサも捕食するヒラメとは対照的に、海底近くに生息するマハゼやシロギスを主に捕食しています。
そこで、&GP釣り部部員はより近くのポイントで狙える、マゴチ用のワームの「ジグヘッドリグ」をチョイス。一方で渡邉さんは、上流でシーバスをヒットさせている釣り人を見かけたとのことで、「バイブレーションプラグ」を使ったシーバス狙いからのスタートとなりました。
釣り場の河口には大きな橋がかかり、向こう岸の魚市場などの様子が見渡せるのどかな雰囲気。水平線から荒波が打ち寄せるマッチョなサーフとはまた違った趣があります。前回のサーフでのフルキャストに慣れたのか、みんな割とすいすいキャストしてルアーを操ります。うまいじゃない。
ただ、大潮で満潮という時合はよさそうなのですが、なかなか魚がかかりません。そこでだんだんと全員の頭に「ここもボウズ(魚が一匹も釣れないこと)じゃね?」という不安がよぎります。
とそのとき、副編Mのロッドが根元までブチ曲がってる! リールを巻くこともできないほどの手応え。「むむむぅっ!?」と奇声を上げつつロッドを抑えるので精一杯ですが、猛烈な引き込みであえなくラインが切れてしまいました。
「いまのはデカかったですねぇ」と渡邉さん。
そのとき副編Mは、シロギスカラーのワームをボトムまで落とし、軽く引いてから斜めに落下させる“カーブフォール”を繰り返していたところ、水深が急に変化するブレイクでひったくるようなバイト(アタリ)があったのだそう。
本人曰く「絶対デカかった! ほんとに! 60cm以上はあった!(はず)」と逃がした魚は大きいアピール。ははっ……。
■さすがプロ!状況の変化に合わせて素早く対応
そこで渡邉さんは同じワームに速攻でチェンジ。ブレイクの先にキャスティングし、しっかり底まで落としてから小魚が泳ぐようにゆっくりと誘っていくと……。
「すいません、自分にきちゃいましたぁ!」と、ロッドが満月のように曲がっています、強烈な手応えをいなしつつ、慎重に引き寄せてくると、なんと65cmオーバーのマゴチ! ヒラメと並ぶ、海のルアーフィッシングの大本命をゲットしました。
情報をリアルタイムで咀嚼し、即座に仮説を立て実行する。釣りの基本ではありますが、それを迷うことなく正確に行えるのがプロの実力なんですね。
釣り初体験の新人編集部員Kも「街を流れる川でこんな大物が釣れるなんてびっくりです!」と興奮気味。残念ながら今回はノーヒットでしたが、海のルアーフィッシングにがぜん興味が湧いたもようです。
* * *
日も落ちかけて、寒さが増してきたのでタイムアップ。結局、プロの渡邊さんがビシッと釣り上げてくれましたが、ここでベースキャンプへ帰投。冷えた体を焚き火で温めます。
渡邉さんのご厚意でマゴチをキャンプ場で捌き、ぶつ切りのお造りでいただきましたが、関東の濃口醤油にも、九州の甘口しょうゆにもよくあう優しい味わいでした!
こんなにも豊かな体験をさせてくれる太平洋の懐の深さ。そしてプロフィッシャーの底力を存分に感じさせていただきました。
ハードルが高いと思われがちなショアからのルアーフィッシングですが、道具を揃えて安全に配慮しさえすれば、初心者でもスケールの大きなルアーフィッシングが存分に堪能できるのでした。
<取材・文/杉山元洋 写真/田口陽介、編集部>
杉山元洋|自転車やSuperCubなどの二輪車と大衆酒場を愛する、下町育ちの編集者兼ライター。男性情報誌、ビジネス、生活情報、グルメなど、幅広い分野の雑誌・ウェブ記事制作に携わる。Instagramアカウント:xcub_redbear
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